印象的なタイポグラフィーとシネマティックな3DCGをMIXした映像で、注目を集めるクリエイティブスタジオnim。チームを率いる若き天才・Nateとは、どのようなクリエイターなのだろうか。

取材・文●編集部 片柳

PROFILE
2000年生まれ、宮城県出身。2D、3DCGによるモーショングラフィックスを軸に、ジャンルレスに制作。動きから生まれる気持ち良さ、視覚からの快感を大切に、映像でしか表現できないものをデザインする。

 

Nate’s PROJECT introduction

Nateさんが過去に手掛けた作品を紹介

ゲームへのリスペクトを込め、3DCG×タイポグラフィで「夜明け」を表現

2022 VCT Stage2
– Challengers JAPAN Playoff Finals Main Title

タクティカルFPSゲーム「VALORANT」の公式大会のオープニング映像。シネマティックな3DCGとタイポグラフィを組み合わせ、ゲーム映像も効果的に入れ込みながら「夜明け」を表現。使用書体やカラー、グラフィックは、ゲームへのリスペクトを込め、ゲーム内に表示される要素をもとに制作。時間軸にもこだわり、要所要所でカウントダウンのタイマーを表示させることで、徐々に盛り上がっていくようにカットが組まれている。

https://bit.ly/vs9_nate



「今回のワークフローは、まずはnimの中心メンバーで話し合ってざっくりとコンセプトを決めました。楽曲をベースに映像を作っていきたかったので、はじめに仮で音楽を作成。それをもとにVコンを作って実制作がスタート。僕の役割としては、モーションデザインとコンポジット、そして世界観を統一させることです。各CGデザイナーから上がってきたファイルをブラッシュアップし、カラコレなどでトーンを調整。グラフィックデザイナーから上がってきたタイポグラフィには、アドビ After Effectsで動きを加え、最後にコンポジット。ディレクター兼デザイナーとしてガツガツ動いていました。ちなみに人物のモデリングは、DAZ studioを使い、服の揺れは、マーベラスデザイナーでシミュレーションしました」

 

◆Nateとはどんなクリエイター?

Nateさんの映像制作のスタートは、中学時代に遡る。ニンテンドーDSのソフト「うごくメモ帳」で歌詞動画、いわゆる文字を動かしてアニメーションをつける動画づくりにハマる。高校に上がってPCを触りだすと、映像制作の熱はさらに高まる。無料のソフト「AviUtl」を使用し、ボーカロイドの楽曲にイラストで動きをつける動画師として活動。部活も辞め、学校以外の時間すべてを動画作りに費やすほど夢中になった。

映像制作との出会い「うごくメモ帳」
PCでMicrosoft Wordに文字を打ち、それをニンテンドーDSの撮影機能で撮り、画像として1フレームごとにずらしながら配置して制作。「実はアニメーションを作りたかったが、絵が壊滅的に下手だった」とのことで、文字動画をはじめたという背景も。

 

さらにCinema 4Dを使って3DCGも扱うようになり、「2Dから3Dになるだけで、やれることが格段に変わり、世界が広がるのを感じました」と表現力を磨いていった。

作った動画は、YouTubeやTwitterにアップしていたNateさん。転機が訪れたのは高校2年生のとき。SNSを通じて、アニメ『鬼滅の刃』の主題歌「紅蓮華」を歌うアーティスト・LiSAさんのライブステージの映像制作オファーが突然来た。「SNSが発展している今の時代ならではだと思います。これをきっかけに仕事として映像を作ることが増えていきました」と、その後はNHK紅白歌合戦のステージ映像の仕事も。早熟の天才は、その才能をいかんなく発揮し続けた。

大学へ進学していたNateさんだったが、仕事のオファーが殺到したため大学を中退。その後ワンマンでの映像制作から、チームでの映像制作に軸足を移した。「あるとき自分がディレクターとなり、他のクリエイターをお誘いして映像を作ったんです。自分ひとりでは行けない領域にたどり着けたことがめちゃくちゃ楽しくて。チームならひとつ上のレベルにいけると確信し、2022年6月にnimを立ち上げました」

Nateさんが旗を振り、CGデザイナーだけでなく、グラフィックデザイナーやサウンドデザイナーも参加。作風の幅も広がり、多種多様な映像制作が可能となった。

Nateさんが映像をつくる上で大切にしていることとは? 「ちょっといじれば他のコンテンツに流用できるような映像は絶対に作りたくない。このコンテンツでしか成り立たない映像になっているかどうか、それは必ず意識していて。僕らがこれを作る意味があったと思えるものを作りたいです」

 

主な機材・ツール

Nateさんの作業環境

 

VIDEO SALON2022年9月号より転載