日テレ系列なのにどうして渋谷?

日本テレビ系列の技術会社、日テレ・テクニカル・リソーシズ(NiTRo:以下ニトロ)が東京渋谷の8K編集室をオープンしたと聞いて、取材をお願いした。

場所は渋谷東急の斜め前の渋谷フラッグの7階。NHKに向かう途中にあるという感じだ。日テレ系列なのになぜNHKの近くに? と疑問に思うかもしれないが、ニトロとしては幅広く門戸を開いて業務を拡大したいということのようだ。

このフラッグに入っているポストプロダクションは5年前に全室4K対応スタジオとしてオープンした。それまでの4K編集は、汐留のほうでスカパーのレギュラー番組納品のために行なっていたが、渋谷がオープンしてからはNHKの仕事が増えているそうだ。そしてこの3月、そのうちの1室を試写室兼用の8K編集室にした。

NiTRo SHIBUYAの全体の構成としては、オフライン編集室が8室で、Final Cut Pro 7、Media Composer、Premiere Proなどに対応。今はPremiere Proで作業する人が多いという。MAが2室で、ステレオから5.1chサラウンドまで対応。オンライン編集室は、4K対応が4室、8K対応(試写室兼用)が1室となる。ニトロとしてはやはりテレビ番組の仕事が多くスピードを重視するため、オンライン編集室はEDIUSのワークステーションHDWSがメイン。それ以外にAdobe Premiere Pro(Bluefish444)、Media Composerも利用できる。

8K編集室の編集システムはDaVinci Resolveで、カラーグレーディング用のパネルも装備。オンライン編集とグレーディングはDaVinciで行う。

マスターモニターは定番のソニーBVM-X300(下の写真・左)。モニターへの目線を合わせるために木のブロックで高さを調節している。編集モニターの手前にあるのが4Kに対応したマルチ波形モニター、リーダーLV 5490で、この2つは、4K、8K完パケをNHKへ納品する場合のリファレンスになるもの。

ルーター用のコントロールパネルも明るくウッディな内装に合わせてこんな感じに収められている。一番上のAJA KUMO CPが12G-SDI用のコントロールパネル。

正面のクライアントモニターは、シャープの80型8Kテレビ。ここには12G-SDIは直接入力できないので、アストロデザインの変換ボックスで12G-SDIからHDMIに変換して8Kテレビに入力している。天井に吊り下げているのは、ソニーの超短焦点4Kプロジェクターで、4K試写は8Kモニターの裏側にある120インチの大画面スクリーンで行うことができる。

これ以外に、テロップのサイズなどを確認するために、家庭用を想定した50型程度のモニターも横に置かれていた。

DaVinci Resolveを利用するSupermicro製ワークステーション

マシンルームのほうを見せてもらう。8K関連部分のラックがこの2本。

DaVinci Resolveを入れたメイン編集機は Supermicro製ワークステーションで、グラフィックボードNVIDIA製Quadro GV100を2枚搭載、ストレージは500TBのHDD、という超強力なもの。

これだけではなく、実はNHKへの8K完パケの納品形態がP2カード4枚という仕様なので、8K-P2書き出しや変換用途のソフトColorFront製Transkoderが必要になる。それもSupermicro製ワークステーションでNVIDIA製Quadro RTX6000で稼働している。

P2カード4枚に記録するパナソニックの8Kレコーダー。現在はこれがどうしても必要になる。

DaVinci Resolveを核にしたデータのやりとは以下のとおり。8K-P2への書き出し、合成・加工は別のマシンで行なうが、DaVinciでオンライン編集、グレーディングできるので効率が良い。

お話を伺ったポスプロ技術センター・ポスプロ技術部の福田豊さんによると、4K編集室、8K編集室ともにNHKの仕事が圧倒的に多く、8Kの場合は、RED HELIUMなどの6Kや8Kの素材がほとんどで、あとはソニーのVENICEがあるくらいだという。

全体の流れは以下の通り。現状ではPremiere Proでオフライン編集し、XMLデータでDaVinciと連携してオンライン編集するというワークフローが多いというが、最近はDaVinciでもリアルタイム性があがってきたので、オフラインからオンラインまでDaVinciで統一するのもいいかもしれないとのことだった。

 

日テレ・テクニカル・リソーシズ ポスプロ技術センター・ポスプロ技術部の福田豊さん。

 

NiTRo SHIBUYAの情報はこちらから