Core Xシリーズ最上位のCore i9-10980XEを搭載する エプソンEndeavor Pro9000は HEVC&RAW動画編集時代にこそ使ってほしいPC


デュアルXeon搭載ワークステーションと比較して判明!
「ワークステーションに匹敵する」は伊達じゃない。

レポート●ビデオサロン編集部
協力●エプソンダイレクト株式会社

エプソンのEndeavor Pro9000は「ワークステーションに匹敵する インテル Core Xシリーズを搭載 Endeavor史上最高峰のフラッグシップPC」(エプソンダイレクトのホームページより)。これは、ワークステーション向けの定番CPU「Xeon」に匹敵する性能を、ハイエンドデスクトップPC向けのCPU「Core X」で実現できるフラッグシップである…という意味になるのだが、ここでは高解像度・高負荷の動画編集において、その真偽のほどを検証する。

なのだが、結論を先に言わせてほしい。結果は期待以上! 特にAdobe Premiere Proについては、これまでいろいろなパソコンで検証しても突破できなかった「4K/HEVC(H.265)/60p」におけるPinPを設定した2ストリームのタイムラインにおいて、初めて「スムーズなリアルタイム再生が可能」と位置づけるビデオサロン編集部の条件をクリアしたのだ。新たなCPUが、ようやく次のステージに導いてくれたその瞬間を目の当たりにし、興奮を隠せない。順を追って報告しよう。

Core i9-10980XEを搭載する最上位モデルで実力検証

検証に使用したEndeavor Pro9000は、CPUやグラフィックス、メモリー、ストレージにと、最良の選択をしたモデル。その性能がどれほどのものかが客観的に分かるように、3年前に発売されたXeonデュアルプロセッサー搭載のワークステーションを用意し、同じ検証をしてみた。これはCPU性能を単純に比較するためではなく、現在、Xeonをベースにしたワークステーションで運用している制作現場で、Core Xシリーズでも置き換えが可能かどうかを見極めるために選定している。

【Endeavor Pro9000の主な仕様】
●OS:Windows 10 Pro 64bit
●CPU:インテル Core i9-10980XE プロセッサー(18コア/36スレッド 3.0GHz/TB時最大4.60GHz)
●電源:1000W電源
●グラフィックス:NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti 11GB
●メモリー:128.0GB(16.0GB×8)PC4-2933 DDR4 SDRAM
●ストレージ(1基目):インテル Optane SSD 905P 960GB PCI Express x4対応
●ストレージ(2基目):2TB HDD シリアルATA 600MB/s対応 7200rpm
上記選択時の製品単価 ¥853,000(税別)*2019年12月現在、キャンペーン価格

【比較したワークステーションの主な仕様】
●OS:Windows 10 Pro 64bit
●CPU:インテル Xeon E5-2620 v4 ×2(デュアルプロセッサー構成:16コア/32スレッド 2.10GHz/TB時最大3.00GHz)
●グラフィックス:NVIDIA Quadro P4000 8GB
●メモリー:32.0GB
●ストレージ:SSD

*どちらも、Adobe Premiere Pro 2020が対応するようにグラフィックスのドライバーは最新の状態にアップデートしている。

テスト1:
Adobe Premiere Pro 2020を使ってリアルタイム再生性能検証

動画編集用途でEndeavor Pro9000を評価するために、まず初めにアドビ システムズのAdobe Premiere Pro 2020でテストした。Premiereは多くのクリエイターに使用されているだけでなく、CPUやメモリー、グラフィックスと、PCの機能をフル活用するため、Endeavor Pro9000の真価が分かりやすいと判断したため。

検証には、コーデックや解像度が異なる8種類の動画ファイルを用意。クリップを並べただけの1分間のタイムラインと、トランジションやタイトル、エフェクト、PinPなどの効果を加え、現実的な編集を想定したタイムラインを作成し、どこまでコマ落ちの少ないスムーズなリアルタイム再生が可能かで評価している。

▲5秒のクリップを12個並べて1分間にしたタイムラインを基本に、クリップとクリップの間にビデオトランジションとオーディオトランジションを設定し、全編にタイトル、子画面(PinP)を設定。また、すべてのクリップにはLUTを適用したタイムラインを最も負荷の高いタイムラインとして検証に使用した。

【検証に使用した8種類の動画ファイル】

検証に使用した動画ファイルの詳細は以下の通り。解像度はFHD、4Kに加え6Kまで。ビット深度も10bitファイルを複数用意。コーデックはH.264からHEVC(H.265)、さらに話題のBlackmagic RAWまで揃え、最新の動画編集事情に対応できるようにした。Pro9000ではOptane SSD側に動画ファイルを保存してテストしている。

