【座談会】僕らが最近、DaVinci Resolveに転向した理由


【座談会】
僕らが最近、DaVinci Resolveに転向した理由

ダビンチ・リゾルブの魅力はやっぱりカラーグレーディングにあり!

最近、本誌で大活躍の3人は、今年になってグレーディングだけでなく編集から書き出しまで一貫してダビンチ・リゾルブを使い始めたという。その理由、使ってみた印象を訊いた。

 

──最初に簡単に自己紹介をお願いします。

井上卓郎 長野県で山の映像を作っています。カメラはURSA Mini Proを担いで行って、編集はDaVinci Resolveでやっています。

鈴木佑介 神奈川県逗子育ち、逗子在住で、ウェディングムービーを10年くらいやっていまして、個人のブランドでウェディングムービーを始めて5年目くらい。コーポレートムービーやウェブコマーシャルも作っていて、メインのカメラはソニーでFS7、一眼はα7SIIを使っています。

吉田泰行 愛知県豊橋市で空撮と地上の映像を合わせたかたちで映像制作をやっています。RED WEAPON 8K、DJIのInspire2といったRAWで撮れるカメラをメインに使っています。3カ月くらい前にDaVinciに変えました。

──みなさん、現在はDaVinci Resolveがメインになっていますが、それまではどのソフトを使われていたんでしょうか?

吉田 私は映像制作を始めて4年目なので、Final Cut Pro Xを使っていました。マシンはMac ProでストレージはPROMISEのThuderbolt接続のHDDでした。

そんなときにDJIのInspireでCinema DNG(RAW)記録するようになったのですが、そもそもFinal Cut Pro Xでは対応していない。どうしていたかというと、Lightroomで連番取り込みをしてそれを書き出すという非常に面倒なことをしていました。DaVinci Resolveを使ってみるとCinema DNGの扱いが簡単ということもあるのですが、触ってみて気がついたのは、たとえばシャドウのみを調整したいときに他に影響を与えずに確実にできること。Final Cut Pro Xのほうが速い作業もありますが、色をいじるにはDaVinci Resolveが優れていることを実感しました。

井上 私は1999年くらいに映像を始めたのですが、そのときはプレミアとVAIOのType Rでした。その後は自作PCですが、ずっとプレミアでやってきました。ところが今年の2月の終わりにURSA Mini Proを導入して使うようになってRAWを扱うようなったのに合わせて、セットでDaVinci Resolveにしてみようと入れてみました。ガンガン使うようになったのは、バージョン14のベータ版が出てからです。編集(エディティング)自体はどのソフトでも一緒でちょっと使えば慣れます。今流行りの映像というのはどんなソフトでも作れるのですけど、これからは色をしっかりいじれることが重要だなと思ったのがきっかけです。URSAの前は5D Mark IIIにマジックランタン(ファームウェア拡張ソフト)でRAW記録していて、そのときはLightroom使って現像してということをしていたのですが、DaVinci Resolveなら4K RAWをグレーディングも編集もできるので、これがいいやということで。

鈴木 僕も1999年にVAIOでプレミアから始めたんです。でも当時はプレミアがまともに動かなくて3カ月で売りました。働いていたスタジオでPowerBook G4にFinal Cut Proを入れて、CMのディレクターが現場で編集しているのを見て、カッコイイ! これだと思って、Final Cut Proを使い始めました。Final Cut Pro Xになったときに、行かなかった人も多いのですが、私はアップル信者なので、Xに移行してそれでかなり仕事しました。

今はDaVinci Resolveと並行してFinal Cut Pro Xも2割くらいは使っています。使い分けの基準ですが、カラーコレクション程度でいいものであれば、Final Cut Pro Xで充分なのですが、カラーグレーディング、つまり自分が意図した色に仕上げたいという、色に演出をする場合は、DaVinci Resolveでないとできないことが多い。触ってみてそこに気がつきました。だから、プロジェクトを始める段階で、最初にどちらにするか決めます。

▲鈴木さんの編集環境。Mac Pro(Late 2013)にG-Technology G-SPEED Shuttle XL(64TB  RAID5)をThunderbolt 2接続。デュアルモニター、ペンタブ、Micro Panelという構成。DaVinciはGPU命のソフトだが、Mac Proだと拡張性がなく、今、ウィンドウズマシンが気になっている。

▲井上さんの編集環境。iMac 5K 27インチ(Late 2015)。外付けHDDだと動作が重く、外付けSSDをUSB3.0接続。一番ミニマムな構成はiMacの内部ストレージをSSDにしてそこにデータをコピーして作業することだとブラックマジックデザイン北山さんは言う。

▲吉田さんの編集環境。Mac Pro(2013)にストレージはPromise Pegasus 2 R4(RAID 5)。旧式化しつつあるMac Pro 20 13の対策として12GBのGPUを搭載したBizon Box 3を使用し処理速度の改善を行うが、価格ほどの劇的な効果はないという。Mini Panelを使用。

◉カラーグレーディング用のコントロールパネルはMini Panel(339,800円)とMicro Panel(113,800円)の2種類がある。これは全員が買ったほうが損しないと太鼓判。マウスもペンタブも基本的に一個のパラメータしか操作できないが、パネルであれば、両手が使えて、コントラストとピボッドなど2種類を同時に動かすなどが可能。触ると「なに、このソフト、楽しい〜」となるのは間違いないと言う。

 

これから14でDaVinciを始める人は幸せ

──みなさん、DaVinici Resolveに転向したわけですが、すぐに慣れましたか?

