ソニーから待望の新型ハンドヘルドカメラ「PXW-Z300」が発売された。2018年に登場した先代 「PXW-Z280」 から7年を経て、どのような進化を遂げたのだろうか。“カメラマン目線でどう感じたか”に軸を置いてレビューしてみたいと思う。
※2025年11月時点執筆の記事になります

レポート●畠山佳也
報道をメインにTVの取材カメラマンを長く務め、現在は各種イベントや企業VP撮影、幼稚園の行事撮影やスポーツ中継などを行っている。自身がプロデュースする自動車プロモーション映像制作も手掛けている。
近年のデジ事情
各社から多種多様なハンドヘルドカメラ(以下、デジ)がリリースされているが、代表的なカメラといえば皆さんよくご存じのソニー「HXR-NX5R」ではないだろうか。発売から9年が経ち2020年には生産終了となっているカメラだが、間違いなく一時代を築いたカメラであり、近年のロケに限って言えば今だにNX5Rがデファクトスタンダード機となっている。それはNX5Rのその機能、画質、価格、そして何よりもちょうどいいサイズ感と操作性、それらのバランスが非常に優れており、スペックとして“充分だから”だと考えられる。
そう、決して最高に画質が良いカメラだから選ばれているわけではないのだ。それが意味するところは非常に大きいと思う。Z280などのXDCAMシリーズは、ロケというよりはスタジオやイベントなどの収録現場でよく使われている印象で、現場ごとに求められるさまざまな条件に合わせてカメラを選択しているわけだ。では今回の主役であるZ300はどのようなカメラなのだろうか。いくつかの項目に絞り、カメラマン目線で取り上げていきたい。


第一印象としてはそのスクエアなボディ形状からか意外にもコンパクトな印象。整然と配置されたボタン類が業務機たる道具感を醸し出し、その佇まいからは内に秘めた凄まじい戦闘力を感じる。さすがはソニーのフラッグシップ機だ。いざグリップに手を入れハンディスタイルで構えると、意外と軽く感じて驚いた。
これは重量バランスが優れている証拠で、ハンドヘルドを謳う以上この点はすごく大切だと思う。デジはほとんど右腕だけでカメラ重量を支えることになるわけで、Z300のバランスの良さは非常にアドバンテージが高い。重量級であることは確かで手持ち長回しは遠慮したいが、スペックを考えれば決して重いカメラではない。

