クリエイティブユニット・市電が作る、女性ポートレートの世界観

取材・文●村松美紀 / 編集部 片柳

PROFILE
札幌を拠点に映像制作や写真撮影、グラフィックデザインを行う、SOKONIARUと花袋によるクリエイティブユニット。2021年からInstagramへの女性ポートレート写真・動画の作品投稿を続けている。

市電’s PROJECT introduction

カラグレやスキントーン調整など、編集で良い作品に仕上げる

『ゆれる』

2023年1月にInstagramで公開。雪景色を舞台にしたポートレートムービー。投稿してから半年で128万回再生を達成(7月1日現在)。

動画URL● https://bit.ly/shiden_2

日が暮れてゆく雪景色の中で撮影しました。ジンバルなどは使用せずカメラは手持ちで撮影することで、彼女感を演出しています。撮影には購入したばかりのソニー α7 IVに、レンズはFE 24-70mm F2.8 GM IIで臨みました。実はこの撮影、ロケ場所に何もなく撮れ高的にはかなり心配だったんです。しかしいざ投稿すると、再生数も多く、編集次第で良い作品に仕上げられると実感した作品になりました。

また今回からDaVinci Resolveを使ってスキントーンを勉強し、被写体の肌の質感や色にこだわりました。編集では、スローモーション後に手ブレカットを差し込んだり、カットの切り替えのテンポ感だったり、今まで培ってきた動画編集の全てをつぎ込んでいます。またサムネイルがモデルではなく、月というのもポイント。他作品とのバランスにも考慮し、顔をアップにしたサムネイルが続かないように気をつけています。

投稿をはじめて最初にバズった作品

活動開始から2週間でヒット。これをきっかけにフォロワー数は1万人を突破。トランジションやフィルターなどの制作手法の質問も相次いだ。

動画URL● https://bit.ly/shiden_1

◆市電とはどんなクリエイター?

北海道・札幌を拠点に、映像や写真といった制作活動を行うクリエイティブユニット・市電。SOKONIARUさんと花袋さんのふたり組で、主に映像を担当するSOKONIARUさんが、今回の取材に応えてくれた。

本業は理学療法士であり、9人組ラップクルー・QUMOのメンバーでもある。2年前のQUMOのMV制作をきっかけに、動画編集を独学で習得。その頃、友人が企画したライブハウスでのイベントで、女性ポートレートを撮影している花袋さんと知り合い、「一緒に何かやろう」とその場で声をかけられ、市電が結成された。本業の傍ら、作品制作を続けている。

普段は、Instagramへの女性ポートレートをメインとした作品投稿をしており、フォロワーは8.8万人超(7月1日現在)。作品の特徴は、被写体との距離感や世界観から想像できる“彼女感”だ。「モデルを生業にしている方よりも、一般の方を探して起用しています」とSOKONIARUさん。ふとした瞬間の素の表情を捉えたく、基本的にずっとカメラを回しているそうだ。ロケは1〜2時間、編集から投稿までで早ければ1時間ほどとスピーディに制作している。

また、レトロ感のある加工をしているのも特徴のひとつ。海外のクリエイターが制作した8mmのフィルムエフェクトを使用し、フィルム感とノイズ、粒子の3つの要素で世界観を作り出す。また、全ての動画にフィルム風のトランジションを入れており、「この編集が好きで視聴している人がいると思うので、ずっと同じものを使用しています。これが無いと違和感があります」と、市電のアイコン的役割も果たしているようだ。さらに最近はソニー α 7 IVを導入し、10bit編集ができるようになったことでカラーグレーディングに積極的に取り組んでいる。

最後にSOKONIARUさんは、「世界観やオリジナリティーを作り出すマインドを大切に、動画制作を続けたい」と向上心を見せた。

主な機材・ツール

自宅の作業環境。

VIDEO SALON 2023年8月号より転載