鈴木 いや、バージョン10くらいのときに一度入れましたけど、メディアの読み込みが分からずにとまどった記憶があります。

井上 私も10で一度挫折してから、12.5まで使っていなかったんです。12.5で1本作業したら、14になったので。もうプレミアと変わらないという印象ですね。だから、現在のバージョン14から始める人は本当に楽だと思います。カラーグレーディングは優れているので、編集とグレーディングで行ったり来たりしなくてもいい。

鈴木 編集ソフトとしても、Final Cut Pro Xとプレミアのいいとこどりみたいな感じで。プロジェクト設定でキーボードのショートカットをプレミア風にしたり、Final Cut風にしたりもできるのも移行しやすいところです。

井上 あとスタビライザーの自然な感じが好きですね。今まではAfter Effectsに読み込んでプレミアに戻してという作業をしていましたが、これから1本のソフトでできます。

北山(ブラックマジックデザイン) バージョン14からスタビライザーの精度が上がっていまして、パンとチルトを大体認識できてしまいます。

井上 それからパワーウィンドウで切って、そこだけ調整するという作業がプレミアよりも圧倒的にやりやすい。Lightroomの動画版という感じがします。

吉田 私の知り合いも移行したがっているのですが、まさに「Lightroomのようにいじりたい」と言うんです。実際にやってみたら、たしかに細かくできるんで、そこもポイントが高いと思います。

井上 Lightroomの場合、静止画のソフトなのでパワーウィンドウが追従してくれないけど、それが動画ソフトとして追従して、しかもその精度が高いのが便利ですね。

鈴木 パワーウィンドウは本当に強い。あれはいいですね。人物にマスクを切って、そこにライティングを加えられる。特にウェディングでドレスだけ抑えるとか、木漏れ日で木のトーンだけ出すとか、この組み合わせだけでいろいろなことができる。しかもマスクが追従してくれる。だから8ビットであってもベターなものを作れる。

それからフェイス補正機能がすごいですね。顔の目とか頬とか唇とかを自動認識してくれて、パーツごとに補正できるんです。追従がもしずれてしまったら、キーフレームで補正もできます。私は人を撮ることが多いんですが、人物で使えるエフェクトが14からすごく増えている。だからすごく楽であり、贅沢なんです。

北山 腕がある人でしたら、個々にマスクを切ったり、クオリファイヤーで抽出したりして変更したいところを狙って作業できるんでしょうけど、そうじゃない方にも楽しんでいただける要素は14ですごく増えました。OpenFXはその代表的なところだと思います。

──14で動作が軽くなった印象がありますが。

北山 メニューバーの再生の項目にある「パフォーマンスモード」にチェックが入っています。これをON、OFFしても見た目はほとんど分からないです。ONにしても劣化したように見えません。これをOFFにしていると、人間にも見えないレベルの情報まで全部再生しているということになります。そもそもパネルに表示できないデータなのですから、そこは省略するけど画の解像度には影響せずに再生するモードです。だから常に入れておいて大丈夫です。12.5まではこれが入っていなくて、「自分、不器用なんでby高倉健」という感じで、全部まじめに再生していたんで重かったのです。

▲優秀なフェイス補正機能。顔を認識して追随。顔の目や唇を自動認識してパーツごとに補正できる。Studio版は3万円台になったが、ノイズリダクションも含めてこういった使える機能が実装されているので、実はかなりお買い得。

▲バージョン14(取材時はパブリックベータ6)では再生動作が軽くなった。その理由はパフォーマンスモードの採用。デフォルトでチェックが入っていて、常時「入」でOK。

▲スタビライザー機能も優秀になった。

 

RAWの時代は来るのか?

──RAWを扱おうとすると、必然的にDaVinci Resolveが有利ですが、そもそも動画のRAWの時代は来るのでしょうか?

鈴木 RAWはコストパフォーマンスが悪くて、一体誰がやるんだろうと思っていたんです。正直、あり得ないと思っていました。でも吉田さんみたいにRAW、しかも8K RAWで実際にやっている人がここにいる!

