Xiaomiから登場したフラグシップモデル・Xiaomi 15 Ultra。CMや映画などの分野で活躍するシネマトグラファーの湯越慶太さんに実機をテストしてもらった。一線で活躍するプロの目にはどのように写ったのか?
 

 

レポート●湯越慶太

東北新社OND°所属のシネマトグラファー。福岡出身。CM制作部に在籍中から撮影が好きで、撮影部に転向。カッチリした建築ムービー、お話しもののショートフィルム、手持ちでドキュメンタリー、食べ物シズルなど、得意科目はいろいろあります。エモくてカッコいい映像をたくさん撮りたいです。

 

 

Xiaomiのフラッグシップモデル「15 Ultra」は、前作14Ultraに引き続き、ライカとの共同開発によるカメラシステムを搭載し、スマートフォンの領域を超えた映像表現力を売りにしています。

今回のレビューでは、動画表現にフォーカスして映像制作者目線でこのスマートフォンの撮影性能を掘り下げてみたいと思います。



より「カメラらしさ」に全振りしたデザイン

14 Ultraでは、スマートフォンらしいシルバーの本体に、カメラらしいカバーやハンドグリップを装着することでカメラに「変身」するというギミックがありました。それはそれで楽しいものだったのですが、今回はユーザーの多大なる声に答える形で(?)、本体デザインがそのままカメラをイメージしたシルバーとグッタベルカ調の黒いゴム部分のツートンになっており、変身することなくカメラらしい外観となっています。また各種レンズやフラッシュ、マイク等は円形のカメラユニット部分に集まっており、一つの大きなレンズユニットのように見えるデザインとなっています。こうやって各種センサーが1箇所にまとめられているというデザインは視覚的にもまとまりが良いだけでなく、機能的にも理にかなっていると感じます。

欲を言うなら、ここまでカメラを意識したデザインだといっそブラックボディが欲しくなってくると言うのがひとつ。また、本体そのままでカバーなしの運用が前提となるので落とさないようにストラップをつけるための穴などが最初からあるといいなと思いました。(注:14 Ultraと同様のカメラグリップ的デザインのPhotography kitも存在するようです)

Xiaomi 15 Ultra Photography Kit Legend Edition 公式サイトより


1インチセンサー搭載、まさに“カメラ”なメインレンズ

公式サイトより

カメラ部分を見てみましょう。14Proと同じく、レンズは4つ搭載。14mm超広角、23mm広角(メイン)、70mm望遠、100mm超望遠と用途に応じて自在に選択できる自由度の高いセッティングになっています。

メインとなる23mmの単焦点レンズは14Proの時と同様に1インチセンサーを搭載。レンズというよりはセンサー一体型の「カメラユニット」と表現した方がしっくりくる構成です。これまでのスマートフォンにありがちな、センサーの小ささによる画質の限界を感じさせない、圧倒的な描写力を発揮してくれます。

特にライカとの共同開発による色再現性やクリアさは秀逸で、14 Ultraでも高評価だったその描写力は15 Ultraでも健在。「撮っていて楽しい」と思わせてくれる、手応えのある写りが印象的です。

さらに、超広角レンズは歪みが少なく、望遠レンズは最大で200mm相当の高倍率を実現。スーパーワイドから超望遠まで、ほぼすべての撮影領域を1台でカバーできる万能機です。





動画モードの構成と画質仕様

Xiaomi 15 Ultraの動画モードは主に「ビデオモード」と「プロモード」に分かれていますが、メニューの深い階層にはスローモーション、映画モード(Cinematic)、デュアルビデオなど、よりクリエイティブなモードも存在します。

「映画モード」は、スマホで映画的な画作りを目指すユーザーにとって魅力的な選択肢かもしれません。エフェクトによってボケ形状の選択(標準/ワイド)によって印象的な玉ボケを再現できるとありますが、やはり後付けのボケ表現にはどことなくぎこちなさを感じてしまうところです。まぁ気軽に使う分にはいいかもしれません。



解像度とフレームレートの選択肢

動画撮影時の対応解像度とフレームレートは以下のとおりです:

– 8K:30fps(Dolby Vision非対応、Log撮影不可)

– 4K:30fps / 60fps / 120fps(Dolby Vision対応、Log撮影対応)

