取材◉岡本俊太郎(Vook)/文◉青山祐介

▲今回取材に協力いただいた Twitter Japan シニア プロダクトマーケティング マネージャー 犬飼裕一氏(写真右)。インタビュアーは本誌連載「Videographer’s File」でもお馴染みの Vook の岡本俊太郎さん(左)。

Twitter は2016年9月時点でアクティブユーザー数は4000万人、国内スマートフォンユーザーの使用率が27.5%(※)に達するSNS。140文字のテキストを投稿するSNSとして登場した Twitter だが、今や動画プラットフォームとしても、多くのユーザーに活用されるようになった。そんな Twitter が今、力を注いでいるのはライブ配信の分野だという。今回は、同社のライブ配信に関する取り組みやそこにかける思いなどについてお話を伺った。

(※出典:総務省「平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」より)

 

「動画は Twitter の中で注目されているメディアフォーマットです。10〜20代のユーザーにとっては Twitter で動画を見ることが習慣になっているといってもいいのではないでしょうか。特に日本ではここ1年の動画の伸びが大きく、ビデオビューで4割強も増えています。もちろん Twitter の利用者数も伸びていますが、それに比べても動画利用の伸びはさらに大きいですね」と語る犬飼さん。そんな伸張する Twitter の動画広告ではあるが、世界から見ると日本の位置づけはトップではない。しかし、こと “ライブ動画の広告利用” という点では、世界の Twitter の中でも日本が重要な位置を占めていると付け加える。

Twitter のライブ配信は2015年にアメリカのライブ配信サービス「Periscope」を買収したことから始まる。今では Twitter の公式アプリにライブ配信の機能が組み込まれ、スマートフォンでの投稿画面の中から「ライブ」を選択するだけで、簡単に動画のライブ配信ができるようになっている。さらに2016年10月には、カメラやスイッチャーを使った本格的なライブ配信ができるサービス「Periscope Producer」の提供をスタート。これを利用したライブ配信スタイルの動画広告も、着実に増えてきているという。

「ライブ動画配信サービスとして Twitter は後発です。ただ、Twitter というプラットフォームのタイムラインの中に直接動画を提供することができるのが大きな特徴です。さらにそれを広告利用することによって、ライブ動画がそのまま広告のクリエイティブになるのが Twitter ならではではないかと思っています」。そう犬飼さんは語る。

動画

SNS経由で情報を入手する人が増えてきた

▲紙の新聞を情報源として情報収集する人の割合は減少傾向だが、WEBのニュースポータルサイトやSNSは増加傾向にある。SNSは情報発信のツールでもあるが、情報収集のためのメディアとしても機能しつつある。さらに、Twitter の動画コンテンツの視聴回数は昨年の4割増しで増えており、動画コンテンツのニーズは急速に高まりつつあるという。

Twitterが提唱するライブ配信の理想的な運用方法

▲ライブ配信をいきなり開始しても人は集まりづらい。事前に予告素材を用意して、ライブ当日までに関心を集めることも大切だという。ライブ配信の魅力は配信者と視聴者の双方向のコミュニケーションが可能な部分と、コンテンツが多くの目に留まり、コメントを投稿したりリツイートすることで拡散していくのが従来のテレビ番組やCM等とは違う点。また、ライブ配信終了後も録画素材として活用できる。

ライブ配信をTwitter広告として配信。ターゲットに狙い撃ちも可能

▲Twitter広告はツイートを広告としてフォロワー以外にも、年齢・趣味関心・キーワードなどでターゲティングした人々のタイムラインに表示していくもの。写真や動画などはもちろん、ライブ配信も広告として、広めることができる。動画は再生ごとに課金される仕組みで、画面の50%以上が表示され、かつ2秒以上表示されると課金の対象になる。

 

Twitter 広告+ライブ配信の使用例

Twitter の中で広告として利用されるライブ配信の主なジャンルは3つ。1つはエンターテインメント分野で、映画の封切りに合わせて俳優がオリジナル番組を Twitter 上でライブ配信するといったもの。もう1つは消費材で、優れた商品の背後にあるストーリーやライフスタイルをインフルエンサーや俳優といった人物がライブ番組の中で語るといったものが多い。3つ目はゲームで例えば声優などが登場するファン感謝イベントを Twitter 上でリアルタイムに配信する番組だ。

「ゲームではコアなファンは呼びかけるだけで見ていただけますが、その周辺にいる、見ていただけるとその製品のファンになるであろう方々にターゲティングしてライブ動画広告を出すことで、さらにビューアーを増やすことができます。もちろん、そうした方々に事前に広告を出すというのも大事なのですが、生放送の時間中はライブ配信自体がタイムラインに出てきますから、それを面白そうだなと思って見てもらうことができるのです。実際にオーガニックのユーザーの10倍以上のビューアーを獲得したという例が多数あります」。

一般のユーザーがアプリからライブ配信をするのと違い、動画広告として高品質な配信を行うために使うのが Periscope Producer の仕組みだ。その利用方法はスマートフォンの Periscope アプリから RTMP などのサーバーのリンクとストリーミングキーを取得する。それを汎用のエンコードソフトに入力すると、Twitter 上での配信が可能となる。画質設定は 960×540/30p、映像ビットレート 800kbps が推奨値となっている。

「ライブ動画のソースがあればいいだけなので、他の動画メディアでライブ配信を行なっているのであれば、そのまま同じものをサイマルで Twitter にも配信できます。また、ライブ動画そのものを広告として配信できるため、見て欲しい人にターゲットを絞れるのが、Twitter のプラットフォームの強みです」と犬飼さん。

Twitter のライブ放送は360°ビューにも対応している。映像の視野はスマートフォンの動きに合わせて変わるため、上から下に縦に流れるタイムラインの中に現れる360°のライブ映像の視野が、突然スマートフォンの向きに応じて動く様は、視聴者に強烈なインパクトを与えることができるという。この360°ライブ配信には、最近話題の「Insta360 ONE」も対応している。

もともと、140文字という限られた文字数の中で、自分の気になっていることをツイートすることから始まった Twitter。しかし、最近では新しい情報を知るツールとして活用されることが多い。事実、Twitter はアプリのカテゴリとしても SNS ではなく “ニュース” に分類されている。「ライブ配信はまさに、今を知るためのメディアです。逆に言えば今目の前に起きていることを、見て欲しい人に直接届けられるプラットフォームでもあるわけです」と犬飼さん。

さらにライブ配信は、インタラクティブな仕組みが作れるのがいままでの広告とは違うところだという。「映画のプロモーションとしてのイベントの生放送では、何リツイートがあったら俳優が現れる、というものもありました。こういう双方向性こそが、ライブ配信の醍醐味なんです」と教えてくれた。

Periscope を買収し、スマホだけでなく
マルチカメラによる本格的な配信も可能

スマホから手軽にライブ配信できる

▲Twitter の公式アプリのツイート作成画面を見ると、「ライブ」の項目が追加された。これをタップして、次に表示される画面で「ライブ放送する」を押すだけでライブ配信が可能になる。

本格的な配信の場合は Periscope Producer を使用

▲スイッチャーやカメラからの HDMI や SDI出力を配信するような本格的な配信には Periscope Producer を使用する。これは専用のソフトがあるわけではなく、RTMP とストリームキーをスマホアプリの Periscope から取得して、OBS や Wirecast などのエンコードソフトに入力して配信する。https://www.periscope.tv/account/producer