【NEW AGE CREATORS vol.04】いっしん〜自己表現としての楽しさを満喫する、アーティストのような制作スタイルに注目


自己表現としての楽しさを満喫する、アーティストのような制作スタイルに注目した

取材・文●村松美紀

PROFILE
モーショングラフィックスデザイナー。名古屋学芸大学映像メディア学科在学中。自主制作活動を主軸としTwitterやYouTubeで作品を発表。番組等のプロモーション動画やWEBCM等なども手がける。

 

 

いっしん’s PROJECT introduction

鮮やかなグラフィックで初の1分動画、物理的な空間で展示

『Quiet or Upset』

大学3年生の時、企画展示に向けて制作。グラデーションが鮮やかなグラフィックで、Quiet(静寂)とUpset(動揺)を表現。飛行機や富士山などの具体的なモチーフが登場し、物語性を感じる。会場は学内で、展示には個人ブースを作って物理的な空間を用意。展示の際には1分間のカウントダウンムービーを加えたことで、鑑賞する人を展示の世界観に引き込むことにも成功。

視点が180度ひっくり返るような表現が7秒あたりにあります。一旦ブラックアウトして飛行機のカットになるまでが、静寂と動揺が切り替わる瞬間です。制作途中で自分でも驚いたことは、フレーム数は3つのみと少ないのに残像もなく鮮明なカットを作ることができたことです。これは表現としては成功事例で、現在の作品づくりの基準にもなっています。

自分らしさは、目をひくグラフィックのグラデーションとモーションのバランスを高い次元で表現することだと思います。また、楽曲「PRNG (Hercelot Remix) by Yoshino Yoshikawa」は、3年前から注目していて、これを映像にしないのはもったいないと思っていました。1分ほどの大きな作品を制作するタイミングだったので使用しました。

 

『Motete!』

手を実写撮影したものを図形と同じひとつの要素として扱っていた意欲作。実写とモーショングラフィックスの掛け合わせに挑戦した作品。

 

 

◆いっしんとはどんなクリエイター?

「他人にどう見られているかより、快楽の追求に近いです」  作品づくりについて、言葉を探しながらもはっきりとそう語るのは、モーショングラフィックスを中心に活動するクリエイターのいっしんさん。作品のモチーフの大半に抽象図形を使用し、色使いとモーションのバランスにこだわりを持つ。

モーショングラフィックスは中学生の頃に始める。高校3年生になる直前の2018年、自身の作品をまとめたリールをTwitterに投稿したことで、SNSのフォロワーが増加し、仕事も多数舞い込むようになった。GoogleやMicrosoft、NHKといった大きなクライアントの映像も数多く手がける一方で、「自己表現として自主制作することが楽しい」と、アーティストに近い感覚で創作活動していることがうかがえる。

作品づくりの流れはまず曲を探し、楽曲の起承転結を大まかに掴み、After Effectsで編集。「絵コンテは作りません。面白い案が思い浮かんだら作る」  いっしんさんの強みは、自らの感覚を信じる力だ。

現在は大学の卒業制作に取りかかっている。過去作品は、1分未満の短い動画が多いが、作品づくりのスキルが上がってきた手応えから長編のものに挑戦しているという。「限定的な範囲でも良いから、あくまでモーショングラフィックスデザイナーとして評価されたいです」と語る。

大学卒業後は「マイペースに自主制作を続けたい」といっしんさん。1年に10を超える作品を生み出していた頃もあったが、昨年が7つ、今年が4つと減少傾向。作品に落とし込めていない表現が山ほどあることと、昨年から作品に求める水準を明確に上げたことで、アウトプットに時間をかけている。「納得できるものを世に出すには時間が必要。もし自分が自分のクライアントだったらOKをもらうのが大変だと思います」と言いつつどこか嬉しそうな表情を見せた。

 

主な機材・ツール

 

 

VIDEO SALON 2022年12月号より転載