アメリカのベンチャー企業・Matterport(マーターポート)社と提携する3D撮影/
レポート●山崎裕人(Heatin’ System)/構成●編集部
/取材協力●TRUNK BY SHOTO GALLERY、3D+ONE
まずはどんなものか実際体験してみよう
まずは、マーターポートの仕組みを使って実際に制作したバーチャルツアーを体感してみてほしい。マウスで動かせるほか、左右キーでカメラの向きを、上下キーで前後の移動ができるなど、基本的な操作はGoogleストリートビューと同じ。しかし、カメラの向きを変えながら同時に前後移動ができるなど、ストレスなくバーチャルツアーを楽しめる。シンプルで使いやすいUIも魅力的だ。
目を引く特徴はバードビュー(鳥瞰図)。画面の左下の「Bird View」をクリックすると、ミニチュア模型のような3Dでモデリングされた立体図として表示できる。複数のフロアにまたがっていても、階段などで空間がつながっていれば生成可能で、これによって位置関係やサイズ感をより正確に捉えられそうだ。
このデータがあれば、スタジオの情報を直感的に伝えられるだけでなく、利用者のロケハンや事前の動線確認が不要となる。撮影前にカメラアングルや機材のセッティングも想定しやすい。作品のクオリティに寄与しながらコストを削減できる、一石二鳥のサービスと言えるだろう。
撮影には正確な3Dデータを収集できる専用カメラを使用
撮影に使用されるカメラMatterport Pro2 3Dは建物の中の正確な3Dデータを生成できる専用のカメラだ。他の全天球カメラと大きく異なるのは、3D赤外線深度センサーがついている点。高さ、幅、奥行きなど、距離が正確に測定できるので、収集されたデータを基に“空間”と“物体”を再現できる。
書き出された360°写真の解像度は最大4096×2048ピクセルと高画質。絞り、シャッタースピード、WBなどはすべて自動で最適値に設定されるので、カメラとしての操作はシャッターのみだ。
どんなふうに撮影する?
⬆大まかな撮影の流れ
カメラはiPadの専用アプリによって操作する。事前に撮影ポイントを決め、カメラをセッティングしたら水平を確認。リアルなバーチャルツアーができるように、目線の高さにカメラを調整することが望ましい。これは他の全天球カメラと同様だが、撮影者はカメラの死角に隠れ、鏡やガラスに写り込みがないか注意しながらシャッターを押す必要がある。
アプリ上の「CAPTURE 3D SCAN」ボタンで撮影が開始される。カメラ本体がマウント上でパノラマ雲台のように360°回転しながら5枚の超広角写真を撮影。この間、赤外線センサーによる距離測定も同時に行われている。
撮影された写真は瞬時にカメラ内部で画像処理され、360°写真としてアプリ上に展開される。ミスがないかすぐにチェックでき、その場で再撮影の判断ができるのもうれしい。あとは、次の撮影ポイントにカメラを移動し、上記と同じ流れを繰り返していくだけ。スムーズに行えば、1フロア10ポイントの撮影で30分もかからない。
撮影・データ転送中のアプリ画面
「CAPTURE 3D SCAN」をタッチすると撮影が開始され、すぐに「SCANNING…」に変わる。1箇所の撮影にかかるのは、およそ15〜20秒(これまでにもファームウェアのアップデートによって撮影速度は上がっているようなので、今後はもっと高速化するかもしれない)。撮影が終わるとすぐに転送が始まり、「OK TO MOVE CAMERA」にの表示に切り替わる。通信環境にも左右されるが、35〜40秒ほどで転送完了。通常の全天球写真の撮影と同じような手軽さで、アプリ上に3Dの見取り図が完成していくのは驚きだった。
3Dモデリングデータの制作〜納品
撮影後は、フロアや部屋の名称を設定、不要な撮影ポイントの削除、最終的なデータ確認など3Dモデリングデータの制作していく。完成したデータをMatterportの専用サーバーにアップロード、Webやアプリに通常埋め込みが可能な形式(iframeタグ)で納品される。撮影した空間の広さ、撮影ポイントの数などにもよるが、アップロード自体に時間はあまりかからないので、最短で撮影翌日のデータ納品も可能だという。
3Dデータ内には情報やリンクも設置できる。例えば、展覧会であれば展示物の概要や解説を入れたり、店舗であれば陳列されている商品のスペックや購入ページのリンクを入れたり…など。この情報設置を工夫すれば、実用的なバーチャルツアーに、さらにプロモーションにつながるような直接的な付加価値をつけることができるはずだ。
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