ローランドV-8HD Reportコンプリート版◎ライブやイベントでよりアクティブにマルチソースの制作&配信を行える


ポータブルビデオスイッチャー<ローランド V-8HD>を現場で活用

▲実際の現場で運用してみたが、コンパクトで持ち運びもしやすく、テーブルが広く感じられる。機能としてはハイグレードのスイッチャーに引けを取らない性能を持つ。

VIDEO SALON 2020年4月号記事をボリュームアップしてお届けします。

スイッチャーと言えば、映像を切り替える人のことを思い浮かべる方が多いかもしれないが、ここではスイッチャーという機器について見てみよう。現在のスイッチャーは、様々な映像効果を使って演出を手掛けられなければ、その存在価値は低くなってきている。また、手に届きやすい価格帯で、様々な機能を備え、操作方法もわかりやすくなければならない。スイッチャーを手がけるメーカーは数多くあるが、そのなかでもRolandが新しく発売したV-8HDは、操作する者の意図を表現する優秀なスイッチャーのひとつ。今回はその性能や特徴について詳しく見てみよう。
レポート●丁 龍海(R&Y Factory)

◎入出力はHDMIがメイン

映像の入出力は主にHDMIの仕様。入力が8ch、出力は3ch用意されている。入力1~6は通常のHDMIだが、7〜8はスケーラー機能を備えており、解像度が異なるパソコンやタブレットなどの映像を最適な解像度に合わせてくれる。出力のHDMI3系統は、AUX、Program、Preview、Multi-Viewの4タイプの割り振りが自由に選べる。音声入出力はRCAピンタイプが使用されており、入出力レベルは共に-10dBuが基準となっている。アンバランスなので距離が長い場合には注意が必要である。またマイクなどのXLRを入力したい場合には、一度カメラに入れてエンべデットされた音声をHDMI経由で入力する方法も選択肢のひとつである。▲V-8HDの裏面。端子類は省スペースに上手くまとまっておりHDMI、RCAピン、USB、TSRが並ぶ。

 HDMI端子は縦差しタイプになっており、上下のレイアウトがないので抜き差ししやすい。

裏面にはそのほかに2種類のUSB端子が備わっている。Type-Aは、画像やファームアップなどの入力に使われる。Type-BはiPadと接続して「V-8HD Remote」で様々な操作ができる。そしてRolandならではの特徴として挙げられるのが、TSR端子が備わっていること。これは音声の入出力のフォン端子ではなく、フットスイッチやエクスプレッション・ペダルを用いて、コントロールできるようになっている。

側面にはミニステレオフォン端子とボリュームダイヤル、電源スイッチが配置されている。電源スイッチは切り替え式なので、スイッチ式のように、ケーブルの抜き差しでの誤操作から電源を落としてしまうようなリスクが少ない。全体的に各端子はコンパクトなボディに上手く配置されている印象だ。▲V-8HDの側面部。電源部は小さめかつ突起の浅い切り替え式スイッチ。

 

◎HDMIが不安という声

映像関連に長年携わってきた者にとってはHDMI 8chスイッチャーと聞くと、「HDMI」という単語に不安感を抱くのではないだろうか。筆者もその内の一人でもあった。「HDMIは抜けやすい」「長距離運営には向かない」など理由は様々だが、現在のHDMIに関する技術は進んでおり、光ファイバーHDMIケーブルや、HDBaseTといったLANケーブルにて長距離運用を可能にする機器が揃っている。これらの技術は既に多くの現場で運用されており、実績も多いことから安心して運用しても良いだろう。また、多くのカメラ機器は、HDMIは備わっているものの、SDIへの対応は限られ、価格帯も少し高めになっている。HDMI端子の利便性を今一度確かめてみるのも良いだろう。

◎24パターンがワンタッチで選べる

V-8HDには、8chの映像入力のほか、8画像の静止画を記録することができる。しかも8画像のデータは電源スイッチを落としても記録されているので、機材チェック時の段階で仕込むことができるのがいい。この8画像は各チャンネルに振り分けられる他、iPadのアプリを使えば、ワンタッチで送出することができるので、8ch+8画像の16画像、PinP、DSK、SPLIT機能を用いてメモリー機能に割り振れば、24パターンの演出ができる。

