インハウス動画制作の現場から〜社内ビデオプロダクションのススメ〜第4回カクテルメイク株式会社


Web上における動画コンテンツの重要度が高まっている。業種や業態によらず、そのための動画制作が急務だ。カクテルメイク株式会社が提供する動画の内製化支援サービス「RICHKA(リチカ)」は、そんな制作ニーズに応えるべく、容易にWeb用の動画コンテンツを制作できるツールだ。今回は視点を変え、動画のインハウス化支援ツールの状況をレポートする。

取材・文・構成●矢野裕彦

 

カクテルメイク株式会社
https://cocktail-make.com
https://richka.co


▲カクテルメイク株式会社の松尾幸治CEO。2014年にカクテルメイクを創業し、Web動画の制作を中心に活動してきたが、現在は内製化支援ツール「RICHKA」の開発・提供をメインに行なっている。以前は動画制作のスタッフが中心だったが、現在はRICHKAの拡充のためのエンジニアの増員を進めている。

 

動画コンテンツ発注側と制作側の予算の乖離を埋める

ここ数年の動画ニーズの高まりに合わせて、動画制作の業界全般に顕在化してきた問題がある。動画を必要としている発注側と、動画の制作者側とのコスト感の乖離だ。動画の制作は専門機材に加えて、ディレクターやカメラマンなどのクリエイターも必要で、制作コストがどうしても高くなる。しかし発注側は、そこまで手の込んだものを必要としていないことが多く、WebのバナーやSNSへの投稿素材といった、手軽で見栄えのする動画を、低コストで大量生産したい。そこで、インハウスでの動画制作が進んでいるわけだが、一方で、初期投資を必要としない手軽なツールも注目されている。

カクテルメイク株式会社が提供する「RICHKA(リチカ)」も、そんなツールのひとつだ。同社の松尾幸治CEOは、元々動画制作に携わってきており、先に挙げたコスト感の乖離を肌で感じていたという。

「カクテルメイクは2014年に創業したのですが、設立後は“動画×Web”を軸に制作を手がけてきました。Web動画と呼ばれるものは、あらゆることをやってきました。PVや動画広告、ライブ配信、YouTubeチャンネルの運用、短編動画を月に300本作るような大量制作にも携わってきました」

それらを経験した上でたどり着いた結論が「企業のブランディングコンテンツのような本格的なもの以外、Webの動画コンテンツは制作コストが基本的に合わない」ということだった。企業の動画制作を請け負うとなると、見積もり額がどうしても数十万や数百万になってしまうのが常だが、そこまで高いレベルの動画を望まないクライアントとは、当然予算が合わない。さらに、ネット上のコンテンツは移り変わりが早く、制作体制を整えるための初期投資も回収しづらい。

 「だったら、動画の制作コストを限りなくゼロに近づけたら、世の中で何が起こるのだろうか、という考えに至り、それを試すために開発を始めたのが、RICHKAです」

 

◉マニュアル不要の動画ツール 「RICHKA」

RICHKAは、Webブラウザー上で動画の制作ができる支援ツール。初心者にも扱えるように、簡易な操作に特化したUIが特徴。既存のフォーマットのほか、ブランドイメージなどに合わせたオリジナルフォーマットの制作にも対応する。価格は、28,000円/月(5本までダウンロード可能)から。https://richka.co

 

操作範囲に制限を加えることで品質の高い動画を制作

RICHKAは多彩なフォーマットが用意された動画の内製化支援ツールだ。コンテンツに合わせたフォーマットを選択して、ビジュアル素材を配置し、必要に応じたテキストを流し込むと動画ができ上がる。それらの作業をすべてWebブラウザー上で行えるようになっているのがポイントで、制作側の環境を選ばない。加えて、動画制作の素人でも簡単に作業できることを重要視したインターフェースも特徴だ。尺やテロップのタイミングも決まっていて、細かなディレクションも不要だ。

「一般的な動画制作のタイムラインは、素人にはわかりにくいと考え、どちらかというとブログ制作ツールのようなUIにしてあります。タイムライン自体は、縦にスクロールするようになっています。基本的には数枚の静止画の素材を用意すれば、数秒から数十秒の動画が作成できます」