●ファイル1:FHD/60i / 8bit / H.264 / 24Mbps
●ファイル2:FHD/60p / 10bit / H.264 / 200Mbps
●ファイル3:4K/30p / 8bit / H.264 / 60Mbps
●ファイル4:4K/30p / 10bit / H.264 / 150Mbps
●ファイル5:4K/60p / 8bit / H.264 / 150Mbps
●ファイル6:4K/60p / 10bit / HEVC(H.265)/ 200Mbps
●ファイル7:6K(5952×3968)/24p / 10bit / HEVC(H.265)/ 200Mbps
●ファイル8:C4K(4096×2160)/60p / 12bit / Blackmagic RAW / 約200~370Mbps

【コマ落ち評価方法】

コマ落ちの評価はプログラムモニターパネルに「コマ落ちインジケーター」を表示して、タイムラインを冒頭から1分間再生。再生終了後にコマ落ち数を実測し、以下の7段階で評価する。1分間再生すると、再生しながらの処理が充分でないとコマ落ちがはっきりしてくる。

▲「設定」から「コマ落ちインジケーター」を追加するとプログラムモニターパネルの左下に「●」が追加され、再生後にポインターを合わせると再生時に発生したコマ落ち数を確認できる。

●目盛り1:「フル画質」設定時にコマ落ちが「0~9」
●目盛り2:「フル画質」設定時にコマ落ちが「10~50」
●目盛り3:「フル画質」設定時にコマ落ちが「51~99」
●目盛り4:「1/2」設定時にコマ落ちが「0~9」
●目盛り5:「1/2」設定時にコマ落ちが「10~50」
●目盛り6:「1/2」設定時にコマ落ちが「51~99」
●目盛り7:「1/2」にしても3桁以上コマ落ち

上から順に高性能。2桁までを基準にしているのは、Premiereの場合、2桁までのコマ落ちなら編集結果のプレビューとして実質不満を感じないため。もちろん「フル画質」でのプレビューが理想だが、フルスクリーンプレビューをしない限り「1/2」でも実用になるため、「フル画質」で3桁を超えた時に「1/2」に画質を落として実測している。3桁以上になると、再生中に一瞬画が止まる症状が現れてくるので「スムーズなリアルタイム再生は不可」と評価する。

【結果報告1:クリップを並べただけのタイムライン再生】

▲面積が広いほど高性能。

Endeavor Pro9000の場合、ほぼ満点の結果となった。これまでの傾向として、PCにとって「4K/60p」「10bit」「HEVC(H.265)」がリアルタイム再生には難敵だったが、Pro9000はすべて「フル画質」でクリア。3年前のワークステーションは「4K/60p」に苦労していた時代のPCなので、今回の検証はやや荷が重かったかも。逆に言えば、Pro9000がいかに現在の編集事情に適したPCであるかということが分かるだろう。

【結果報告2:トランジション、タイトル、エフェクト、PinPを設定したタイムライン再生】

▲面積が広いほど高性能。

各種効果を加えても、Endeavor Pro9000のリアルタイム再生の対応度は大きく落ちない。特に、4K/60p / 10bit / HEVC(H.265)ではこれまで、動画ファイルを2つのトラックに重ねて同時再生して実現する「PinP」を設定した途端、まったく歯が立たないモデルばかりだった中、Pro9000がついにその壁を打ち破った。これは注目に値する。HEVC(H.265)でもさすがに6Kになると、24pでもパフォーマンスは落ちるが、それでも1/2に解像度を落とすことで何とかなる範囲に収まった。

テスト2:
Adobe Premiere Pro 2020を使ってファイル出力性能検証

リアルタイム再生テストで使用した、トランジションやタイトル、エフェクト、PinPを設定した1分間のタイムラインを、そのクリップと同じコーデック、解像度、フレームレート、ビット深度、転送レート(CBR)で出力した時に掛かった時間を実測し、比較した。*6K / HEVC(H.264)ではHEVCでの出力がエラーになったのでコーデックをH.264に変更した。また、Blackmagic RAWのタイムラインでは出力エラーとなったので計測できていない。

▲棒グラフが短いほど短時間で出力が終わっているので、短いほうが高性能。

再生時の処理の重さに比例するように出力時間も伸びているが、Pro9000では出力形式にかかわらず、およそ2倍前後の速さで出力され、出力時間が半分程度に短縮される点に注目したい。PCとしての処理能力が単純に2倍以上になっていると読め、Core i9-10980XEの性能向上の著しさがここでも感じ取れる。

