レポート◉小川浩司
開発会議から始まった超望遠の旅
LUMIXフルサイズカメラ S シリーズ初となる超望遠ズームレンズが投入される——その一報を受け、私は開発前の会議に参加する機会を得た。さらに、私が出演するプロモーション撮影のため北海道にて撮影チームと共にフィールドへ。またさらに後日あらためてレンズを借り、新潟や千葉で野鳥を追いながら動画撮影に取り組んだ。
商品紹介 LUMIX S 100-500mm F5-7.1 O.I.S. (S-R100500)
LUMIXフルサイズの超望遠撮影の扉が開いた
これまでSシリーズ純正で最も長い焦点距離は、LUMIX S PRO 70-200mm F2.8+2倍テレコン(DMW-STC20) による 400mm相当が上限だった。しかし野鳥撮影の現場において 400mmは「広角」 と言われるほど、距離が足りない。より長い超望遠を求める場合、Lマウントアライアンスの他社レンズに頼るしかなかったが、AF挙動やボディ連携など純正でないことによる制限は小さくなかった。
今回登場した LUMIX S 100-500mm F5-7.1 は、純正2倍テレコンに対応し 最大1000mm をカバーできる。さらに動画ではAPS-Cクロップを活用することで、焦点距離は大きく伸長し、100〜1500mm(実質15倍ズーム)という圧倒的なレンジを手にできる(PxPはセンサーや記録画質で倍率変動するので割愛)。これまで“届かなかった世界”が、純正環境のままシームレスに扱えるようになった意義は非常に大きい。
小型・軽量・手ぶれ補正がフィールドワークを変える
超望遠レンズは一般的に、機材重量そのものが撮影スタイルを左右する。車両があれば運搬は楽だが、駐車場から撮影場所への移動距離を考えねばならないし、そもそも車移動ができない場合だってある。三脚必須・移動制限・動画撮影の制約…いずれも機材の“重さ”が生む問題だ。しかしLUMIX S 100-500mm F5-7.1は、その重量とサイズ感のおかげで、撮影フローがスチル・動画どちらにもスムーズに展開できる。
また純正同士のDual I.S. 2の協調制御が極めてバランス良く働く。レンズ側に加えボディ側の手ぶれ補正ブーストを使えば、500mm側の望遠端でさえ手持ちでもかなりのブレが抑えられる。つまりこれは三脚の不要を意味し、一箇所に留まり張り付く撮影ならば別だが、移動しながら撮れ高を稼ぐにはボディとレンズのみという身軽さがフィールドでの動き方を大きく変化させ、野鳥撮影という瞬間的な対応力が求められるジャンルにおいて、この自由度は撮影結果に大きく直結することとなる。
また三脚を使用するにしても機材重量はおよそ2100g、より耐荷重の少ない小型なヘッドを選択でき、よりコンパクトな装備で撮影に挑める。

右:S1M2+LUMIX S 100-500mm F5-7.1
Gシリーズのマイクロフォーサーズカメラと比べても大差なくコンパクト


ノブで締めて固定するタイプで丸ごと取り外し可能。三脚に付けっぱなしも可能
妥協なき光学性能が生む描写
LEICAやPROの銘こそないものの、軽量ながら光学描写はLUMIXらしく妥協がない。500mm側でも解像性能は安定し、羽毛の微細なコントラストや逆光下の輪郭表現がしっかり残る。
これは実際に動画を見ていただいたほうが早いだろう。北海道で撮影した野生動物、新潟で撮影した湖の水鳥たちと、千葉で撮影した干潟の野鳥と夕景をUHDでまとめた。カラーはスタンダードで編集に色補正は行なっていない。いわゆる撮って出しで、音声もごちゃごちゃしているが内蔵マイクの性能テストということで目を瞑りご容赦いただきたい。
ボディはS1M2との組み合わせ。最大 6K での撮影では「写真がそのまま動き始めた」かのような精細さで、単焦点に迫る高い描写力を持つ。また最短撮影距離が 0.8m〜1.5m と短く、近接シーンでも立体感のある映像を得られる。スチル撮影中でも、気になった瞬間にRECボタンを押すだけで完成度の高い動画が撮れる。これこそ機動力の高い超望遠レンズの価値だ。
ビデオサロン 撮影テスト 北海道 LUMIX S 100-500mm F5-7.1 O.I.S. (S-R100500)
ビデオサロン 撮影テスト 千葉 LUMIX S 100-500mm F5-7.1 O.I.S. (S-R100500)
ビデオサロン 撮影テスト 新潟 LUMIX S 100-500mm F5-7.1 O.I.S. (S-R100500)
小型軽量が開く「LUMIXの野鳥動画撮影」の新しい入り口
自然や動物写真を中心に活動している人にとって、超望遠で動画を撮るという行為は馴染みが少ないかもしれない。装備の問題、編集処理の問題、設定やカット割り、やることや考えることが多くこれまで少し距離があったと思う。しかし手軽に持ち歩ける100mm-500mmの超望遠ズームレンズに加え、動画撮影の歴史と培った技術が詰まったSシリーズカメラの組み合わせで”録画ボタンを押すだけで”映画のようなクオリティの映像を手に入れることができる。
この一本があれば、静止画の延長線がそのまま映像表現へと滑らかにつながっていく。野鳥動画というステージへ踏み出すための最適解だと感じる。