RICHKAはフォーマットでしか動画が制作できないので、その意味では自由度は低い。しかしそこには、Web動画のプロとしてのノウハウが活かされている。

「フォーマットは多数用意していますが、ビジュアルのカスタマイズや尺の調整はわざとできないようにしています。素人の方に自由に動画を作ってもらってわかったのは、どうしても長尺の動画を作りたがったり、文字情報を詰め込んだりしたがる、ということなんですね。スマートフォンがビューワーの中心になっている今のWeb事情では、文字情報が詰め込まれた動画は見てもらえません。スマホは、一日に3時間観られているメディアだと言われていますが、1回に操作する時間は平均して1分ほどです。その時間を動画の閲覧に割いてもらう必要があるわけなので、フォーマットも、そこにフォーカスした短くシンプルな動画になるように工夫してあります」

あえて制限を設けることで、良質なコンテンツに仕上がるようにしてあるわけだ。

 

◉充実したフォーマットから目的のジャンルと配信先を選択


▲RICHKAの特徴は、センスがよく汎用性の高いフォーマット。スポーツ、不動産、美容といったジャンルや、Facebook、Instagramといった配信先でフォーマットを選択できる。カクテルメイク株式会社の川嶋紗也香さんによるデモでは、ビデオサロンのサイトの記事のURLを貼り付けるだけで、ページ内の画像が素材として登録され、すぐにショートムービーが完成した。

 

Webの検索結果に動画が表示される傾向

また面白いのは、Webサイトの記事のURLを入力すると、そのページに掲載された画像を自動的に素材として取り込む機能。つまり、画像が入ったWebの記事から手軽にダイジェスト動画が生成できるわけだ。

「動画の必要性は感じながらも、導入コストや制作体制の問題でインハウスでの制作に至っていないWebメディアが多数あります。その一方で、早くから動画を導入しているメディアもあり、今は制作体制の差がどんどん広がっている状態です。しかし、サイトには過去の記事は多数あるわけですから、その資産を生かして手軽に動画を制作できる機能を用意しました」

実際、RICHKAを導入した企業には、バナー動画の制作を主体とした広告代理店のほか、Webの記事を大量に抱えている出版社やWebメディアが多い。

また最近では、メディアの記事に短い動画を添えるのがトレンドになりつつあるという。その目的は、インプレッションを上げることにある。

「Web検索の結果に、動画が出てくることが多くなってきました。また、検索する側も、HOW TOや使用方法を調べる際に、動画検索を行うことが増えています。記事にも動画が入っているほうが、SEO的にも有利になりつつあります」

コスト削減に威力を発揮しているRICHKAだが、松尾氏の目的は、動画制作全般のコストダウンではない。

「今はとにかくフォーマットを増やして用途を広げ、Web上の動画コンテンツの総量を増やしたいと思ってます。動画コンテンツが増えれば、むしろ一般への動画市場への理解は進み、動画のプロが作るクリエイティブの価値の高さも見えてくるのではないでしょうか」

クリエイティブに対するリスペクトを持ち続ける松尾氏の姿勢が、ツールとしてのRICHKAの存在意義を確立しているようだ。

 

RICHKA導入事例:ゼネラルパートナーズ
記事を執筆するライターに負担をかけず動画の制作までを一任できる


▲株式会社ゼネラルパートナーズ 佐藤古都さん

株式会社ゼネラルパートナーズが運営する「Media116」は、障がい者向けのライフスタイルメディア。障がい者向けのメディアとしては珍しく、「車椅子で行けるカフェ」「聴覚障がいがあっても楽しめる映画館」といった日常で役立つさまざまな情報を、障がいがある当事者向けにライトにわかりやすく提供している。同メディアでは、SEO対策を目的に記事への動画掲載を考えていた。担当する佐藤古都さんは、広告代理店出身で、動画コンテンツの制作の大変さはよく知っていた。

「バナーやキャンペーン動画などを数多く作ってきた経験があったので、外注での動画制作がコスト面や工数の面でいかに大変かわかっていました。そこで、内製で何とかできないかと考えていたところ、たまたまSNS広告でRICHKAを知りました。過去記事から動画を生成するという目的にもピッタリだったし、操作が簡単で、記事を執筆するライターに負担をかけることなく動画の制作までお願いできるところも大きなメリットでした」

同社では、短時間しか働けない障がい者も雇用している。通常はITや経理のサポートをしてもらっているが、RICHKAを使って過去記事からの動画の制作もやってもらったそうだ。この手軽さも大きなメリットだった。また、動画導入の結果もすぐに出たという。

「『障害者 転職』といった人気のキーワードでもグーグルの動画タブの検索結果で1位が取れました。通常の動画SEOでは、かなりのコストをかけないとここまでの結果は出なかったと思います」


▲「Media116」では、記事の冒頭に動画を配置するようにした。記事制作後にURLをRICHKAに入力すれば、記事の画像が素材として動画に配置される。http://www.media116.jp

 

ビデオSALON2019年1月号より転載