Panasonic LUMIX DC-GH5&GH5S を活用した映像制作の現場レポート
4K専門チャンネル『ケーブル4K』のHDR実証実験

GH5のHLGモードで
ステージを4K HDR撮影

Report_Multicamlaboratory 渡邊 聡

固定運用に安心感を与える
4K/60pと無制限記録

名古屋・大須から全国へ向けて超絶元気を発信しているアイドルグループOS☆Uのライブを高性能なKOWA CINE PROMINARレンズとGH5の組み合わせで4Kマルチカメラ収録をした。カメラマンは私一人で4台を据え置きにし、1台のみKOWA PROMINAR 350mm F4を装着して寄りの映像を撮影した。すべてAC電源を確保しており、ダブルスロットに挿入しているメモリー容量いっぱいまで絶対に止まらないで4K/60p収録してくれるGH5の安心感は何と言っても絶大である。カメラマンがつかないで無人固定運用するときの一番重要な要素ではないかと思う。

このステージの模様は、次世代4K映像規格であるHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)技術の実証コンテンツとして全国のCATV向け4K専門チャンネル『ケーブル4K』で4月から放映される予定だ。

この収録を終えてからGH5Sが発表され、より高感度性能が向上し、タイムコードも簡単にリンクさせることが可能になった。もちろんHLG(ハイブリッド・ログ・ガンマ)にも対応している。このようなライブ撮影で、三脚に搭載して撮影する現場では手ブレ補正はまったく必要なく、GH5Sのようなカメラが早く出てくれれば良いのにと考えていたところだった。次からはGH5Sを使うことになるだろう。これからGH5Sで4K HDRコンテンツがどんどん作られるのではないだろうか。


▲リハーサルの段階で事前にカメラをセッティングする渡邊氏。本番ではこのカメラはこの位置で回しっぱなしになる。


▲カメラはGH5を5台揃えた。2階からステージ全景を狙うGH5にKOWA CINE PROMINAR 25mm T1.9を装着した。


▲2階からアップを狙うカメラにはKOWA PROMINAR 350mm F4を。KOWA PROMINARはマニュアルフォーカスでのピント合わせを確実に行えるデュアルフォーカス方式が採用されているのでフォーカスを素早く送ったり、微細に送ったりできて非常に使いやすい。


▲2階席にはステージ全体を押さえるカメラとアップサイズ狙いの2台のカメラをセットした。

 

各カメラの映像から


▲2Fセンターの操作カメラ。KOWA 350mm F4。


▲フロントセンター。KOWA 8.5mm T3.0。


▲フロント上手カメラ。KOWA 12mm T1.9


▲フロント下手カメラ。KOWA 8.5mm T3.0。

カメラが小型なのでステージ前にセッティングしても邪魔にならない


▲ステージ前の固定据え置きカメラをリハーサル中にモニターでチェックしながらセッティングする。①②はフロント下手カメラKOWA CINE PROMINAR 8.5mm T3.0で、③はフロントセンターカメラKOWA CINE PROMINAR 8.5mm T3.0。④はフロント上手カメラKOWA CINE PROMINAR 12mm T1.9。小型カメラなのでオーディエンスに迷惑をかけずに自由度高く設置できる。

【HDRのワークフローについて】

技術統括:UVN金森郁東

今回の収録は、High Dynamic Range(ハイ・ダイナミック・レンジ)の実証コンテンツとしてGH5で4K/24p HLG収録し、弊社でポストプロダクションを実施した。ワークフローは、従来から4K SDR編集を行なっているAdobe Premiere Pro CC環境でプロキシを作り、マルチカメラオフライン編集を行いプロジェクト情報をDaVinci Resolveへエクスポートしている。ここはさらっと書いているが、複雑なプロジェクトはうまくエクスポートできないという現象があり、理由はわからないのだが、手作業でDaVinci上で再度編集をやり直すという状態だった(この原稿入稿時以降、Versionが上がっていて改善されているかもしれないのでお含みおきください)。

ワンストップでHDR編集ができるアプリケーションも各社から出ているようだが、やはり自由度の高いカラーグレーディングは必須で弊社としてはDaVinci環境にゆだねており、 DaVinci Resolve14 Studioの最新版にAdobe Premiere Proのオフラインプロジェクトをインポートしてカラーグレーディングし、最終のポストプロダクションを実施した。

今回はGH5で「HybridLog-Gamma(HLG方式)」が記録可能となったので最初から最後までHLGの状態を保ったまま完成形を編集している。

Log収録でHDR化する作業は昨年から何度となく経験しているが、見た目からして取り扱いが簡便になった印象がある。とはいえSDRのモニターでみると印象としてフェイスの明るさは暗くなる。4K SDRでも放送するため、その場合はSDRに変換して再度カラーグレーディングしている。全体的に多少つぶれた印象になるので、SDRグレーディング時には、顔色を適正露出になるようにルミナンスを再調整している。

現状ではなかなかHDRコンテンツの標準化は難しく、制作ワークフローを模索中である。モニタリングは4K HLGソースをそのまま再生できるパナソニック製ビエラを仮のマスターモニターとして、4K SDRのモニターでもプレビューしている。

HDRは今のモニター群では完全に規格をカバーできていない。それでもSDRからHDR化した信号レンジは、100倍ものレンジを扱うことになる。今後も実証コンテンツを制作して総合的なスキルを得ていくことになる。

放送終了後は、トレーラーサイズでネイティブHDRコンテンツとしてYouTubeで公開する予定である。

(アップされたらここにリンクします)

[収録コンテンツ]
『OS☆U 清里千聖卒業公演~passage~in ZeppNagoya 』
テクニカルディレクター  カメラ:渡邊聡multicamlaboratory/収録技術:中村修一UVN/編集:下村竜也UVN/カラーグレーディング:新居晃/MA:山下裕康 ヒロサウンドテクニック/技術統括:金森郁東 UVN/制作協力:吉田哲也 JDS/製作:青山悠二 OS☆U/協力:興和光学/パナソニックルミックスプロフェッショナルサービス/ユー・ブイ・エヌ UVN /日本デジタル配信 JDS/にぎわいファクトリー名古屋 OS☆U https://osu-idol.com(敬称略)