– 1080p:30fps / 60fps(Dolby Vision対応)

– 720p:30fps(Dolby Vision非対応)

非常に残念なこととして、動画では全モードで24fpsが設定から失われてしまっており、映画的な質感を求めるユーザーには肩透かしとなってしまっています。15Proのコンセプトからも24fps撮影は必要不可欠と感じるだけに。なぜオミットされたのか不可解で非常に残念と感じました。ちなみに8KではDolby VisionとLog撮影が利用できない点も制限の一つとなります。

反面、14Proからの進化点として、14Proではメインレンズの時にしか有効にできなかったLogモードが全ての焦点域で有効になっており、映画的な質感やカラコレによる自由な色作りを求めるユーザーには使いやすい進化となっています。Log撮影時には709ビューアシストの他にLutをインポートして使うこともできるので、クリエイティブなルックを求めるユーザーには扱いやすいといえると思います。



手ブレ補正とクロップ

手ブレ補正をオンにすると、映像の安定性は高まりますが、クロップにより画角が1.2倍ほど狭くなります。広角撮影時にはやや注意が必要です。とはいえ、スマホとしては非常に優れた補正性能で、手持ち撮影でも安定した映像を得ることができると思いました。



測光・露出の挙動に改善余地

露出、測光制御は、中央重点、平均、スポットなど、一昔前の一眼レフ的を思わせる設定が並んでいます。今回試写時に悩まされたのは明暗差の激しいシーンで急激な露出変化が発生することがしばしばあり、違和感のある映像になることがありました。ここは今後のチューニングに期待したいポイントです。



アスペクト比・その他の設定

アスペクト比は16:9に加え、「ワイド」というシネマスコープ調の縦横比も選択可能。ただし、UI上で具体的な数値が明示されておらず、感覚で選ぶことになるのはやや不親切です。動画撮影時のアスペクト比の選択肢の少なさはやや寂しいポイント。4:3や1:1の動画が撮れるモードがあっても良いと思うのですが。



音声収録機能も多彩

音声についても注目すべきポイントが多く、マイクの指向性は以下の4種から選択可能:

– 全方向(無指向性)

– 前方重点

– 後方重点

– 周辺(前後)重点? ※UI表現に曖昧さあり

特に後方重点は、自撮りで喋りながらレビュー動画を撮るスタイルにとって非常に実用的。スマホ単体での収録のクオリティを大きく引き上げてくれる機能です。



試写をしてみました

※画像は全て動画からの切り出しとなります。

Logからのカラコレをした感想としては、S/Nの良いスッキリした絵作りで非常にカラコレしやすいと感じます。「センサーの小さいカメラはS/Nが悪くなりがち」と言うのはここ数年で完全に過去のものになったと感じます。レンズ性能も素晴らしく、4K解像度であればかなり細い線も無理なく解像していますが、圧縮由来の粗さはどうしても感じるところなので、カラコレ耐性はあるけど拡大耐性はそれほどなさそうと言うのが素材を触ってみた正直な感想です。


メインレンズは俯瞰の広い絵でも破綻しない解像感と立体感を持つ。



パンフォーカスなら、ちょっとしたミラーレス以上の写りと感じる。



Logモードは明暗さにもかなり柔軟に対応できるダイナミックレンジを持つ。



望遠側もスマホらしくない自然な描写。深度を作りづらいので絵作りにはコツがいるかも。



レンズの歪みなどは皆無で非常に気持ちの良い絵。




総評

Xiaomi 15 Ultraは、14Ultra同様「スマホなのにここまでできるのか」と思わせる驚きの詰まった1台でした。特に:

– 1インチセンサー搭載のライカ製カメラユニット

– Dolby Visionやログ撮影など本格仕様の動画性能

– 映画的な演出を可能にするシネマモード

– 多様な音声指向性設定

といった要素は、Vlog撮影者や映像制作者にとって非常に魅力的ではないでしょうか。特に全焦点距離でLog撮影が可能な点などは、これ1台でちょっとした映像作品が作れてしまう非常に高いポテンシャルを持っていると感じます。

一方で、24fpsの不在や露出挙動の粗さなど、まだ改善の余地もあります。とはいえ、これ1台で「撮って、録って、編集したくなる」──そんな意欲を湧かせてくれるガジェットであることは間違いないと思います。