中国を中心に急拡大中のライブコマース市場。そんななか、新進気鋭の中国メーカーHollylandからライブ配信に特化したオールインワンカメラVenusLiv V2が発売された。この記事では、VenusLiv V2の特徴と機能を解説するとともに、ライブコマースのトレンドや日本市場でのニーズについても考察したい。

レポート●森下千津子株式会社プロ機材ドットコム

 

はじめに

eコマースの進化とライブコマースの盛り上がり

静止画とテキスト中心だったeコマースは、動画の時代へと進化を遂げている。中でも、リアルタイムに双方向のコミュニケーションを可能にするライブコマースは、消費者の購買体験を革新し、eコマースの新たな主戦場として急成長を遂げている。中国では1日で数億円を売り上げるインフルエンサーが登場するなど、その市場規模は爆発的に拡大中。しかし、クオリティの高いライブ配信を実現するには、複雑な機材構成と高度な操作技術が求められ、複数のカメラ、スイッチャー、オーディオミキサー、エンコーダーなどを組み合わせ、煩雑な設定を行う必要があった。

 

ライブ配信の複雑さを解消するVenusLiv V2のオールインワンソリューション

そんなライブコマースの課題を解決するのが、Hollyland VenusLiv V2だ。この革新的なオールインワンカメラは、ライブ配信に必要な機能がすべて詰め込まれている。カメラ、スイッチャー、レコーダー、オーディオミキサー、ストリーミングエンコーダーなどを一台に集約し、シンプルで効率的なワークフローを実現。シンプルな操作感で初心者でも迷うことなく、ハイクオリティのライブ配信ができる。

 

 

 

VenusLiv V2の特徴

直感的な操作性

VenusLiv V2は、Hollylandが独自カスタマイズしたHollyOSというAndroidベースのOSを搭載している。5インチのタッチスクリーンを備え、スマートフォンのような直感的な操作が可能。ホーム画面には、Facebook、Instagram、TikTok、Twitchなどのアプリがプリインストールされているため、アカウントを登録すればすぐにライブ配信を開始できる。

VenusLiv V2のメニュー画面。AndroidスマホのようなUIで各種SNSがデフォルトでインストールされている状態。
スマホのようにFacebookやInstagramなどのSNSにログインして投稿などもできる。
スマホのように各SNSからライブ配信ができる。パソコンを使わず配信ができるのもメリット。
配信設定は、配信URLやストリームキーなどを打ち込まなくても、あらかじめ情報をメッセンジャーなどで送っておけば、QRコードをスキャンしてスマホからコピペで設定できる。

 

さまざまな出力オプション

Wi-FiやLANを使ったライブ配信はもちろん、USB3.0のUVCポートを介したウェブカメラ機能、HDMI出力、内蔵ストレージやmicroSDカードへの録画など、様々な用途に対応している。ただし、HDMI出力については、送出される映像が不安定な時もあり、少し注意が必要だ(※)。基本的にはこれ1台で配信が完結するスタイルを目指して作られたカメラだと言える。

※しかしHollyland本社での配信は基本的にHDMI出力で運用しており、長時間配信でも安定稼働していたので、今後のファームアップで修正している可能性があります。

HDMIとUVCポートどちらからも出力できるので、配信方法の選択肢が増える。HDMIがフルサイズなのも嬉しい。

 

スマホっぽいけどスマホ以上な高画質カメラ

1/2インチのSONY製CMOSセンサーを採用。開放F値1.2の明るいレンズと組み合わせることで、高感度撮影でも低ノイズな映像を実現している。光学3倍ズーム、デジタル2倍ズームを備え、被写体に合わせた画角が選べる。音声については、本体に搭載された3.5mmマイク入力や、USB Type-Cポート経由で外部マイクを接続可能。コンデンサーマイクやワイヤレスラべリアマイクなどを使えば、クリアな音声を配信できる。

 

豊富な機能を搭載し、カメラ以上の多彩な画作りが可能

VenusLiv V2には、プロモード、ビューティーモード、背景合成など、多彩な撮影モードが用意されている。プロモードでは、ホワイトバランス、ISO感度、シャッター速度、露出、絞りなどを手動で設定でき、自分好みの画作りが可能だ。ビューティーモードは、肌のトーンアップや小顔補正を自動で行い、出演者をより魅力的に盛れる。シミやシワが気になる私個人的には、肌補正機能はかなり良いと感じた。背景合成はクロマキー合成と同様の機能で、好きな画像や動画を背景にできる。ライブコマースなら、紹介する商品の情報表示などもできて便利そうだ。

