【シリーズ特集】DaVinci Resolve用の編集機を考える①〜林和哉さんの場合


2017年も押し迫った12月後半、突如始まったこのシリーズ。「DaVinci Resolveの編集機を考える」と銘打ち、基本的に1ヶ月1回のペースで、ゆるーく、かつそれなりに参考になるネタをお届けしていこうと思っています。

DaVinci Resolveが14になって他のソフトから乗り換える人がかなり増えてきましたが、一体みなさんどんな編集システムで作業しているのが気になります。DaVinci ResolveはOSはMac、Windows、Linuxで使用できるので、選択肢が幅広いのです。

そこで第1回の今回は、ブラックマジック社認定 ダビンチリゾルブ トレイン・ザ・トレイナー(トレーナーのトレーナー、通称T3)の資格を持つ、DaVinci Resolve教育の第一人者であり、本誌でも長くDaVinciの連載を担当していただいた林和哉さんの環境を取材してみました。というのも数ヶ月前に、Windowsマシンにしたとうかがっていたからです。

林さんのご自宅の編集環境はずばり、こんな感じです!

今年生まれたばかりのお子さんのホームビデオを編集中の林さん。ホームビデオといっても、RED EPICで撮影した8K RAW(R3D)データです。8Kの素材がそれほどコマ落ちせずに走り、グレーディングしても、それが右側のモニター(4K表示)に即座に反映されていきます。

コントローラーは純正のMini Panelです。デュアルモニターの下にぴたりと収まっています。このデスクは高さの調整がハンドルレバーでできるので、腰が痛くなってきたりすると、デスクの高さをあげて、立って作業するとか。(ちなみにこのデスクはIKEAで購入できるそうです)

さて、肝心のマシンですが、ゲーミングPCを扱っているPCショップで組み立ててもらったもの。BTOというよりも、特注に近いものだそうです。ということもあって、ショップは内緒、とのこと。トータルで80万円弱だったそうです。

CPU はCore i9の10コアで、これが出た段階で、最新のもので一気に組み上げようと思い立ったとか。CPUは水冷になっています。長時間作業しているとCPUが熱を持ち、後半動作が重くなってくるものですが、水冷であればそれを極力抑えることができます。

さらにポイントは内蔵ストレージ。DaVinciに限らず、キャッシュの読み出し速度が重要になります。そのキャッシュの置き場になる内蔵ストレージは極力速いものが快適です。このマシンでは、M.2規格のSSD(サムスン)で、2枚の1TBのSSDをRAID Oにしているとのこと。

もう一つの重要ポイントがグラフィックカードですが、MSIのGTX 1080 Ti LIGHTNING X。これは残念ながら今では手に入りにくくなっているそうです。

インターフェースは将来を考えてThuderbolt 3。4Kモニターには、ブラックマジックデザインのUltraStudio 4Kを介してHDMIで接続しています。

マシンの筐体はシンプルなデザイン。大きなファンで横から吸気して、上から排気する構造。

【SPECIFICATIONS】
CPU ●Core i9-7900X (3.3GHz/Turbo Boost 4.3GHz/Turbo Boost MAX 4.5GHz/10-core 20-thread/L3 13.75MB/TDP140W) ◇INTEL
CPUクーラー(水冷)●H100i V2 (CW-9060025-WW) ◇CORSAIR
マザーボード ●PRIME X299-DELUXE ◇ASUSTeK
ケース ●Fractal Design Define R5 Titanium Grey (FD-CA-DEF-R5-TI) (チタニウム) ◇Fractal Design
電源 ●RM1000x (CP-9020094-JP) ◇CORSAIR
追加ファン ●MasterFan Pro 140 Air Flow MFY-F4NN-08NMK-J1 ◇Cooler Master
メモリ(64GB)●W4U2400BMS-16G/W ★CFD Ballistix by Micron Sport DDR4◇CFD販売
GPU GeForce GTX 1080 Ti LIGHTNING X◇MSI
OS ●Windows 10 Pro 64bit 日本語 DSP版 ◇Microsoft
M.2 SSD 2TB分 ●MZ-V6E1T0B/IT◇SAMSUNG
OSブート用SSD●ASU800SS-512GT-C ◇A-DATA

さて、業務ユーザーの場合、Windows環境で困るのがProResデータでのやりとりです。ProResファイルを読むことはできても書き出すことができるツールはそれほど多くないのです。ところがブラックマジックデザインのFusion 9 Studio(有償版/33,980円)は、Windows版でもProRes書き出しが可能です。

林さんは「Windowsのほうが低価格で圧倒的に速いマシンができるのだから、映像を扱うのに絶対Macでなければをいけないという理由はない。唯一Macである必要性はProResを書き出せることだったのだけど、これで解消された」と言います

この機能、ぜひDaVinciに移植してもらいたいものです。

さて、ここからはTips的なアドバイスですが、4K/8K、RAWといった大容量ファイル時代にファイルコピーの時間はばかになりません。特にフレームごとにファイルが分かれているようなブラックマジックデザインやDJIのRAWデータはコピーに時間がかかる傾向があります。PCへのコピーはOSで作業するのではなく、専用のコピーツールを活用したほうがいいそうです。林さんが利用しているのは、FastCopyで、Windows最速コピーツールと言われているもの。コンペアまでは対応していませんが、ベリファイ(書き込んだデータを正しく読み出せることを確認する)は可能です。

Windows環境でハイエンドな編集・グレーディングシステムが自宅環境でも80万円くらい(Mini Panelやモニター除く)でできることが見えてきました。マシンもそれほど大げさなものではなく、今回それほどハードな作業をしてもらったわけではありませんが、ファンの回転音が上がっても、部屋のエアコンの音と同じ程度で、それほど気になりませんでした。ポイントのパーツで投資をする必要はありますが、大半のユーザーは8K RAWまでは必要ないわけで、BTOパソコンでも十分な編集環境を構築できそうです。(取材:編集部)

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林和哉(Kazuya  Hayashi)

映像プロデューサー/ディレクター。制作の入口から出口まですべてのポジションを守備範囲にしている。最新技術が好物で、各種セミナー活動も豊富。東映テレビ・プロダクション・技術コンダクター。

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