テスト3:DaVinci Resolve Studio 16
「時間的ノイズ除去」設定時のフレーム再生数で検証

RAW収録が一般的になるにつれて、人気急上昇中のブラックマジックデザインのDaVinci Resolve。有償版の「DaVinci Resolve Studio」では「カラー」ページでRAW現像時に有効なノイズリダクションを設定できるが、処理がとても重く、コマ落ちなしでの再生は難しい。そこで今回の検証でも4.6K(4608×2592 / 24.000fps / Cinema DNG RAW)と6K(6144×3456 / 24p、Blackmagic RAW)で撮影したファイルを使って比較してみる。*無償版のDaVinci Resolveではこの検証はできない。

DaVinci Resolveの設定は再生を補助する機能はすべてオフにした。具体的には「最適化メディアがある場合は使用」をオフ、「プロキシモード」をオフ、「レンダーキャッシュ」を「なし」にしている。

▲プレビューウィンドウの左上に「●24」というように、再生コマ数が逐一表示される。●が緑だとコマ落ちがない印で、赤●になるとコマ落ちが起きている印になる。

【結果報告1:4.6K/24.000fps/Cinama DNG RAWファイルでの再生コマ数】

▲棒グラフが伸びているほど再生コマ数が多いので、長いほうが高性能。

24fpsのクリップを同じフレームレートのタイムラインに配置しているので、「24」コマ再生できればコマ落ちなしで合格。同じテストをこれまでも行なってきたが、CPUとグラフィックスの性能が充分でないと「24」は実現しなかったので、Pro9000はDaVinci Resolveにとってもバランスの良いパーツ構成と読むことができる。

ちなみに、「モーションエフェクト」の設定は以下の通り。
●時間的ノイズ除去
フレーム数:3 / 動き推定:速度優先 / 動きの範囲:中
●時間的しきい値
輝度:64.2 / クロマ:64.2 / 動き:50

Cinama DNG RAWで撮影したファイルのビットレートは高く、使用するストレージ性能も重要になる。今回使用したファイルの場合、単純計算で264MB/sが最低の読み出しスピードとなるが、これに関してはEndeavor Pro9000も3年前のワークステーションもクリアしているので、ストレージがボトルネックにはなっていない。

【結果報告2:6K/24p/Blackmagic RAWファイルでの再生コマ数】

▲棒グラフが伸びているほど再生コマ数が多いので、長いほうが高性能。

24pのクリップを同じフレームレートのタイムラインに配置しているので、「24」コマ再生できればコマ落ちなしになるが、Endeavor Pro9000をしても「13~14」となり、さすがに厳しいテストであることが分かる。

ちなみに6K素材の場合、「時間的ノイズ除去」の「フレーム数」を上げていくとGPUのメモリー不足と警告されるので、今回のテストではそのメッセージが出ない「1」でテスト(「2」以上にすると出力もエラーになる)。それでも、「時間的しきい値」を適度に設定するとノイズは収まっていくので、現実的な設定と言える。

またBlackmagic RAWの場合はビットレートも低く、テストで使用したファイルは「Q0」で撮影したものだが、66MB/sとCinema DNG RAWと比べかなり低く、ストレージには相当優しい数値となる。

「モーションエフェクト」の設定は以下の通り。
●時間的ノイズ除去
フレーム数:1 / 動き推定:画質優先 / 動きの範囲:大
●時間的しきい値
輝度:50 / クロマ:50 / 動き:50

総合評価:新しい時代に適したワークステーション級のPC

様々な角度からCore i9-10980XEを搭載したEndeavor Pro9000の性能を評価してきたが、Adobe Premiere Proだけでなく、DaVinci Resolve Studioにおいても、これまでにないほど優秀な結果を残してきた。特に今後は、4Kや6Kといったフレームサイズだけでなく、10bitやHEVC(H.265)、動画のRAWデータを使って編集する機会も増えてくるはずなので、新しい動画フォーマットにおいて違いを見せたEndeavor Pro9000は、新しい時代に適したワークステーション級のPCと言うことができるだろう。

また今回、同じテストを2基目のストレージとして設定されているHDDに素材を保存してテストしてみたが、ビットレートの高いCinama DNG RAWを使ったテスト以外は、ほぼ同じ結果を残した。導入予算を少し下げたい…という場合は、ストレージのカスタマイズで調整することができるだろう。

エプソン Endeavor Pro9000