吉田 僕が仕事を始めたときブラックマジックデザインから2.5KのRAWが出たときで、でも当初は重いし、容量が大きいし、こんなの誰がやるんだと思っていたんです。でも4年たってみると、4K RAWならサクサクいけるようになっています。編集環境も含めてRAWはやりやすくなりました。

鈴木 わたしはRAWはほとんど使ったことがない“RAW弱者”なんですけど、それこそウェディングなんて8ビットをどうやって破綻せずに仕上げるかということをやっているわけです。でもDaVinci Resolveを使うと、8ビット、10ビットの違いはとてもよくわかる。とくに8ビットを触ってみると悲鳴しか出ない。10ビット 4:2:2、そしてRAWの違いというのは自分で触らないと実感できなくて、逆にいうとDaVinci Resolveで触れるようになったことで、これからRAW動画にさらに注目が集まって行くと思います。

北山 RAWは映像業界の一部の特権階級のものだったんですね。それがいろいろなテクノロジーが揃ってきて、RAWで撮って編集するということが現実的になってきた。

鈴木 色を自分の意図でコントロールして演色していくということが、これからすごく重要になってくるから、遅かれ早かれグレーディングは必修科目になるんですよ。だから、やるんなら早いほうがいいというのが私の考えです。

北山 そのグレーディングの難しいのは、ご自身のなかに作りたい絵がなければ作業は無限だということです。切って繋げるエディティングは目標が設定できる。グレーディングは無限でやりたいほうだいですから。よくいいルックってなんですか? と聞かれるのですが、それはあなたの中に答えがあります、としか言いようがない。イメージがある人には楽しい世界だと思います。

井上 RAWは撮影のミスをリカバリーしてくれるという面もあります。

北山 撮影できっちり撮れないときに後でいじれる余白をどれくらい残してくれるのかという担保。それが8ビットより10ビット、10ビットよりRAWのほうが自由度が高い。もちろんRAWだから完璧というわけではなくて、何をどう撮りたいのかというイメージがない人には迷う原因になって、こうしたいというはっきりとした目的がある人にはベストな選択肢だと思います。

井上 あと私の場合は、素材の商売をしているので、今はREC.709だけど、将来はHDRの素材が必要になるかもしれないのですが、RAWであれば対応できる。あと10年後に、自分がURSA Mini Pro担いで山に登るということは考えられないので。

グレーディングは奥が深い世界

──グレーディングをしてて、まだまだ納得がいかないということはありますか?

吉田 ありますね。やはり上手い人の映像を見ると自分はまだまだだな、日々勉強しないといけないなと思います。勉強はコンスタントに続けていかないといけない。

井上 編集とかタイムラプスの技術は成熟してきましたから、これから人と差をつけるのは色なんですね。2、3年後にはそれが当たり前になっていると思いますけど、今やるなら、色をしっかり勉強するといい。色ってファッションに近くて、流行りが移り変わる。

鈴木 プロジェクトごとに答えがあると思うんですよ。コーポレート系の仕事をすると、赤がイメージカラーの会社は赤っぽい発色にしますし。今悩んでいるのは、西洋人たちと、日本人の目で色温度で1000くらい違うという説があって、どうしても日本人の目で調整するとあちらの目で見るとブルーっぽくになってしまう。海外標準で良しとするものって、我々の目からすると黄色っぽいですもんね。赤茶色いというか、シアンとかブルーの要素がすくない。その目のギャップを埋めることもしたいと思っています。色を追求することは自分にとって楽しいので、スタンダードな色の概念をすごく勉強したいと思っています。自分はこっちのほうをやりたいのかもしれないとまで思っています。

今の日本の映像制作はカットの色を合わせるというレベルで、全体になぜそういう色にしたのかは考えられていない。そのうち論理的に説明できないとならない時代がくるような気がしています。

井上 海外のいい映像を波形やベクトルを見ながら見ると面白いんです。感覚的にではなく、数値的に把握できると、色の真似ができます。

北山 思い込みと実際は違っていて、目で見ると派手でも、グラフ、数値的にみるとそれほどでもないことがあります。

──DaVinciはグレーディングだけでなく、編集から書き出しまで一貫して作業できるトータルなソフトになりましたが、やはりカラーグレーディングに強みがあって、そこに魅力があって、最後はグレーディングの魅力の話になりました。

北山 映像編集とは、映像のカット、音声の組み合わせで人の感情を揺さぶるということなのですが、実はもう一つの演出、色によっても大きく感情を揺さぶることができます。それが今までは撮ったままでほとんどされてきませんでした。それではあまりにもったい。道具は揃ってきたのですから、多くの人に挑戦してもらいたいと思います。

──本当に映像は奥が深く、勉強することがたくさんあって、それがどうやら楽しい世界らしいということが見えてきました。本日はありがとうございました。

▲「ライブ保存」という機能が加わった。落ちた時の直前を復活してくれるもの。Final Cut Pro Xにも同じ機能はある。それと「自動保存」は別になっており、「自動保存」はプロジェクトのバックアップを指定した分数おきに行うというもの。

:プロジェクトのサムネイルで右クリックしてアーカイブを選択すると、撮影素材と編集データを1フォルダにまとめることができる。最後のレンダリングで熱が発生してノイズが出てしまうことがある。夜寝る前に書き出す際など、レンダー速度を落とすことで熱を上げないという対策をとることができる。

▲ブラックマジックデザインのスタッフ(右の2人)も含めて情報交換。DaVinciユーザーの中にはMacにするかWindowsにするか悩んでいる人も多い。ストレージを共通にして両環境で使うこともできる。Windowsでは自作機などでGPUを強化しやすいので、速度をもとめる場合は有利。グラフィックカードは、ゲームマシン用の GeForce GTX 1080などがコストパフォーマンスが高いという。