こけし型の360度カメラ・サムスンGear360 SM-R210レビュー! 新旧モデルを検証してみた


サムスンから登場したこけし型の一体型360度カメラGear360 SM-R210。同製品をいち早く購入した360度カメラライターの西條結城さんに旧モデルとの違いを検証レポートしてもらった。

写真・文●西條結城(360度カメラライター)

 

ここ数年の間で様々な 360度カメラが発売されている。業務向けのものももちろんだが、日常でも360度映像を楽しめるコンシューマモデルが充実してきた。しかし、GoPro等を複数台組み合わせて撮影するリグ型のものは除いて、2017年7月時点で4K解像度で撮影が可能な一体型360度カメラは以下の4製品のみだ。

 

●2017年7月時点で4Kに対応した一体型の360度カメラは4機種

・ニコンKeyMission 360
・コダックPIXPRO 4KVR360
・サムスンGear360 SM-C200  ※2016年版の旧モデル(リンク先は海外)
・サムスンGear360 SM-R210  ※2017年版の新モデル

その中でも、2017年版のサムスンGear360 SM-R210(以下R210)は4096×2048ピクセル/24fpsの4K撮影に対応しており、コンシューマ機の360度カメラでは最も高い解像度を持つ。他のモデルは3840×1920 ピクセルまでとなる。同機は価格も安価でオープン価格(実売 25,000~35,000円)で販売されている。今回は、このこけし型のかわいいビジュアルの 360度カメラの基本性能をレビューしていく。

360度動画は、エクイレクタングラー形式で(アスペクト比が2:1の比率)で処理する。水平解像度が 3840 ピクセルなら垂直解像度は1920 ピクセル。4096 ピクセルならば2048 ピクセルという感じだ。今まで発売されてきたコンシューマ向け 4K 360度カメラは、すべて 3840 × 1920 ピクセル(もちろん業務用を除く)だった。実質的な違いはほとんどないはず。しかし4096ピクセルのDCI 4Kサポートというとなんだかプレミアムな感じがする。「10%増量中」的な少しお得な仕様だ。

 

 

◆Gear360 SM-R210 外観チェック

2016年版の旧モデル Gear360 SM-C200(以下C200)と、2017年版のR210 の外観を比較。写真左が SM-R210、右が SM-C200 。新モデルはカメラ部分がキュっと小さく、薄くなった。ボディ側に MicroSD カードスロットや液晶画面を移動した効果もあるのだろう。目玉の親父からこけしのようなデザインに変わっている。

 

カメラの側面にある BACK(電源ボタン)と MENU(Wifi ボタン)でカメラを操作する。カメラボディ正面にある REC ボタンで記録を開始できる。

 

液晶画面を見ながらR210はiPhone等のスマホと組み合わせて映像をモニタリングしながら使用することもできるが、単体でもカメラの設定を変更して撮影できる。

 

 

MicroSDはスマホのSIMカードのように側面から挿入する。コネクタはUSB TypeC を採用している。

 

本体底面には三脚穴。1/4インチの細ねじタイプ。底面には滑らないように透明なゴムシートが設置されている。

REC 中は上部の LED が点灯する。

 

落下防止のためのストラップホールが追加されたのも嬉しい。

◆新モデル Gear360 SM-R210 の進化点

性能の向上は次の4つ。2016年版の旧モデルC200 から進化した機能を紹介する。iOS のサポートと、ライブストリーミング対応が大きな変化になっている。

① 軽量小型 152g → 130g

旧モデルは約 152g だった。新モデルは約 130g 。カメラ部も薄く全体的に軽量小型になった。

② 4K360度動画の解像度 3840 × 1920 → 4096 × 2048

旧モデルは 3840 × 1920 ピクセルだった。新モデルは 4096 × 2048 ピクセルになった。

③ ライブストリーミングに対応

リアルタイムで 360度動画を配信できるライブストリーミング機能に対応した。

④ iPhone対応

2016年版の旧モデルC200もスマートフォンからの操作に対応していたものの、サムスンGalaxy S6 以降の機種を用意する必要があった。元々Galaxyユーザーであれば問題ないのだが、筆者はiPhoneユーザーなので、カメラと一緒にスマートフォンも用意するのは、なかなか大変だった。新モデルR210ではiPhone6S 以降の機種からも操作できるようになった。これはとてもありがたい。

▲iPhoneで映像を見ながら360度映像を撮影できる。撮影時は写真のように球状の画面で表示される。実際にステッチした映像を確認するためには同梱のパソコン用ソフト Gear 360 ActionDirector を使用する。このソフトはサイバーリンクの編集ソフト PowerDirector を元にした専用のステッチソフトである。

◆旧モデルより劣る部分も

実は旧モデルよりも性能として劣る部分もある。しかし、こうして見ると、旧モデルC200も、なかなか素晴らしいスペックであったとも言える。

① 360度静止画の解像度 7776×3888ピクセル → 5472×2736ピクセル

旧モデルの 360度静止画の解像度は実はとても高く 7776 × 3888 ピクセルもある。ニコンKeyMission 360 ですら 7744 × 3872 ピクセルであり、市販されているコンシューマ向けの 360度カメラの中では一番解像度が高い。

