写真から何となく察することができる通り、撮影日はこの冬一番の寒さが東京都心を襲った日。「これまでで一番寒かった!」とは玲花ちゃんの一言。そう、「これまでで」とは「藤沢シネマ」のロケの中で一番寒かった…ということなのだが、こういった言葉で出るということはつまり、いよいよこれが最後の撮影になるということ。
 昨年の3月号から始めて1年と1カ月。1回お休みしたために5月という季節を飛ばしてしまったが、四季折々の日本の風景の中で、12人の映像作家が藤沢玲花という女優を十二様に描ききれたということは、ひじょうに感慨深い。ユニークな作品群に、読者の皆さんにも満足いただけたことだろう。
 さて、最終回を担当してくれたのは北野組の映画のメイキング映像などを手掛けてきた雨宮真五さん。「最終回」であること、「ビデオサロン」であること、そして震災後であること…を強く意識され、ビデオカメラを少女に持たせ、明るい未来がその先にあることを描きたいと、今回の物語を書き起こしてくれた。
 雨宮さんが得意とするドキュメンタリースタイルをとるために、撮影にはデジタル一眼カメラではなくHDVカメラを選択。ほとんどのシーンを手持ちで撮影し、また藤沢さんに持たせたカメラの映像も使って編集するという手法に打って出た。
 最後に、1年間頑張ってくれた藤沢玲花さん、お疲れ様でした。寒い日か、暑い日ばかりだったね。いい思い出になりそうです。最後の上映時間になりました!
<お知らせ>「藤沢シネマ」全作品の劇場公開が決定!5月13日(日)横浜・ブリリア ショートショート シアター(www.Brillia-SST.jp)にて。藤沢玲花さんや監督の舞台挨拶も予定しています。詳細はビデオサロン本誌やビデオSALON.Web でお知らせします!!


『Shooting Memories』



あらすじ
めぐみ(藤沢)は将来に不安を抱いている高校生。亡くなった父が残したビデオの風景を頼りに思い出の地へ向かう。そこで自らにカメラを向ける時、彼女が浮かべる表情は…。●カメラ:ソニーHVR-Z5J / ●編集:グラスバレーEDIUS Pro 5 / ●上映時間:12分52秒
脚本・監督・撮影・編集●雨宮真五
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▲最終回という大役を準備期間がひじょうに短い中で快く引き受けてくれた雨宮監督。北野 武監督作品のメイキング映像を手掛ける。
主演/めぐみ役●藤沢玲花
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▲半年前に亡くなった父との思い出の地を探しに行く少女を熱演。カメラを自分に向け、レンズを通して父親に語りかける姿は必見。
藤沢玲花さんの公式HP(ジェイライブ)●http://jlive.tv/reika.html
制作スタッフ
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藤沢さんを入れてもたった2人のロケ隊。「藤沢シネマ」での最少人数構成となった。雨宮監督、実は天気に裏切られた失意の中での精一杯の笑顔。「賭け負けた…」の一言はまるでスティーブ・マックイーンのようだった。
●選曲・MA:MOKU
●協力:M2 Music、妹尾経利(EDO)

制作後記 / 雨宮真五


 企画のお話を頂いたのは昨年末でした。打ち合せの前にこれまでの作品を拝見したのですが、とにかく多彩なラインナップであり、かつ映像のクオリティも高い。連作で様々な物語を作られてきた本企画ですので、その面白さは感じつつも、自分が撮る場合にどうすればよいのか。そこはいろいろと悩みました。
 私はドキュメンタリーやメイキングなどを手がけることが多く、いつもカメラを抱えて現場を走り回っています。常に何が起こるか分からない状況に対応するには三脚に据えず、ハンディで動けるようにしておくのが鉄則です。そうしたドキュメントの要素をドラマの中に持ち込めれば、多少荒い映像でもより心情が伝わるのではないだろうか。自分の撮影スタイルを踏まえたうえで脚本作りに取り組み始めました。
 また、物語をどう作るかという過程において心がけたことがいくつかあります。
※最終回らしく、未来への希望を持った物語
※主演の藤沢さん、そしてこれま での作品に対してのリスペクト
※本誌読者とドラマを繋ぐ要素
 その結果が主人公自らカメラを持って撮影しながら歩くというスタイルになりました。常に移動していく物語の中で、主人公の過去が次第に現れ、主観映像の揺れる感じが心情ともシンクロしていく。それはドキュメントタッチのドラマとして効果的に使えるはず。そんな思いでした。実際、彼女自らが撮った映像も作品中で効果的に活きてくれました。
 音の仕上げに関してはしっかりと着地させたいと考えてましたので旧知の音楽家、MOKUさんに無理を言ってやっていただきました。改めて携わっていただいた皆さんに感謝いたします。2011年は様々な出来事があり、日本は激動の年でした。その中で、微かな希望の灯を点すような作品にしたいと思い仕上げたつもりです。皆さんに少しでも暖かい気持ちになっていただければ幸いです。