センサー
1/2型 4K ExmorR 3CMOSイメージセンサーの搭載により、感度F12の高感度が実現されている。従来から好評だった明るいカメラというイメージはそのままだ。そして3板式ならではの高い色分解性能はマルチカメラ収録などでその力を発揮してくれるだろう。 さらに1/2型センサーから生み出されるボケ過ぎない被写界深度は、ビデオカムコーダーらしい表現力を持っていると改めて感じた。
レンズ
フジノン製フルマニュアルレンズはZ280から引き継いだ形になるが、歪みの軽減など内部構造の見直しが実施されており、画角の周辺から中心までしっかりと解像感がある。光学ズーム比17倍 30.3mm-515mm(35mm換算)というスペックは実用十分ではあるが、ワイド端30.3mmは物足りないのが正直なところ。 フォーカスリングを前後にスライドさせることによりフルMFとAFを切り替えられる機構は従来通りだ。
多彩な録画フォーマットやSーCinetoneの搭載
4K・HD共に幅広いフォーマットが選択でき、完パケや編集フローに合わせて柔軟に対応可能。HDでは60iにも対応しており、ネットワーク接続への対応も含め、報道をはじめとした放送局への訴求力を感じるカメラと言える。そしてZ200同様、Z300にもS-Cinetoneが搭載された。Z300単体でこのtoneを使う機会は少なそうではあるが、SONYのシネマカメラと混在させる場合など非常に融合性がアップするはずだ。ただし1インチセンサー搭載のZ200の方が画の質感的にはよりマッチすると思われるので、Z300にも搭載された事はある意味時代の流れを汲んだ仕様のひとつと捉えるくらいでよいのかもしれない。
●4K 60p/50p/30p/25p/24p
●HD 60p/60i/50p/50i/30p/25p/24p
●MXF録画 MPEG HD422に対応
●XAVC Intra(4K/HD 4:2:2 10bit)
●XAVC Long(4K/HD 4:2:0 8bit/HD 4:2:2 10bit)
●プロキシ録画形式 MP4
●SDR(BT.709) S-Cinetone、ITU709、709toneを搭載
●HDR(HLG) HLG Live、HLG Mild、HLG Naturalを用意
BIONZ XR搭載
ソニーの最新画像処理エンジン「BIONZ XR」が搭載され、高い階調表現や忠実な色再現性能などを実現。より高品質な映像が得られるようになった。またAIプロセッシングユニットの搭載により被写体認識が高精度化し、AF性能が向上したとのこと。実際に試してみたところ、人物が後ろを向いた時にもしっかりと被写体を認識し、AFが追随し続けてくれた。
これは骨格を識別することでフォーカスの追随対象者を認識するというアルゴリズムによるもので、飛躍的に進化した部分といえるだろう。普段はMF運用がほとんどではあるが、このAF性能がより実用的になったことにより、今後Z300ではAFを多用していく予感がした。
S-Cinetone
4K・HD共に幅広いフォーマットが選択でき、完パケや編集フローに合わせて柔軟に対応可能。HDでは60iにも対応しており、ネットワーク接続への対応も含め、報道をはじめとした放送局への訴求力を感じるカメラと言える。そしてZ200同様、Z300にもS-Cinetoneが搭載された。
Z300単体でこのtoneを使う機会は少なそうではあるが、ソニーのシネマカメラと混在させる場合など非常に融合性がアップするはずだ。ただし1インチセンサー搭載のZ200のほうが画の質感的にはよりマッチすると思われるので、Z300にも搭載されたことはある意味時代の流れを汲んだ仕様のひとつと捉えるくらいでよいのかもしれない。
フルマニュアル17倍ズームレンズ
フジノン製フルマニュアルレンズをZ280から引き継いだ形になるが、歪みの軽減など内部構造の見直しが実施されており、画角の周辺から中心までしっかりと解像感がある。光学ズーム比17倍30.3mm-515mm(35mm換算)というスペックは実用充分ではあるが、ワイド端30.3mmは物足りないのが正直なところ。さて、ここからは実際のレンズの操作性について詳しく触れてみたい。カメラマンはアイリス・ズーム・フォーカスの3つのリングをすべて同時に、または極々僅かな時間差で瞬時に操作しているわけだが、それを実現させるためにはカメラマン自身の鍛錬は当然として、レンズの操作性というのが非常に重要になってくる。アイリスリングは特に気になる点はないので割愛し、まずはズームリングから見ていく。
Z300のズームリングは一言で言えば非常に動きが軽い印象。メカニカルレンズはカメラマンが意図した画角を瞬時に作れるなど直感的な操作がしやすく、多くのカメラマンに好まれているが、感情を込めたじわっとしたズームスピードの緩急にも応えてほしい。そのためにズームリングには動きの立ち上がり時にある程度の粘りが必要なのだが、このレンズにはそれがほとんどなく、その点が少し残念だと感じた。それよりも、このレンズで最も気になるのはフォーカスリングの〝渋さ〟ではないだろうか。ズームワークをしながら小指や薬指でフォーカスも同時に微調整するというのは皆さんもよくやる手法だと思うが、それがこのレンズではなかなか厳しいのだ…。
フォーカスリングは微妙なフォーカスフォローをするためにも抵抗なくヌルっと回ってくれるのが理想的。多少の個体差というのもあるかもしれないが、この渋さはZ280の時からそうでとにかくフォーカスフォローがしづらく、少なくとも私の周りでは多くのカメラマン達から不評だった。そしてそれは、残念ながらZ300でも改善されていない。
デジはENGと違って本体重量が軽いので、カメラ本体がブレてしまわないようにリング操作はなるべく力を抜いて行いたい。だからこそそれぞれのリングが重すぎず軽すぎずスムーズに動いてくれることが非常に重要だと考えている。

デジタルエクステンダー検証
Z300ではデジタルエクステンダー×2、×3、×4が使用可能となった(4K運用時は×1.5のみ)。画質的には×2までは全く問題ないと感じた。特に光量に余裕のある環境下では言われないと分からないレベル。しかも光学ではないためF落ちもしない。×3ともなるとさすがにノイズが目立ち始め、×4では解像感に破綻が見受けられるが、それはそもそも光学の時点でどの程度遠くの被写体を捉えているのかによっても評価は変わってくる。
今回は約800m先の鉄塔をターゲットにして試してみたが、普段デジでそこまで寄るような現場はなかなかない。あえて厳しい条件でテストしたわけで、そういう意味では今回のテストを見る限り×3も×4もかなり使えるレベルに達していると思った。イベントやセミナーを開催することが多いホールや貸会議室などは近年どんどん大型化しており、それは企業などの記者会見場も同じ傾向にある。つまりカメラポジションからステージや演台までが遠くて寄りきれないことが多いのだ。なので今はそのような広い会場にも対応できる様に報道のENGは22倍や24倍レンズ(600〜700mm相当)が主流になっており、Z300の光学515mmでは現代の取材カメラとして使うには心許ない。よってこのデジタルエクステンダーは必須となり、アサインボタンにアサインしておけば非常に使い勝手が良いだろう。
×3と×4は報道取材などでの〝緊急用〟と考えたほうが無難だとは思うが、これがあるとないとでは大違いで、いざとなれば×4まで寄れるというのは大変心強い。私は長いこと報道カメラマンとして現場に出ていたので、これは身に染みてそう感じている。
●FHD