 ▲電源を入れると、派手な立ち上がりから、本体に記録した画像データを読み込むモードになるのだが、思った以上に時間がかかる。

 ▲メニュー画面はVシリーズの構成なので、わかりやすく操作がしやすい。タッチパネル式モニターではないので視野角が広い。

▲Vシリーズにしかない、Tバースイッチング。V-1やV-02HDのような直線的な動きなので、今までのスイッチャーを使っている方には違和感を感じるかもしれない。

 

◎使いやすさの一番の秘密は「MODE」ボタン

V-8HDに設けられた「MODE」ボタン。このシステムはV-8HDの1番の魅力でもある。ここを使えばメインスイッチングボタン上部の小さめのサブスイッチングボタンに、AUX、PinP 1、PinP 2、MEMORYと4つの機能があり、それをささっと切り替えることができる。メニューから入り込んでの作業がなくなり、直ぐに操作できるのがすばらいい機能。VR-50HD Mk2にも似たような機能があったが、4chスイッチャーでは扱うのに制限がありすぎた。またV-60HDでも「MODE」ボタンはあったが、AUXとMEMORYの切り替えのみで、使う頻度はそれほど多くはなかった。

 V-8HDのもっとも優れた特徴となるMODEボタン。AUX、PinP1、PinP2、MEMORYの4タイプのスイッチングができる。

8chの強みをいかし、操作もしやすいので必ず使いたくなるV-8HDは、さらにAUXアウトのスイッチング、2つのPinPのスイッチング、メインスイッチングの他に、もう1系統のスイッチング作業が簡単に行なえる2系統をコントロールできるスイッチャーと思っても良いだろう。

◎プッシュ式ダイヤルボタンでさらに使いやすく

Rolandのスイッチャーでプッシュ式ダイヤルボタンは、メニューを選択、コントロールする代表的な機能。今回は、その機能がPinPのダイヤルボタンにも使われている。通常はPinPのポジション(場所)を決めるための2つのダイヤルだが、プッシュすることで「拡大」と「ズーム」することができるので、もうメニューに入り込む作業は不要。また、隣のに設置された「PVW」ボタンを使ってプレビュー画面で簡単に確認作業ができる。V-8HDのPinPは、他のスイッチャーにはない使いやすさを実現していると思う。

 PinPのダイヤルはプッシュすることでサイズとズームのコントロール機能が備わっているので、メニューから入り込まなくても操作ができる。

▲コンパクトボディゆえの側面も。SPLIT、VFXのボタンの位置がスイッチングボタン付近にあるので、誤操作に注意が必要。また、手が大きい人にはダイヤルが邪魔に感じるかもしれない。

 

◎静止画も扱いもラクラク

V-8HDは静止画の扱いが楽になった。まずは前述の内蔵メモリーへ8つの画像を記録することができること。難点としては起動時にメモリーの読み込み時間が思った以上にかかるところだが、毎回取り込むことを考えると苦ではない。そして、PNGの静止画のフォーマットが扱えるようになったこと。過去のRolandスイッチャーといえば、静止画はWindows Bitmapファイルしか読み取れず、苦労をする人も多かったが、今ではPNGを取り込めるようになり便利になった。欲を言えば、Jpegファイルも取り込めれば嬉しい話。そこで、簡単に画像を取り込みたいのなら、HDMI経由でキャプチャーする方法がある。V-8HDはパネルに「CAPTURE IMAGE」のボタンを備えている。いままでは、メニューの中から操作をするので、項目を探すなどの時間を要していたものが、ワンタッチで作業できるようになった。▲記録された画像はメニューからinputで割り触れるが、iPadから(後述)だとダイレクトに8つの画像を送出することができる。

 

◎映像処理は4:2:2 8bit

V-8HDの映像処理は、4:2:2プロセッシングを採用している。Rolandで4:2:2 8bitを扱う現行品はV-60HD、V-1HD、V-1SDI、V-4EX、VR-4HDの5機種くらいだろう。それ以外は4:4:4 10bitの映像処理を行なっている。実際、カメラから出される信号の多くは4:2:2 8bitが多いので大きな問題ではないのだが、一番はDSKの「抜き」に影響する。実際DSKを使ってみるとエッジやグラデーションにあまさを感じるが、プロジェクターで大型スクリーンへの投影、インターネット中継などでの画質ではそれほど気になることはないだろう。だが、本心としては製品は全て4:4:4 10bitに統一してほしいところだ。

