里山の環境でスタジオと事務所物件を格安で入手してリノベーション
地方ならではのワンストップの情報発信で地域に貢献したい

取材・文/編集部 一柳

 

山口 聖巴さん www.ids-studio.jp

 

 

山口さんの撮影した作品より

『1000年アート里山・庄原 ブランディングムービー』

庄原市は広島県の北東部、島根県と鳥取県に隣接した県境に位置する。大自然から里山までが広がる地域。庄原観光推進機構から依頼されて作ったもの。庄原に住んでいる人にもその良さを改めて訴えかける映像になっている。

 

『2つのルートで巡る1000年アート 春夏編 (観光促進動画)』

旅行先として「選ばれる庄原市」を目指して企画された観光ブランディングキャンペーンが「1000年アート里山・庄原」。こちらは観光ルートの紹介で、春夏編と秋冬編がある。

 

引っ越した所が有利な立地

キャリアのスタートは写真。ハワイでウェディングを中心に撮影していた師匠のもとで撮影を学び、カメラマンになった。広島に戻ってからはハワイでは体験できなかったスタジオ撮影の技術を学び、iDS Photoとして独立したころ、デジタル一眼でムービーが撮れるようになったこともあり、同じ広島の先輩であるフォトグラファー・ビデオグラファーの高橋拡三氏に映像制作を学んだという。

2014年には広島市から東広島市に移る。 「家庭の事情もあって、妻の故郷になる東広島市の里山へ移住しました。フリーランスですし、案件のほとんどはロケ撮影だったので、どこにいても仕事ができますし、 家は昔ながらの古民家の持ち家なので、家賃や住宅ローンがないのは仕事の面でも有利だと思いました」

単に田舎というだけでなく、東広島は広島県のちょうど真ん中ということで、広島市にも高速で45分で行けるだけでなく、庄原や三次、尾道など広島の北部や東部にもアクセスしやすい。大学が多く、若者が入ってきて、そのまま定住するケースも多く、人口が増えている。一方で人口が減少している中山間や沿岸部の地域も抱えているという。

「広島市でカメラマンをやっていると、なかなか郊外の案件が広がりにくいのですが、こちらにきたら田舎のつながりで東側の案件が増えました。庄原とか尾道にもすぐに行けますし。広島市からだとちょっと掛かるんですよね…」

山口さんの場合はたまたまこの地域に移住したわけだが、地方のビデオグラファーには参考になる立地かもしれない。

もうひとつ有利なのが物価の安さ。 

「すぐ近くにスタジオにできる物件を格安で買いまして、1Fはワンフロアのスタジオに改装して、2Fはリノベーションして事務所にしました」

デメリットとしては人材が少ないこと。自身で企画から完パケまで可能だが、スタイリストやヘアメイク、撮影、編集などチーム編成できるようにしている。

 

写真、映像から拡張する業務

良い映像を作っても見られないと効果が上がらないので、最近はコンテンツ制作だけではなく、企画構成、マーケティングや分析、ランディングページの制作まで含めてケアしていくことを実践する。そうしないと動画が埋もれてしまうし、結果としてリピートに繋がらないからだ。さらにグリーンバック撮影ができるバーチャルスタジオなど新しい表現にも楽しみながら挑戦している。

 




80㎡の鉄筋コンクリート2階立ての物件を格安で購入した。1階は真っ白にして撮影スタジオに。2階は事務所にリノベーションした。和室はそのまま残している。目の前が道路なので音は収録しにくいとのことだが、羨ましい環境だ。

 

撮影機材と編集環境

カメラはキヤノン。動画はEOS R5とEOS C200だが、最近はEOS R5の稼働率が上がっているという。スチルは光学式ファインダーがやっぱり撮りやすいということで一眼レフのEOS 5D Mark IV。レンズはEFマウントで揃えており、ズームはおもにキヤノン、単焦点はシグマのArtを愛用している。動画ではドロップイン可変式NDフィルター付きのEF-RFマウントアダプターを利用できるのもいいという。





 

主な機材リスト

 

 

VIDEO SALON 2023年8月号より転載