●4K



ショック! VFレス
大きなトピックとして、VFが排除された事が挙げられる。確かにデジのVFを使う機会は少ない。LCDモニターが高輝度化したこともあって、屋外でVFを覗き込む事は少なそうであり、思い切ってVFを排除したのは理に適っていると言えよう。それでも私個人としては、VFは絶対に残しておいてほしかった…。何らかの内部異常で画面自体がブラックアウトしてしまう可能性もあり、登山や船上ロケなど、なかなか帰って来られないロケでは少し不安だ。
他にも私の経験談だが、デジで台風や豪雨の取材に行く場合、LCDモニターを開いておくと強風をもろに受けてしまいカメラが揺れやすくなったり、カメラのレインカバーを付けるとLCDの視認性はかなり厳しくなる。その対策として始めからLCDは閉じ、VFを覗いて撮影することがほとんどなのだ。
VFのアイカップを目に押し付けることにより、強風下においてもカメラを安定して構えられることにもつながる。さらにデモ機を晴れた日に外に持ち出したのだが、どうしてもLCDでは見づらくて、ついいつもの感覚でVFを覗こうとしてしまった。LCDモニターに取り付けるVFタイプの社外品パーツも出ているが、結局LCDがブラックアウトしてしまったら何の意味もない。〝ふたつめの見えるツール〟として今まで通りのVFは残しておいてほしかった。




MIシューの使い道
そんなVFの指定席だったスペースにMIシューが移動してきた。公式で案内されているように、そこにMIシュー対応のW/L機器を取り付けることで従来のようにトップハンドルを握れなくなることもなくなったし、撮影しながらでもW/L機器の液晶画面が見やすくなった。さらにアンテナを曲げることでそのままカメラバッグにも収納可能で大変便利だ。しかし残念ながら、ハンドル前方のシューはコールドシューになってしまった。
MIシューの向きは下から上にスライドインさせる構造なので、取り付ける機器の締め付け部が緩むと落下してしまう恐れがあるが、その辺りは対策がなされており、ねじ込み式の落下防止ストッパーがカメラ側に付いている。MIシュー対応のソニー純正アダプター『SMAD-P5』(別売)を使用すれば対応できる構造になっている。
ただし、汎用のシューマウント製品などを取り付ける時にはそのストッパーが干渉してしまい、ロックできず非対応だった。そしてせっかくこの位置にMIシューがあるのだから、MIシューにポン付けできるような“脱着式のVF”があったら良いなと思いソニーの方にお話ししたところ、現時点ではMIシューでは映像信号は非対応とのことだった。
Vマウントアタッチメント
他にも新たな装備としてサイドVマウントアタッチメントが搭載されたが、バッテリー用の端子は非搭載なので、Vマウントバッテリーをそのままカメラ電源として使う事は出来ない。ここにはポータブルデータトランスミッター『PDT-FP1』(別売)やスマートフォン、モバイルバッテリーなどをVシューアタッチメントを介して簡単に脱着可能。つまりアクセサリーマウントという事だ。アイデア次第で様々な使い方ができそうだ。
USB Power Delivery(PD) 対応
Z300には従来のようなACアダプターが付属せず、PD対応のACアダプターとUSBケーブルを使用することとなった。
※100W以上(5A/20V)に対応したケーブルと充電器が必要
これはEUにおける電子機器の充電端子を共通化する法律(USB Type-C採用を義務付ける)が関係していると思われ、ビデオカメラもその対象のようだ。カメラ側にはUSB Type-C端子をロックする機構が設けられており、市販のロックスクリュー付きケーブルを使えばコネクターの抜け防止になる。USBType-C端子の堅牢性にはあまり期待できないので、その取扱いには注意が必要かもしれないが、とは言え、PD給電が可能となったことは大変便利であり、メリットの方が大きいと言えるだろう。
まとめ
ソニーが満を持して世に出したZ300。まさにフラッグシップにふさわしい仕上がりだった。今回は詳しく試せなかったネットワーク接続やライブストリーミング機能なども充実している。そのコンセプト故に気軽にロケに持ち出せるような手軽さはないかもしれないが、じっくり映像と向き合えるような現場では真っ先に候補となるカメラだろう。
使用環境が異なればどんな機種でも当然向き不向きが出てくるし、万人が手放しで100%完璧だと言える物などまず有り得ない。それでもZ300は非常に高い次元でバランスよくまとめ上げられており、これからのスタンダード機になることは間違いないだろう。
