ZOOMから登場したコンパクトオーディオレコーダーZOOM F2。

32bitフロートオーディオに対応したF2は現場でどう活躍してくれたのか?

ウェディングを中心に活動する映像作家の酒井洋一さんに実際の現場でテストしてもらった。

レポート●酒井洋一(HIGHLAND)

 

「また新しいオーディオレコーダーが出たのか」くらいに軽く思っていたことを、まずは謝りたい。このZOOM F2が革命的な技術を持って登場してきたことを私は知らなかったからだ。ご存知の方も、そうでない方もいるかもしれないが、まず声を大にしてお伝えすべきは、なぜ”革命的”と感じたかという部分に関して。それは「32bit フロートオーディオ」という技術だ。

 

32bitフロートオーディオはオーディオ版のRAWのようなもの

「32bit フロートオーディオ」とは一体何なのか?という声も聞こえて来そうだが、簡単に言うと、どうやら後から録音レベルの調整が可能なオーディオ版のRAWデータのようなものらしい。これまでであれば、録音レベルが低すぎて聞こえない、レベルを後処理で上げるとノイズも乗ってくる。また反対に、レベルが高すぎて割れてしまっていたり。もちろん巷にはリスクヘッジのために、低レベルと高レベルと2チャンネルに分けて同時収録できるものもある。ただ、個人的に後処理や、編集のことを思うと面倒に感じていた。そのような時に「録音レベルなんて一切気にしなくて良いよ」と優しく肩に手を置いて言われたら、制作者としては泣いてしまいそうなくらい嬉しいことだ。

 

まずは結婚式の前撮りに投入した

そのZOOM F2を今回は2作品でテストした。まずは結婚式の前撮り。本来であれば、大きな声や小さな声を出すであろう、結婚式当日にテストできれば良かったのだが、ロケ地の野球場で同じような状況の中で試してみた。もうひとつは、80歳のレジェンドバーテンダーのインタビュー撮影。こちらは野球の撮影に比べ、小さい声だろうと予測していたので、機能を比べるには丁度良かった。

 

野球やソフトボールをやってきたカップルが父親に感謝の言葉を述べ、さらには父親と対決するというストーリー。合計4つのZOOM F2を新郎、新婦、新郎父、新婦父、新婦母、と交代で付け替え、その声を収録した。実際に海外では結婚式の撮影時、カップルにピンマイクをつけることは、よく見るケースではある。しかし日本ではどうかというと、カップルに装着するケースはほとんどないと思う。私もカップルに触れることは積極的ではなかったり、機能設定の手間などから、既存のピンマイクは普段から使っていなかった。しかし、F2は電源を入れてRECを押すだけで、しかも誤作動防止のロック機構もあるということは、究極にシンプルで歓迎したい。

 

新婦からのメッセージは、おそらくあまり声を張らない、むしろ小さめの声で。新郎からのメッセージは、対決ということもあり、マウンドからバッターボックスに届くくらいの大きな声を想定していたが、結果として選手宣誓のような大きな声がグラウンドに響き渡った。編集時にデータを聞くと少し大きく感じたが、ゲインを調整してあげると、しっかりと適正で録音したかのようなデータになった。また、新婦のメッセージなどは多少小さく感じたが、これもゲイン調整で普通にキレイになった。

 

 

当日は風がとても強く、皆厚着をしていた為、マイクの装着場所によっては少しのスレ音やこもりを感じることもあったが、これはマイクの機能の問題ではなく、装着の場所やコツによると思うので、私たちの改善の余地はある。また、バッテリーに関しては2本の単4電池を使用、しっかりと計測したわけではないが、この日は3-4時間撮影をしていたが、全く電池は問題なし。単4電池を2本使用していることあってか、結婚式の本番やイベント時なども問題にはならないだろう。

 

レジェンドバーテンダーのインタビュー撮影で使用

『THE MASTER BARTENDER』

 

次に80歳のレジェンドバーテンダーの撮影で使用した際は、レポートする必要がないくらい、安定した収録ができた。今回、波形を見ながらどのくらいのレンジが確保されているかなどは検証できなかったが、いわゆる「普通に良い」ということだ。もちろん野球に比べ、声が小さかったが、その力みの無い声を素直に拾ってくれるところが安心して任せられる。音が小さすぎて、編集で困ることはなく、後処理で解決できるからだ。

繰り返しになるかもしれないが、録音レベル、リミッター、バックアップトラックなどをケアしなくて良いということは本当に驚きだ。私も他社のピンマイク型オーディオレコーダーを持っていたが、今回のZOOM F2に触れてみて、時間がなかったり、バタバタしている撮影時に32bit フロートオーディオの技術で「考えることが無い/減る」ということこそ個人的には「革命的」と銘打っても良いと思う。

実際のところ「音声」という領域に関しては、その奥深さから、苦手としてきたビデオグラファーも少なくないと思う。しかし昨今、生中継やテレワーク、リモート会議などの需要が増えたことで、さらに注目されていると思うので、しっかりとチェックすべきマイク、アイテムの一つとしてこのF2は確実に挙げておきたい。

 

 

●製品情報

https://zoomcorp.com/ja/jp/handheld-video-recorders/field-recorders/f2andf2-bt/