2019年11月22日のZ50登場から5年。フラッグシップ機から磨き上げた画像処理エンジン EXPEED 7を搭載し、素早く反応するレスポンス、被写体認識、高速連続撮影、プリキャプチャ、動画性能においてもH.265 10bit 4K60p、Log、HLGにも対応した初心者からミドルユーザーにもおすすめできるカメラ「Z50II」の特徴を紹介していく。
レビュー●岩本あきら
まずは、Z50IIの概要を簡単にご紹介
ニコン Z50IIは、APS-C(DXフォーマット)のミラーレスカメラで2019年11月に登場したZ50の後継機になります。有効画素数は先代と同様の2,088万画素、レンズ交換式のデジタルカメラで、ボディデザインの変更、高輝度EVF(Z50の2倍の明るさ)、3.2型バリアングル式画像モニター、Z9、Z8、Zf、Z6IIIに搭載されている最新の画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載。
Z6IIIから搭載された機能、Nikon Imaging Cloud、有名クリエイターの色味やオリジナルの色味が作れるイメージングレシピなど、よりクリエイティブに個性も出すこともでき、カメラに任せて簡単に写真や動画が撮れるカメラに仕上がっています。
ひとまわり大きくなった外観の特徴
先代のZ50と比べると大きさ、重さと増えています。Z50は、約126.5×93.5×60mmに対して、Z50IIは、約127×96.8×66.5mm、また重量もZ50は、約395g(本体のみ)に対してZ50IIは、約495g(本体のみ)と100gも重くなっています。
ただ、大きく、重くなったのはネガティブなだけでなく、グリップの持ちやすさにもつながりますし、物理ボタンもピクチャーコントロールボタンなどが5つも増えていて操作性もとても良くなっています。
また後から述べますが、熱耐性を考慮した設計になっているかと思います。端子に関しても、USB-CのPD給電はもちろん、ヘッドホン/リモートコード端子も追加されました。
フラッグシップ並みのAF性能、被写体認識
正直なところ、エントリー機でここまでの被写体認識を積んでくるとは思いませんでした。
なんと!人物、犬、猫、鳥、飛行機、車、バイク、自転車、列車の9種類の被写体を検出。しかも、野鳥撮影をされる方には嬉しい!独立した「鳥」認識が最初から入っています。これは、Z6III、Zfでは、全体の被写体認識には対象になっていますが、「鳥」は独立していないので、Z50IIに専用モードがあるのは大きなポイントのひとつかと思います。
さらにMF(マニュアルフォーカス)時にも被写体検出をすることができ、ピント合わせも検出した場所を拡大することができるので、かなり使いやすいです。これはZf、Z6IIIには入っている機能ですが、Z9、Z8には入っていない機能になります(アップデートで入ることを期待)。
また、半押し拡大解除も写真、動画でもZ50IIは出来るようになっています。Zf、Z6IIIの動画モードでは半押し拡大解除ができないので、こちらもアップデートに期待しています。
動画性能もかなり気合が入っています!
