ドローンでお馴染みのDJIから登場した待望のシングルハンドタイプのジンバルRonin-S。同社の一眼向けジンバルとしては2015年に発売されたRonin-Mから3年ぶりとなる。果たして、どんな進化を遂げているのか? 今回はRonin-Mはもちろん、様々なジンバルを使いこなすビデオグラファーのOsamu Hasegawaさんに発売前の実機を試してもらった。
テスト・文●Osamu Hasegawa/モデル●斎藤あまね(Fungo)
◉Ronin-S+GH5S+オリンパスレンズで撮影したテスト動画
Ronin-Sのファーストインプレッション
DJI Ronin-Sは、おそらく多くの映像制作者が待ち望んでいたシングルハンド・タイプのジンバルだ。コンパクトな形状にも関わらずRonin-Mと比べても多くの進化が認められる。ファーストインプレッションとしての1点目は、製品としての質感の高さだ。各種ボタンやダイヤルのレイアウトから素材や形状の質感まで他のシングルハンドのジンバルとは一線を画しており、プロにふさわしい品質となっている。2点目は基本性能の良さ。モーターの安定性がひじょうに高く、撮影中に3軸のバランスが少しずつズレくるような現象はほぼない。たとえカメラの初期バランスがアバウトでも操作中の各軸のバランスの崩れが起きにくい。3点目としては多彩な機能だ。ジョイスティックによる操作(ロール軸の回転動作も可能)、カメラとケーブルを接続するだけで操作できるフォローフォーカス、さらには3軸モーション・タイムラプスまでカバーしている。
◉Ronin-Sの製品情報
◉Ronin-Sの製品のポイント
<ケーブル一本でつなぐだけでフォーカス操作が可能なレンズもある>
<マンフロットの三脚や一脚にそのまま付けられる>
<ミニ三脚を同梱>
<移動中はこんな感じで持ち運べる>
アプリがよくできている
地味だが良くできていると感じるのが、Ronin 2とほぼ同じ仕様のスマホアプリだ。カメラの基本設定はこのアプリで設定する。「モーターの負荷状況」についてモニタリングできる点は(アプリ内では「Motor Parameters」の「Power」)、物理バランスが正しく取れているのか、どの軸の調整が悪いのかといったことを直感的に理解できる。そして各モーターの動作についても、かなり細かく追い込んで設定ができる。今回特に有意義だと感じたのは、パン・チルト・ロール軸の反応スピード、デッドバンド(不感帯)、センシティビティの設定(および各軸の動作ON/OFF)について、3通りの「USER」として異なる値の設定をプリセットでき、それをジンバル側のMボタンで瞬時に切り替えることができる点だ。
実際、レンズの望遠/広角、被写体との距離、カメラの動き・速度などによって、ユーザーが求めるジンバルの理想的な反応の仕方は異なる。想定するシーンやカメラワークを考慮してよく使う設定を登録しておくと撮影がスムーズになる。
◉専用アプリRonin
<カメラのバランス調整とアプリによるモーターパワーの自動調整>
<カメラのバランス調整とアプリによるモーターパワーの自動調整>
<好みの設定を3つまで記憶できる>
フォローフォーカス機能
今回注目の機能としてジンバル側のホイールからカメラのフォーカスを操作できるフォローフォーカス機能が加わった。現状はパナソニックのGH5/5Sが対応し、カメラボディ横のUSB-C端子から付属ケーブルでRonin-Sと接続するとジンバル側のホイールからフォーカスコントロールが可能となる。
これまでジンバル撮影時の一番の難点はフォーカス操作だったが、この製品はその問題を解決してくれる。ピントの山をつかむには、カメラの背面モニタのピーキングを活用することと、人物やモノを撮る時は被写界深度を浅めに設定するほうが焦点を見極めやすい。ただし、自分と被写体が動きながら両者間の距離が変化していくシチュエーションではホイール操作でフォーカスを追従させていくのはなかなか難しいので、GH5/5Sならオートフォーカスとの使い分けをうまく考えたいところだ。
GH5/5SをRonin-Sからフォーカスコントロールする場合、実はパナソニックのレンズだけでなく、オリンパスの多くのレンズでも効く。今回試した電子接点のあるAFレンズの中で正常に動作しなかったは、オリンパスの7-14mm F2.8だけだった。このレンズの場合は、焦点移動の際にカクカクしてしまった。一方、電子接点のないMFレンズについては、25mmくらいまでの焦点距離ならジンバルを片手でオペレートしながらもう片方の手でレンズを直接マニュアルフォーカスすることが可能だった。
◉18種類のレンズを集めて検証してみた
<強力なモーターパワー>
<オリンパスレンズでもフォーカスが使えた>
<マニュアルレンズも直接フォーカスを操作できる>
アプリでタイムラプスも撮影可能
タイムラプスはアプリでの設定が直感的で使いやすい。3軸のモーションタイムラプスがこれ1台で撮れてしまう。付属のミニ三脚は思ったより安定しているのと、始点から終点まで3軸のアングルを自由に設定できるので、ジンバルが固定できれば地面は必ずしも水平でなくてもOKだ。
この製品はプロのニーズに応える多彩な機能と安定した品質を持ち、さらには所有欲まで満たしてくれるモノとしての質感の高さを満たしていると言える。この製品の特長を映像作品にいかに生かしていくかといった使い込みについて今後さらに追及していきたい。
◉モーションタイムラプスをテスト
●DJI Ronin-Sの製品情報