② 4K360度動画フレームレート 30fps → 24fps

旧モデルのフレームレートは3840 × 1920ピクセルで30fps。新モデルは解像度は 4096 × 2048 ピクセルあるものの、フレームレートは24fps に下がってしまった。ちなみにニコンKeyMission 360 もコダックPIXPRO 4KVR360 も 30fps ではなく 24fps である。この点では旧モデルC200 は今でもコンシューマー機のフラッグシップモデルであると言えるだろう。

③ レンズのF値 2.0 → 2.2

F2.2 でも充分明るいレンズであるが、旧モデルはもっと明るくF2.0 だった。ただ、 2.2 も 2.0それほど大きな違いがあるわけでもない。

 

 

R210 のライブストリーミング機能に興味がなく、Galaxyユーザーであるならば、新モデルより旧モデルのほうが魅力的な部分も多い。360度カメラは新機種であればあるほどよいという訳ではないことが多々あるのもおもしろい特徴の一つと言えるだろう。また、新旧ともに圧縮方式はH.265を採用している。フレームレートも30fpsから24fps に下がったということは、構成されるデータ容量が2割低下したことになる。解像度が向上しても、20%もデータ量が下がったと考えるのならば、旧モデルの方が好ましいと感じる人も多いだろう。

 

◆新旧画質を比較してみた

 

次は、実際に画質について検証していこう。

 

◆静止画を比較

まず 360度の静止画像を比較してみる。

 

このように画像を重ねてみると大きさの違いが分かりやすいだろう。新モデル R210 は 5472 × 2736 ピクセル。旧モデル Gear360 SM-C200 は 7776 × 3888 ピクセルで、旧モデルのほうが新モデルより1.5倍くらい解像度が大きい。

 

 

ピクセル等倍でを比較してみる。左が旧モデル。右が新モデルの画像だ。見た目の大きさは違うが、画質は同じぐらいに見える。

 

次に同じ大きさに調整して比較してみる。旧モデルの方が、画像の小さい文字がはっきりと見えている。旧モデルの方が画質がよいといえる。もっと明確な違いが出ると思ったが意外な結果だった。あまり変わらない。

 

 

◆360度動画を比較

実際に比較してみると新モデルR210 は彩度が高く感じた。拡大せず見ると、どちらも同じように見える。4096 × 2048 ピクセルと 3840 × 1920 ピクセルの違いはわずかである。動画の圧縮率が高い影響もあるのかもしれない。

 

 

◆部分拡大で細かく見てみる

細部を比較してみると、若干、旧モデルのほうが画質がよい印象だ。手前の机の木目を見比べると新モデルでは描ききれていない木目が旧モデルではしっかりと解像しているのがわかる。解像度が低い旧モデルのほうが画質がよいというのは意外だった。センサーサイズ等の情報はメーカーサイトでは明らかにされていないため、スペック的な情報は不明であるが、レンズ等の光学性能による違いもあるのかもしれない。

 

座布団の色を見ると、新モデルのほうが彩度が高いのがわかる。

 

 

◆ステッチ品質を比較

新モデルはカメラ部が小さくなった。旧モデルの左右のレンズの距離が 5 cmぐらい、新モデルは 3 cmぐらいだ。レンズとレンズの距離が小さいということは発生する視差も少ないと言える。視差が小さいということはステッチの品質が向上している可能性が高い。しかしなぜか旧モデルの方が良質なステッチ結果が出てしまった。

 

 

◆検証1・ステッチラインを行き来してステッチの精度をチェック

▲新モデルGear360 SM-R210の動画

▲旧モデルGear360 SM-C200の動画

新旧2モデルを同時に撮影して、ステッチライン(2つのカメラ映像のつなぎ目)を行き来してみた。新モデルではステッチラインをまたぐ度にステッチのズレを自動調整する機能が働きすぎるようで、映像が不自然に揺れてしまった。この現象は複数回撮影してみても変わらなかった。

 

◆検証2・ぬいぐるみをカメラに近づけたり遠ざけたりしてみた

▲新モデルGear360 SM-R210

▲旧モデルGear360 SM-C200

こちらはぬいぐるみをカメラに近づけたり遠ざけたりという動きを検証してみた。2つの検証サンプルを御覧頂いてもわかる通り、旧モデルC200 も同じようにステッチのズレを自動調整する機能が働いているようだが、その揺れが少なく、とてもよい結果になっている。

 

 

◆最後に

以上から、視差がウンヌンというよりも、ソフトウェアのステッチ補正による悪影響が強く、現段階では旧モデルGear360 SM-C200の方が品質がよい。新モデルはステッチソフト・Gear 360 ActionDirector にまだ最適化されていないのか、ファーム等が現在は調整中の状況なのかもしれない。今後は改良されていくのだと思う。

今回の検証では静止画も動画も旧モデルのほうが画質がよかった。旧モデル Gear360 SM-C200 は価格もずいぶんと下がってきている。繰り返しになるが、今回の検証の結論としてはGalaxyユーザーであり、ライブストリーミングに興味がなく、少しでも高画質を求めるのであれば、旧モデル Gear360 SM-C200 を購入してみるのもよいだろう。

 

 

◆サムスンGear360 SM-R210の製品情報

http://www.galaxymobile.jp/gear-360/

vsw