Z50IIは、ずっと私が願っていた4K/60pの撮影(1.5倍のクロップになります)、N-Log、HLGの撮影にも対応し、動画機としても魅力的なカメラになりました。
具体的には、H.265 10bit、8bit、従来のH.264に対応し、H.265 10bit では、N-Log、HLGの撮影も可能になりました。最近では、RED監修のLUTも公開されていて、N-Logで撮影し、RED監修のLUTを使えば、シネマティックな表現も簡単にできてしまうのでとても魅力的です。
ISO感度もN-Logでは通常は800スタートですが、拡張でLo2.0(ISO 200相当)まで下げることが出来るので、ノイズ感も少なく、とても使いやすくなっています。
また、録画制限も30分制限がなくなり、125分の制限はありますが、長回しにも対応しました。長回しの検証をしてみましたが、25℃の環境下でH.265 10bit 4K30p 給電ありで、見事!警告も出ることなく、録画制限の125分の撮影が出来ました!(夏場の直射日光が当たる場所、高温の場所では熱停止する可能性もあります)
これは想像以上に驚きましたし、多少ボディサイズが大きくなり、重量も重くなりましたが、熱耐性も考えてのボディ設計なのだと確信しました。
長回しの検証をしていて搭載されて便利だと思ったのがタリーランプです。録画制限に達する前やバッテリーが少なくなってくると点滅で知らせてくれます。もちろん録画中はランプが点灯し、しかもタリーランプの明るさを3段階から選べて、OFFにすることもできます。
ちょっとマニアックな話になりますが、Bluetoothでタイムコード同期が出来るATOMOSのUltra Sync Blueにも対応しています。これが本当にエントリーカメラなのか?と思うほど、動画性能も惜しみなく詰め込んできたカメラです。
使っていて気になったバッテリーの持ち時間
学校イベントの動画撮影でZ50IIを使ってみました。その時に気になったのが、バッテリー持ちです。
体感としてもZ50、Zfc、Z30と比べても悪くなっている印象でした。実際に仕様を見てみるとZ50、Z30の動画モード:動画撮影可能時間が約75分、Zfcが約80分に対して、Z50IIは約60分になっています。静止画モードでも条件にもよりますが、撮影可能コマ数も減っているところが確認できます。
付属されるバッテリーは容量が少し増えた1250mAhの新型EN-EL25aになっていますが、新型の画像処理エンジン、動画ではタリーランプの追加など消費が増えてしまっているようです。
こちらもバッテリー持ちの検証をしてみました。
条件:Z50II H.265 10bit N-Log 4K30p/Bluetooth:ON/タリーランプの明るさ:2/被写体認識:人物
【結果】
・EN-EL25a 68分
・EN-EL25 53分
となりました。
結果的には、新型のEN-EL25aを使えば、1時間の記録は出来たので良かったですが、予備バッテリーは最低でもひとつは持っておいたほうが良いかと思います。あわせて、PD対応のモバイルバッテリーを持っておくとより安心だと思います。
ボディ内手ブレ補正がないことについて
手ブレ補正に関しては、色々と賛否はありますが、エントリー機、価格帯を考えるとボディ内手ブレ補正が搭載されなかったのは仕方ないかな?と私は思っています。円高、物価高騰の中でZ50IIボディ単体で13万円台は破格だと思います。
それでいて、フラッグシップ機にも迫る(超えているところもある)レスポンスの良さ、AF性能、被写体検出、動画性能を考えるとやっぱりニコンは頑張って価格を抑えてきていると思っています。
本題に入りますが、Z50IIには、今回ボディ内手ブレ補正は搭載されておりません。ボディ内手ブレ補正なしで大丈夫なの?そう思う方もいるとは思いますが、ボディ内の代わりにレンズ内の手ブレ補正で補っています。
キットレンズである、NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR、NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR、NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VRにはレンズ内手ブレ補正(レンズシフト方式)が入っているので問題ないです。
レンズの名称の末尾に「VR」と書かれているレンズに関しては、全てレンズ側にも手ブレ補正が搭載されています。ニコン純正の超望遠レンズには必ず入っていますし、そこまで影響はないかと思います。
影響があるのは、単焦点レンズ、フルサイズのVRなしのズームレンズの使用時です。現状、単焦点レンズでVR、レンズ側に手ブレ補正が入っているレンズはありません。