▲映像処理自体は4:2:2 8bitのV-8HD。DSKのクオリティをグラデーションで試してみたところ、それほど気にはならなかった。

 

◎機器との連携

コンサートやイベントの中継作業をする中で、スイッチング影像の記録が必要になる場合、外部レコーダーのスイッチをスイッチャーでコントロールすることができる。現在、動作確認できているのはATOMOS社のモニターレコーダーになる。スイッチングアウトの影像をスイッチャーパネルで確認しながら録画できるのも安心材料の一つ。本体ボタンから設定するのは、システムからユーザーボタンへ割り振る必要があるが、iPadアプリを使えばその必要はない。またレコーダー側ではRecコントロールをHDMIにする必要がある。▲設定のユーザースイッチを割り振れば、ATOMOSシリーズのRecコントロールが操作できる。スイッチングアウトの収録にはとても便利。▲ATOMOSシリーズで収録する際には、RecコントロールをHDMIトリガーに設定する必要がある。

またRolandご自慢のフットスイッチはV-8HDでも採用されている。V-02HDでは2chということもあって、1つのコントロールTSRだったが、本機は2つのTSR端子を備えている。このことによって、BOSS FSシリーズを使えば、最大4つのフットボタンが制御することができる。▲V-02HDでもおなじみのフットスイッチの機能が使える。V-8HDは2系統用意されているので、FS-6を使えば4パターンが足元で操作ができることになる。

◎「V-8 Remote」で制御をする

最近のRolandのスイッチャーには、iPadやパソコンを使ってコントロールするアプリが多い。本体では操作しにくい項目や、ここでしかできない操作など様々な利点がある。とくに音声コントロールはRolandならではの細かさ。他のスイッチャーにはない細かな操作を可能とする。▲iPad専用アプリ「V-8HD Remote」。おおよその設定がここからコントロールできる。本体パネルにはないトラジションタイムの調整はここから簡単に操作ができる。

今回のV-8HDではiPadで制御する「V-8 Remote」をAppStoreからダウンロードできる。基本操作はもちろん、本体ではスイッチの割り振りが必要だった、ATOMOSシリーズのRecボタンがデフォルトで配置されている。音声のコントロールはVシリーズということもあって、本体にはフェーダーの配置がないので、アプリを使っての操作となる。各HDMIにエンペデットされた音声やAUDIO INを、ノイズゲートやコンプレッサー、イコライザーなど細かくグラフで目視でき、操作していく。AUDIOアウトは、マスターアウトとAUXアウトをパネルフェーダー操作ができる。そして、何度も押している点だが、記録された8つの静止画がワンタッチで出せる。画面でそのサムネイルが見られないのは残念だが、ここをうまく使えば静止画をメインボタンに割り振ることなく送出することができるだろう。 ▲音声のフェーダーはiPadから操作するのがわかりやすい。また、細かな音調整ができるのもRolandの強みのひとつ。

少し厄介なのが、iPadとの接続ケーブル。Type-Bの仕様なので、純正のケーブルでは対応していないので前もっての準備が必要。

 

 

 

総評
現在の様々なスイッチャーの機能は、扱う者にとって複雑な作業を軽減してくれている。私が所有する5台のスイッチャーのなかでも、V-8HDは他の機器には見ることができない魅力的な機能を搭載している。また、コンパクトなボディは持ち運びや現場でのスペース確保を容易にしてくれる。ボディは小さくても豊富なメニュー設定や出力系統など、現場で必要と思われる機能を扱いやすく工夫されている。
HDMI、RCAという、どちらかというと民生機器に多い接続方法を扱うにあたって、不安要素を隠しきれない部分もあるが、その特性を理解して上手く扱えばそれ以上の利便性を感じることができるであろう。この性能で価格帯も30万を切るコストパフォーマンスは申し分ない。8chスイッチャーに様々な機能を搭載したV8-HD。歴代、名機を世に展開してきたRolandだからこそできた一作ではないだろうか。