6月にロサンゼルスのCine Gear EXPOで開発発表されたDC-S1Hがついに正式発表された。LUMIX Sシリーズとしては、S1、S1Rに続く第3弾ではあるが、どちらかというとSシリーズのボディを利用したシネマカメラという位置付けが強いモデルになっている。

価格はオープンプライスだが、実勢50万円前後。発売は9月25日。予約受付は9月12日の10時開始となっている。

日本でのプレス向け発表会は有明のパナソニックセンター有明スタジオで開催された。商品企画担当の津村敏行氏がプレゼンテーションを行なった。

LUMIXシリーズはここ最近、マイクロフォーサーズのGシリーズ、フルサイズのSシリーズの両輪でハイエンドの製品を強化してきた。Sシリーズは、今年3月のLUMIX S1、S1Rが発売開始され、そして半年後の9月、「シネマミラーレス」というコンセプトで、S1Hというチャレンジングな製品が投入されることになる。S1HはSシリーズの中の単なるムービー寄りのモデルということではなく、完全なシネマカメラといって良い存在であり、ミラーレス一眼でここまでシネマカメラとして使える性能と機能を投入したモデルは他社も含めて存在しない。津村氏はS1Hはまったく新しいジャンルであり、大きな可能性とポテンシャルを秘めており、このカメラをきっかけにシネマカメラの新カテゴリーを作っていきたいと言う。

S1Hは、一眼カメラとしてはハイエンドシネマカメラのように見えるが、シネマカメラからすると、シネマカメラを一眼のスタイルに収めたモデルだと言える。そのことによって、手持ち撮影だけでなく、ドローンやジンバルでの運用、ハウンジングを利用した水中撮影など、従来のシネマカメラでは難しかった運用ができる。これはシネマカメラを幅広いジャンルに訴求することになる。

もちろん、スチルカメラとしてもプロ向けのパフォーマンスを持っているが、S1Hに限ってはメインはシネマ撮影ということになる。

センサーは24.2MフルサイズCMOSセンサーでローパスフィルター搭載。デュアルネイティブISOにより、低ノイズと高感度を両立させることができる。シネマ制作でもっとも重視されるのがダイナミックレンジと色再現だが、上位のシネマカメラ同等の14+ストップのV-Log/V-Gamutを標準搭載する。S1Hは50万円クラスのカメラでありながら、VaricamやEVA1同等のV-Log/V-Gamutでの再現性を実現。ハイエンドシネマカメラのサブカメラとしても同じ階調、色域で利用できるというメリットがある。すでにVaricamでは現場で運用されている実績もあり、そのVaricamでのLUTの35種類のライブラリーをそのまま適用することができるわけだ。

動画記録モードもセンサーとエンジンを最大限に活用している。フルサイズのセンサーの3:2アスペクトでは35mmフルサイズで6K/24.00p、5.4K/29.97pが可能。16:9としては、5.9K/29.97p/24.00p、Cinema4K/4K 29.97p、24.00pを4:2:2 10bit収録できる。60pで回したい場合は、スーパー35mmサイズにして、Cinema4K/4K 59.94pをHEVC 4:2:0 10bitで収録する。

 

アナモフィック撮影にも対応し、その場合はスーパー35mmでの4:3の撮影エリアを使い、Anamophic 4Kで48.00HFR、29.97P、24.00p記録が可能になる。アナモフィックのデスクイーズ表示は1.3倍、1.33倍、1.5倍、1.8倍、2倍が選択でき、モニタリングもしっかりできる。

また、HDMI端子からは4:2:2 10bitの映像出力でき、動画記録中のHDMI映像出力に対応。GH5やGH5Sと比較して、10bit Cinema4K/60p、4K/60p動画記録中であっても、HDMI端子からCinema4K/60p、4K/60pの4:2:2 10bit映像を同時に出力することができる。

ハイスピード撮影もこれまでのVFR機能としては4Kで最大60fpsで2.5倍スロー、FHD180fpsで7.5倍スローを実現するだけでなく、ハイフレームレートモードも採用。これは4Kで2倍のフレームレートで回し48fpsの2倍スロー、FHDでは120fpsで5倍スローになるもので、こちらではオートフォーカスと音声記録が可能になる。

今回新たに、ATOMOS社との連携により、外部レコーダーで何らかのRAW記録を実現することが発表された。これまでもATOMOS社との密な連携で商品化してきた経緯があり、HDMI出力をATOMOSのレコーダー側でRAW記録するための仕組みづくりで協業していく。詳細は決まっていないが、近いうちにスケジュールを示せるという。

使い勝手の面では、手持ち撮影を強化するDual I.S.2を採用。手ブレ補正機能のないレンズではボディ内手ブレ補正機能を利用し、6段分の補正を実現。手ブレ補正機能付きのレンズでは5軸Dual I.S.2により、6.5段分効果を発揮する。

新機能としては、チルトフリーアングル液晶モニター。これはバリアングルとチルト液晶のハイブリッドスタイルで、チルトした上で、横に開くことで、ボディサイドのケーブル類にパネルがかからずに回転させることができる。ちょっとしたアイデアだが、チルト式、バリアングル式の両方のメリットを享受できる。

この液晶の裏側にスリットがあることからわかるように、一眼カメラとしては初めてファンを搭載した。これは動画記録の時間無制限を実現する放熱構造にするため。ファンの裏側にあるヒートシンクを冷却する構造になっている。スリットはあるものもヒートシンクは完全に閉じられているので、ここから水や埃が入ることはなく、防塵防滴構造になっている。

記録メディアは最も汎用性の高いSDカードでUHS-IIビデオスピードクラス90規格のSDHC/SDXCカードに対応。2基のスロットに順次記録、バックアップ(サイマル)記録、振り分け記録を選択できる。

このほかにも、複数台撮影の現場でタイムコード同期がとれるTC IN/OUT機能(フラッシュシンクロ端子を利用して同梱のBNC変換ケーブルで接続)を採用。カメラボディと前方と後方にタリーランプを搭載したり、ボディ左下前面にRECボタンを設けるなど、完全にムービーカメラ仕様になっている。

会場には、リグを組んだ状態のモデルも展示されていた。こちらは担ぎがメインのドキュメンタリー撮影スタイル。

ライカのシネレンズ、タリアを装着し、Vマウントバッテリーから給電、フォローフォーカスも組み込んだコンパクトシネマカメラ仕様。

 

DC-S1Hの商品企画担当者へのインタビュー取材はこちから

DC-S1Hのプレスリリース

DC-S1Hの商品紹介ページ

シネマカメラグローバルWEBサイト(こちらにもS1Hが紹介されている)

 

なお、発売前に企画・開発者によるS1H発売前セミナーがLUMIX GINZA TOKYOで開催される。

開催日9/20(金) ・ 9/21(土)

詳細はこちらから