そのため、撮影時に気をつけるポイントがあります。ブレの少ない写真を撮るならシャッタースピードを速くすれば、カバーできますし、オートで撮る場合でも、明るい昼間であれば、基本的に単焦点レンズは明るいものが多いので、シャッタースピードは速くなります。
問題は暗いところになりますが、手持ちではもちろんブレてしまいますので、三脚を使って固定して撮る、動画ではジンバルを使うといった回避方法はあります。もし、それでも手ブレ補正がないと困る方は、Z50IIは選択肢から外れるかと思います。もちろん、私もボディ内手ブレ補正が搭載されていたら良かったとは正直思います。
手ブレ補正の検証もしていますので、良かったらこちらもチェックしてみてください。
MFレンズにもしっかり対応「レンズ情報手動設定」
MFレンズを使う際にも使いやすい機能が備わっています。上記でも述べていますが、MF時の被写体検出、半押し拡大解除、更にここで紹介したいのは「レンズ情報手動設定」という機能。基本的にニコンのカメラには全て付いている機能ですが、この「レンズ情報手動設定」を登録しないとMFレンズの情報はもちろん、補正機能も正しく補正されません。
そんな中で、今回のZ50IIに関しては、焦点距離、F値、レンズ名まで入れることができるようになっています。しかも、焦点距離、F値も指定して入れることができて、Z50、Z30、Z6IIIなどでは、現状自由に数値を入れることが出来ず、困っていたのですが、Z50IIはそこもしっかり対応しています。上位機種のZ6IIIで出来ないものがいくつか搭載されていたりします。
情報を正しく入れることで、歪み補正や電子手ブレ補正の効きにも影響が出てきます。上記の手ブレ補正の検証では、超広角10mmでの動画の検証を行なってみたところ、手持ちでもある程度電子手ブレ補正が効くようになりました。これはレンズ情報を入れないと効かないので、必ずMFレンズを使う場合は、レンズ情報を登録して使うようにしましょう!
自分好みに設定をカスタマイズ出来るから使いやすい
ニコンのカメラは大きく分けて、カスタマイズできる場所がふたつあります。「iメニュー」と「カスタムボタン」の割り当てです。しかも、静止画、動画と完全に分けられていて、別々に設定することができます。
マルチセレクターの左上にあるiのマークのボタンが「iメニュー」で一番押しやすい位置にあります。そこからよく使う12項目のメニュー、機能を設定することができます。
例)動画のiメニュー
続いて、カスタムボタン機能ですが、ボタンの数も増え、不足を感じず設定することができます。
例)動画のカスタムボタン機能
しっかり、配置を考えた機能の割り当てをすることが可能で、フラッグシップカメラを使っている人にも不満を感じるところは少ないと思います。
私の割り当てについては、詳しく動画で解説しているので、よかったらこちらもご覧ください。
まとめ
全体を通して、Z50IIというカメラは、非常にユーザーの声を取り入れ、使いやすいカメラに仕上がっているかと思います。特に、カメラをこれから始める初心者の方から上位機種をお持ちのプロの方、趣味を楽しんでいる方まで、使い方に合わせて楽しめるカメラかと思います。
特に私がおすすめしたいのは、ファミリー層の方で、私自身も子どもの成長記録や学校イベント、運動会、お遊戯会などでもZ50の時から活躍してくれました。そこから更にAF性能も大幅に向上していますし、被写体認識精度も上がっているので、写真と動画とかなり活躍してくれること間違いなしです!
また、野鳥撮影をされる方にもおすすめできる専用の「鳥」認識、AFロックオン横切りへの反応調整まで可能になっているので、趣味で野鳥撮影される方にもおすすめできますし、これからカメラをはじめる方にとって十分すぎる機能の持った、安心して使えるカメラかと思います。
ニコン Z50II
https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z50_2/
岩本あきら
愛知県名古屋市出身。奈良県在住。
自分探しの旅にアメリカ ロサンゼルスへ。様々なシンクロから帰国後「映像クリエイターになる!」と決め、WEBクリエイターから映像クリエイターに転身。合わせてYouTubeでの発信を開始!流れに身を任せ、Z50 を手にした瞬間、ニコン Zに運命を感じ、Zシリーズを使って映像制作(PR動画、PV、ポートレートムービーなど)を行なっています。ジンバルを使った映像を得意とし、YouTubeでの発信、機材レビューなども行なっています。
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