REPORT◉ 小川浩司 https://creekcreative.jp/
2010年発売のGH2から始まった私のルミックス人生。ファームハックしてFHD44Mbps収録に心躍らせてた時代があった。あれから14年の月日が経ち、今回発売となるGH7(2024年7月26日発売)ではRAW動画を内部収録、5.7K/4.2Gbpsだってんだからテクノロジーの進化には目を見張るばかり。進化した数々の機能を手に取り、ふらっと出かけた公園で、キレイだなあと感じたモノだけを撮影し編集してみた。写真も動画も撮影する私の目線で、気づいたことやカメラの実力をレビューして行きたいと思う。
Apple ProRes RAW 5.7K内部記録
今回の新たな機能として注目すべきは内部収録可能となった5.7KのRAW動画だ。最大解像度5.7K(5728×3024)はさすが細部まで鮮明に記録できるため、ディテールの美しい画像を叩き出してくれるし、RAW動画データのおかげで後の明暗差や色表現などの調整が今までより幅広くできるので編集していて楽しい。多様な動画記録フォーマットのおかげで縦横比や圧縮方式によりデータ量を選びながらあらゆる撮影シチュエーションに対応できるので、広告や映画制作のようなプロフェッショナルな現場から、インタビューやドキュメンタリーのような長回し、野外ロケ、アマチュアの作品づくりなど、まさに「なんでもござれ」だ。
ネイチャー動画の目線で見れば、近づけない野鳥に対して超望遠で撮影するが限界があるし、望まない背景を選ぶことも難しいというときに、5.7Kで撮影して4Kのシーケンスで等倍にするだけで約30%は拡大できるので、トリミングによる構図の自由度が増し作品に幅が広がる。
ダイナミックレンジはLUMIXマイクロフォーサーズ機では過去最大の13+ストップ。晴れた野外ロケでは明暗差が激しくなるが階調の広い豊かな画作りができる。
なにより驚いたのはデータの取り扱いがしやすいこと。数年前のMacBook Pro(Intel CPU)、メモリは16GBしか積んでいないノートPCにアドビ Premiere Proで編集してみたが、1TB近いデータなのでフリーズするんではないかと恐る恐るだったが、プロキシを追加する前にもかかわらず、多少カクつきはするが思った以上にサクサク動いてくれた。RAW動画となるとそれなりのマシンスペックとストレージが必要で、非力ならばプロキシ編集の流れかと思っていたが、圧縮の再解凍がないからなのか詳しい理屈はわからないが、軽々と手持ちの機材で難なく編集できたことには驚いた。
ハイスピード撮影
スローモーション撮影も充実している。ProResで記録はできないものの、4Kは120p、FHDでは300fpsのVFR(最大12.5倍のスロー)が可能。
オートフォーカス
像面位相差センサーを採用しディープラーニング技術を用いた認識AFを取り入れたのはLUMIX歴史の中で大きな変革となった。もちろんその技術はGH7にも注ぎ込まれていて、オートフォーカスは大きな進化を遂げた。ズームレンズで野鳥を撮影する際、まずヒキで被写体を補足し、ズームしてちょうどよい画角に調整する。ヒキの段階で動物認識により即座にピントを合わせることができるし、寄れば瞳認識をしてくれるので正確だ。
AFによるストレスはほとんどなくなった。「ほとんど」というのは、野鳥を相手にしていると茂った草木や藪に入られるとどうしても追いきれない場合がある。認識が外れたりすることはいくつか見られたが、ここはAIの性能の問題なのだろうか、今後に期待したい。
内部収録、ストレージ
今まで外部レコーダー収録することで可能だったRAW動画撮影が小さなミラーレスカメラ1台だけでできる。やれ外部レコーダーだ、となるとバッテリーだ、繋げるケーブルだ、リグも必要だ、となってきて機材は増えるし、アウトドアで撮影となると移動などで破損のリスクが増えてくる。縦構図を撮ろうにもカメラの上に乗った機材が嵩張り気軽ではない。
内部収録で最小限の機材で完結できるということは、RAW動画の撮影を手軽にしてくれる。記録媒体はSDカードとCFexpressで、内蔵スロットがひとつずつの2スロット、またはUSB-Cで繋ぐSSDとなる。
今回カメラをお借りし、さっそく撮影しようと思い、SDカードにRAW動画は記録できないので手持ちのSSDを取りつけて試みたが書き込みスピードが足りないのか3秒ほどで止まってしまう! 画質を4Kに落とし、HQでない低いビットレートで撮影することで何とかその日は撮影したが、これでは埒が明かないので編集部に相談したところ、日本ブランドのNextorage社NX-B2PROシリーズのCFexpress4.0をお借りすることができた。
こちらのカードを利用することで、最大解像度の5.7K、最大ビットレートのProRes RAW HQを、一切停止することなく何分も連続撮影することができて、まるでいつ通りSDカードに保存している感覚だった。PCへの取り込みも速い。この高速大容量メモリーカードはお値段はそこそこに張るが必要な投資だと思う。1枚でもあればどんな撮影にも対応できるのでぜひ持っておきたい。
チルトフリーアングル機構
従来のバリアングルに加えてチルト構造が採用されたのだが地味にいい仕事をしてくれる。手持ちローアングルの撮影時に超望遠だとレンズとモニターの光軸がずれると対象をが画面内に補足するのが少々時間がかかるが、これはやりやすかった。水平も取りやすい。
手ブレ補正
LUMIXの強力な手ブレ補正は定評がある。200mmを超えるロングレンズで動画撮影する際にも三脚なしで安定した撮影ができた。モードはざっと分けて3種類。①通常の滑らかな手ブレ補正 ②ジンバル的な歩き撮りの電子手ブレ補正 ③三脚に置いたように動きを止める手ブレ補正ブーストである。これを撮影状況によって使い分ける。
注意点
いくつか制約があるのでこれは事前に確認をしておいたほうが良いだろう。例えば画角の制約がありRAW動画で5.7K だとFULL固定でPxPのクロップが使えない、逆にC4KだとPxP固定でクロップされてしまうため画角が狭くなる。4K/120pだとAFの動物認識が使えなかったりなど、設定によってはできないことがあるので注意したい。
総評
GH7に関して、32bitフロート録音やリアルタイムLUTなど検証したいことは山ほどあるが今回はここまで。総じてLUMIX GH7はプロフェッショナルな映像制作者や写真家にとっても非常に優れた選択肢だと思う。優れた動画性能、写真撮影機能、そして堅牢な設計は、多くのユーザーにとって魅力的なポイントになる。
カメラを冠するGHの「H」はハイブリッドと以前開発の方から聞いたが、まさにその通りのカメラとなっている。それは動画と写真はもちろんだし、その中でもマイクロフォーサーズのレンズ群による幅広いレンズの選択肢。幅広いフォーマット、「万能」を極めたようなカメラだ。
LUMIX GH7は、その性能と機能を最大限に活用できるユーザーにとって、非常に価値のあるカメラだと思った。作りたい作品を叶えてくれる、理想的なパートナーとなるだろ。