第2回ヒマナイヌスタジオのスイッチャーとレンズ
写真・文◉川井拓也(ヒマナイヌ)
無人オペレーションのための自動スイッチングシステム
ヒマナイヌスタジオは、自然会話形式の対談と(3人でしゃべること)に特化したライブ配信スタジオです。出演者だけでリラックスしてしゃべれるように、またスタッフが張り付かなくていいように自動スイッチングシステムを導入しています。
その中核となるのがローランドのHDMI4入力のスイッチャーVR-4HDです。自動スイッチングは「オートスキャン」という機能名でVR-4HDには搭載されています。オーディオミキサーが省略されているV1-HDやHD-SDI端子搭載のV-60HDにも同じ機能が搭載されています。
「オートスキャン」は設定からオンにすると入力端子の順番に1→2→3→4→1というように自動でスイッチングしていきます。切り替えの秒数は1秒から120秒まで設定でき、動作中にも変更できます。4つのHDMI端子にすべて入力がある場合は、4カメを自動スイッチングします。途中で1つ端子を抜いて3入力にすると、3カメを自動スイッチングします。
例えばカメラを3台にして、写真やPowerpointなどを表示するためにパソコンを1台接続しておき、会話に集中する時は、端子を抜いて3入力の自動スイッチングすることも可能です。この物理的な抜き差しなしで自動スイッチングを任意の入力だけを選択できるメニューを追加して欲しいというのはローランドの担当者にもリクエストしています。
◉自動スイッチングはVR-4HDで
自動スイッチングの間隔を7秒にしている理由
4カメの自動スイッチングを様々な間隔の秒数でテストしました。5秒では早すぎてループ感が出てしまい、10秒だとしゃべっていない人が写し出された時に長く退屈に感じてしまうのです。
これを7秒にすると「そういうタイミングで手動スイッチングしているのかも?」と勘違いするくらい絶妙なスイッチングになります。説明しない限りそれが「自動スイッチング」であると気づかないくらいです。これは人の表情や仕草にゆらぎがあり、全てのカットが7秒ごとにも関わらず脳が騙されるからだと思います。
たった4つのアングルが繰り返されているだけにも関わらず退屈せず話している人の表情や内容に意識が集中していくのです。これはヒマナイヌスタジオを作っていく中で最大の発見であり、日本各地にヒマスタ型のスタジオが生まれ始めている原動力とも言えます。
◉映像の4入力の主な使い分け
◉自動スイッチングの流れ
マイクロフォーサーズのF2.8以下大口径レンズを使用
人の表情にフォーカスするため4台のカメラはすべてマイクロフォーサーズのF2.8以下の大口径レンズを使用しています。スマホの縦画面で見ることが多いネットのライブ配信で印象的な絵にするには不必要な部分をぼかし、人の表情にだけフォーカスすることが重要です。
そのためにフルサイズと比べてボケが弱いマイクロフォーサーズでは、望遠気味のレンズをF2.8開放で使うくらいにしないと人物が浮き上がってこないのです。MC(1カメ)とゲスト(2カメ)を捉えるカメラはシグマ60mm F2.8 DNを使用しています。同じメーカーの同じレンズを使うことで色を完全に合わせることができるからです。
ゲストを正面を捉えるカメラ(3カメ)には、F2.8通しでズームしても長さが変わらないLUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8/POWER O.I.S.。を使用しています。このアングルだけはゲストが身振り手振りが大きい場合は引いた画に、あまりない人は顔のアップにと臨機応変に対応するためズームレンズを採用しています。
ゲストとMCの位置関係がわかる真横からの引きのショット(4カメ)にはLUMIX G 20mm / F1.7 II ASPH.を使っています。もう少し広角のレンズもあるのですが、空間が広く感じられすぎるので人物と空間の密度がみっちりして見える40mmをメインしています。
7秒間隔の自動スイッチングと大口径レンズによるシネマライクなボケ表現がヒマナイヌスタジオの特徴になっています。
PICK UP CONTENTS! ヒマスタの収録動画を紹介
『ヒマスタ3分動画 「レオーネの限界が生んだレガシー伝説」』
クルマ好きのための対談番組「STINGER TALK LIVE」からスバルレガシー誕生秘話をどうぞ!
●ビデオSALON2018年9月号より転載