動画配信スタジオ 運営日誌 第18回 背景幕を使った ワンルームスタジオの構築


第18回 背景幕を使った ワンルームスタジオの構築

写真・文◉川井拓也(ヒマナイヌ)

 

スタジオのレイアウト図と使用機材一覧

▲8帖の空間を有効に活用するため、各機材の配置なども事前にシミュレーション。

 

 

グリーンバックで合成するか?アナログな背景幕にするか?

リアルなセットは美術的に作り込める面白さがあります。しかし画のトーンを変えたい時に簡単には変えられません。そこで1枚絵を使った背景を用途によって差し替えていくスタジオを作るとします。最初に悩むのはグリーンバックを使って合成でやるか? アナログな背景幕にするか? です。

グリーンバックはシングルカメラなら合成も簡単なのですが、マルチカメラにするとスイッチャー側の条件が変わってきます。引きのカメラのグリーンバックに合成する素材と寄りのカメラに合成する素材はトリミング位置が変わってきます。レンズの焦点距離に合わせてボケ具合も調整する必要があります。

バーチャルセットに対応したTriCasterなどを使えば対応できますが、放送機器に近づいていくので機材コストも跳ね上がります。その点アナログな背景幕は布を吊るして、それを照明してマルチカメラで切り取るだけなのでヒマスタ型スタジオに導入されているシステムそのままで対応できます。

 

沖縄「ハブスタ」でリングライトを使った照明を実践

プロ機材ドットコム本社内にある沖縄「ハブスタ」は背景幕を使ったスタジオです。背景幕自体を商品として扱っているので、ショールームスタジオとしての意味もあります。このスタジオの拡張で使ったのが「ビューティーライトマットホワイト」という名前のリングライトです。

本来は女の子のポートレート撮影用の照明機材でリングの真ん中にスチルカメラを入れてモデルの瞳にキラキラを入れて撮影します。2つのダイヤルで色温度と照度を自由にコントロールできるので操作が簡単です。

背景幕はくっきりはっきり写りすぎるとそれが布であることがわかってしまうので、このリングライトは正面から当てるのではなくスタンドを高く伸ばしてトップライトのように使います。

こうすると人物にほどよく光があたりながら背景幕は上手く沈んでくれるのです。灯体が増えてくると、セッティングも時間がかかりますが、リングライト2つでも3人程度の演者には充分に光を当てられます。

 

小さな8帖ワンルームをライブ配信スタジオにできるか?

この沖縄「ハブスタ」の経験を活かして東京に新しいライブ配信スタジオを作ることにしました。それが「ヒマナイヌスタジオ六本木」です。六本木は地価が高く、広い物件でスタジオをはじめるにはイニシャルコストがかかりすぎます。そこで8帖ワンルームの会議室をライブ配信スタジオに改装することにしました。

自由に使えるのは4×3m程度のスペース。カメラと人物の間は1.5m、人物から背景幕まではわずか50cmしかありません。チープな絵にならないか? 不安もありましたが、特注の3m幅の背景幕と2つのリングライトにF1.7の開放値を持つレンズを組み合せたところ満足のいく質感の絵になりました。

映像が公開されると「『カノッサの屈辱(テレビ番組)』みたい!」というコメントが複数寄せられ内覧会も盛況となりました。ここはヒマスタ型としては史上最小サイズですが東京ミッドタウンの目の前というアクセスの良さを活かして法人専門スタジオとして稼働させていく予定です。

筆者が六本木にオープンしたワンルームスタジオ

▲8帖ワンルームの一室に本棚の絵が描かれた背景幕を背景に対談・鼎談用スタジオ。ローランドVR-1HDをベースに3カメ自動スイッチングで運用できる。

 

 

カスタムの背景幕制作は 意外と安い!

ワンルームの小さなスタジオでも上手く照明をあてれば背景幕でも充分な映像を作れる! 今回はカタログにある既存の本棚デザインを使いましたが今後カスタムの背景幕もつくっていきたいと思いました。実は画像データ持ち込みでも背景幕の実費にプラス1万円程度で作れるのです。これまでに海、都市風景、バー、本棚などを試してきましたが自然光があたっているものより暗めの背景幕の方が照明で人物に馴染ませやすいということがわかりました。ストックフォトなどをくまなくリサーチして自社スタジオの引きカメラのレンズ焦点距離にあった背景画像をリサーチしていきたいと思います。

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次回は演者にATEM Miniを操作してもらうセルフスイッチング&モーションタイトルについてお話します。

 

実際の配信映像


▲カメラはパナソニックGH3とGH2。F1.7の単焦点レンズを使用。

 

 

 

VIDEOSALON 2020年1月号より転載