VIDEO SALON2022年11月号は10月20日発売

文●編集部 山崎

 

今回の特集テーマは「映像業界の労働環境を考える」です。映像作品は華々しい演出で観客や視聴者を魅了する一方、その裏側には制作に従事するスタッフの涙ぐましい努力があります。近年は労働時間、賃金、契約、ハラスメントなど、映像業界の過酷な労働環境が取り沙汰されるも少なくありません。特に2〜3年ほど前からでしょうか、インタビュー記事やSNSを通して、そんな現場の声が頻繁に聞こえるようになってきました。構造的な問題点が浮き彫りになり、可視化され、活発な議論がなされることはとても良いことですが、すべての問題が解消されるまでにはまだ時間がかかりそうです。

そんななかで映画、ドラマ、CM、MVなどの各分野で、作品のクオリティを担保しながら労働環境を改善し、明るい未来に向けて取り組む人たちがいます。今回の特集ではインティマシー・コーディネーターの西山ももこさん、映演労連フリーユニオンの委員長を務める梯 俊明さん、CM制作会社・太陽企画のプロダクションサポートチーム「TYPE」のチームリーダーである冨永太郎さん、少数精鋭のVFX映像制作チーム・VeAbleの涌井 嶺さんとMONAさんにご協力いただき、それぞれの取り組みをご紹介いただきました。

また、日本の#MeToo告発を支持・拡散した撮影監督の早坂 伸さん、新たな働き方のシステムを構築している映像制作会社・THINGMEDIAの田中博之さん、佐藤一樹さん、労働条件が改善されてきた韓国映画の現場に詳しい日本人助監督の藤本信介さんにもお話を伺い、インタビュー記事として紹介しています。

これまでの映像業界の“当たり前”を考え直すべきタイミングにきていることは、おそらく間違いなでしょう。また、これからの映像業界は「良い作品は、良い現場からしか生まれない」とも感じます。いまある問題点を再認識し、より良い労働環境を模索する——本特集がそのための一助になることができればうれしいです。

 

●特集の内容

キーマンの撮影監督・早坂 伸さんが語る

なぜ僕は#MeToo告発を支持・拡散したのか?

2022年春に浮上した日本映画界の性加害問題。実はそれは最近始まったものではなく、長らく隠された問題として放置されてきた。非当事者の男性撮影監督である早坂 伸さんが、被害当事者達の声に応答したことがきっかけとなり、週刊誌への実名での告発になり、問題が顕在化していった。早坂氏はなぜ、自身が撮影した2本の映画の公開見合わせになるリスクを冒してまでも当事者の告発に寄り添う決断をしたのか。

Host 辻 智彦
Guest 早坂 伸

 

映画やドラマの性的描写を伴うシーンに立ち会う

インティマシー・コーディネーターの仕事と現場の変化

インティマシー・コーディネーターとは、映画やテレビの撮影現場でセックスシーンやヌードシーンなどのインティマシー・シーンを専門としたコーディネーター。制作側と俳優の間に立って“心地よい安全な現場づくり”を目指す職業です。日本の作品でも導入され始め、メディアで取り上げられる機会も多くなったことで、いままさに注目が集まっています。より現場に沿った内容として、制作者や技術スタッフに向けて「インティマシー・コーディネーターの仕事とは?」を西山ももこさんに語っていただきました。

西山ももこ

 

映像業界でフリーランスが自身の身を守るには?

個人(フリーランス)や小規模な制作会社が多い映像制作業界において、未払い問題やハラスメント問題、撮影現場での事故についてどう対応していったらいいのか。映画演劇動労組合連合会(映演労連)のなかの映演労連フリーユニオン(フリーランスでも加盟可能)で委員長を務める梯 俊明さんに、数々の事例を元に実態の紹介と知っておくとためになることをお話しいただきました。

梯 俊明

 

撮影前準備をフルサポート

制作チームの負担を大幅に軽減する「TYPE」の超効率化ノウハウ

広告映像においてクオリティを担保しながらも予算とスケジュールを管理し、制作に関わる様々な手配を行うプロダクションマネージャー。その業務は多岐にわたります。CM制作会社の太陽企画が2015年に発足したプロダクションサポートチーム「TYPE」のチームリーダーである冨永太郎さんに、業界でも珍しいプロダクションマネージャーサポートの取り組みと活動のなかで見えてきたことについてお話いただきました。

冨永太郎

 

MV『LADYBUG』のワークフローから見る

BlenderによるVFXを使用した映像制作の可能性

映像制作技術という側面から労働環境を捉えられないか。今年、VFX専門の映像制作チーム・VeAbleを立ち上げた涌井 嶺さんとMONAと共に、労働問題を解決する手段として、VFXを活用について考えます。演出の幅をどのようにして広げるのか、作業はどう効率化できるのかなど、VeAbleが手掛けたMV「LADYBUG」(Noah Sato)を例に、ワークフローを解説していただきました。

涌井 嶺、MONA(VeAble)

 

●レポート&インタビュー

映像撮影の概念が変わる? みんなのFirst 8Kカメラ!
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鈴木佑介

 

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平和精機工業(Libec)

 

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VIDEO SALON2022年11月号は10月20日発売