ツールボックス内にカメラの細かい設定ができるプロモードや、クロマキー合成ができる背景除去設定やテロップ合成ができるオーバーレイ設定がある。

 

プロモードでは、WB(ホワイトバランス)、ISO、SS(シャッタースピード)、EV(露出)、絞り、コントラストなど通常のカメラ同様細かく設定できる。

 

光学ズーム倍率3倍までで、3倍以上になるとデジタルズームに切り替わる。

 

ビューティー加工は0~100%で加工度合いを調節ができる。肌の滑らかさや明るさが全然違う。中国ではメイキャップやパーツごとの補正や体形補正などより細かい設定ができるようになっているが、日本でも今後ファームアップで対応予定。

 

テロップを入力したり、スタンプを合成したりすることができる。

 

背景除去して好きな画像と合成ができる。デフォルトでもさまざまな背景画像が登録されているが、USBで自分の画像を読み込んで使用することも可能。

 

 

ワンマン配信に最適なシーン機能とショートカット

自分好みにセットしたカメラアングルやズーム倍率をシーンとして登録でき、テンキーキーボードにショートカットを割り当てることで、瞬時に切り替えられる。商品紹介などで、ワイドとアップを使い分けたい場面に威力を発揮する。ワンマン配信でもスムーズな場面転換が可能となりテンポの良いコンテンツ制作が可能となる。

テンキーのキーボードをUSBやBluetoothで接続し、ショートカットを割り当てることができる。シーン設定をテンキーに割り当てると便利。

 

オールインワン機能の魅力

VenusLiv V2の価格は、16万円台とカメラとしてはやや高めだ。(ミラーレス一眼が買える!)しかし、これ1台でカメラ、スイッチャー、オーディオミキサー、エンコーダーの機能を兼ね備えていることを考えると、コストパフォーマンスは非常に優れている。機材を揃えるハードルが下がることで、映像のプロじゃなくてもライブコマースなどの配信にチャレンジしやすくなるだろう。

 

ライブコマースのトレンドと日本市場

中国でのライブコマース普及

中国や台湾、韓国などでは、ライブコマースが急速に普及している。特に中国ではECサイトでのショッピング体験がライブコマース中心になりつつあり、各ショップが毎日の接客と同じような感覚でライブ配信を行っている。スマホ感覚で気軽にライブ配信可能なVenusLiv V2のようなオールインワンカメラの需要が高まっている。

 

日本市場の課題

一方、日本ではライブコマースの普及が遅れている。その理由としては、大手ECプラットフォームでのライブ配信機能の未整備や、配信にかかるコストの高さが考えられる。特に配信コストの問題は深刻で、ECサイトの利益率を考えると、高額な外注費をかけてライブ配信を行うことは現実的ではない。自分たちで行うにしてもやり方がよくわからない。ライブコマース配信はまだまだ日常的に気軽に行えるものではなく、スペシャルイベントとしてプロに依頼して行う特別なものとなっている。

 

VenusLiv V2の可能性

VenusLiv V2は、これらの課題を解決する可能性を秘めている。まず、操作が簡単で専門スタッフなしでも動画配信の内製化が可能だ。そして1台でオールインワンのため、初期投資を抑えられる。高画質高音質かつ合成による多彩な画作りも可能で、商品の魅力を伝えやすい。さすがライブコマースが盛り上がっている中国メーカーらしい、ライブコマース配信に最適化したカメラだと感じた。

 

 

まとめ

HOLLYLAND VenusLiv V2は、ライブ配信に必要な機能を1台に凝縮したオールインワンカメラ配信機だ。カメラであってカメラではない。スマートフォンのような直感的な操作性と、多彩な配信オプション、高画質・高音質、豊富な撮影モードを兼ね備えている。ワンマン配信にも適した使い勝手の良さは、ライブコマースなどの新しい配信スタイルを後押しするだろう。機材選びに悩む配信者にとって、VenusLiv V2は魅力的な選択肢となりそうだ。

 

森下さんがノダタケオさん、泉 悠斗とVenusLiv V2のライブ配信講座を開催した動画。