【レポート】EOS C500 Mark IIと Sumire Primeで撮るショートムービー〜作例とBTSムービー付き


Report◉角 洋介
協力◉キヤノンマーケティングジャパン、DJI Japan

 

短編映像「BECAUSE IT’S THERE」

登山家ジョージ・マロニーの言葉「そこに山があるから」をモチーフに、夢を追うことへのつらさ、楽しさ、やりがいを表現できないかと思い制作した短編作品。EOS C500 Mark IIとSumire Primeの特徴を出せるような被写体も取り入れてみた。

2019年、フルサイズセンサーのシネマカメラ機が多く登場し、RAW収録も当たり前になってきました。

この新しい潮流が気になっていたところ、運良くキヤノンEOS C500 Mark IIとSumire Primeレンズの組み合わせを試す機会をいただくことになりました。上記機材を用いた少人数体制での制作の記録として、何か参考になれば幸いです。

 

【撮影】

出演者は俳優の池松亜美さん、岡崎森馬さん、中村更紗さんの3名にお願いしました。極寒の風が吹き荒ぶ中でも積極的に撮影に臨んでくれて、本当に感謝しています。魅力的な俳優さんはフレームを切るだけで気持ちが上がってきます。

スタッフはビデオグラファーの板垣真幸さんにサポートをお願いしました。パートによってジンバルオペレートとフォーカスを交代しながら撮影を進めて行きました。専門性が薄れつつある現代だからこそ逆に可能なスタイルだったのではないかと思います。

天気は雨のぱらつく曇りでしたが、おかげで全体に光が回り、少しハイキーめに撮影することでレンズの描写とも合った、しっとりとした非常によい雰囲気を作れたのではないかと思います。

 

【収録】

EOS C500 Mark IIは5.9K RAWで内蔵のカードに収録できるのが特徴です。今回は5.9K 24p 12bit RAW(Canon Log2)で収録しました。カードはCFexpress 512GBを2枚用意しました。HS部分のみ60p 10bit RAWで収録しています。

53分ほど回して、撮影素材は680 GBほどになりました。

また、SDカードにプロキシ素材を同時収録しておきました。これは後述しますが、編集時に非常に助けられました。

 

【機材】

EOS C500 Mark IIにSumire Prime 14mm、24mm、35mm、50mm、 85mm、135mmの6本を使用しました。このSumire Primeレンズは特に絞りの開放時に特徴が強く出ますが、収差をあえて残すことによりボケが柔らかくなり、空気感のある描写になります。個人的には開放での色収差は場面によっては過剰な印象を抱いたので、少し絞って使っています。今回はその影響も出るような手すりの多い展望台をロケ場所としました。

レンズ選びは、ジンバルワークでは程よい広さの標準画角である35mmを主に使用しました。

NDフィルターは内蔵のものを使用しました。多くの内蔵NDは6stopまでが多いのですが、EOS C500 Mark IIは10stopまでの減光が可能です。今回はT2.0~2.8前後で撮影したので、ここまで減光できたのは非常に助かりました。

シャッタースピードは1/100で通し、感度はISO800を基本にして、カットによって微調整しています。

今回、低照度条件下での撮影はできなかったので、いずれはナイターでの撮影も試してみたいと思っています。

Ronin 2での運用時はワイヤレスのフォローフォーカスを取り付け、フォーカスの映像はiPadでモニタリングしていました。

Sumire Primeはシネレンズのシリーズだけあって、レンズの重さや形状はほぼ近しいので、レンズ交換の際に、バランスのズレが少なく、すぐ調整ができました。余裕があればバランスを取り直すに越したことはないですが、Ronin 2側のペイロードにもかなりの余裕があるので、微妙な差異くらいであればそのまま起動しても問題ありませんでした。

オンボードモニターは純正のLCDを使用しました。曇り空だったことものあり問題なくモニタリングできました。ただ、直射日光の中だとちょっと厳しそうです。ガンマはCanon log2で収録し、このモニター上では709lutを当ててモニタリングしました。

バッテリーは付属のBP-A30では40分ほどしか保ちませんでした。特にRAW収録だと消費が早いようです。Vマウントバッテリーでの運用がベターかもしれません。

重量の面でEOS C500 Mark IIは他のシネマカメラと比べると軽い部類になるのですが、Ronin 2と合わせるとそれなりの重さがあり、Ready Rigなど何かしらのサポートがないと限界があります。

EOS C500 Mark IIのメニューのUIは分かりやすく、すぐに慣れることができました。ただ、Fnボタンが多く、若干迷う場面もありました。この機種を所有して使い込めば、即座な対応が求められる小規模な現場(特にアシスタントがいない場合)では、このEOS C500 Mark IIのように機能が集約しているほうが助かるだろうなと感じます。

また、些細な点ですが収録のカードの転送レートが非常に早いおかげか、プレイバック再生時のレスポンスが驚くほど早く、そのストレスが全くなかったのは嬉しい点でした。

 

Sumire Primeの特徴である色収差をどうするか?

Sumire Primeレンズは特に幾何学的な被写体(今回でいうと手すりなど)だと色収差が顕著に現れた。昨年度劇場公開された3Dアニメーション映画「スパイダーマン:スパイダーバース」ではボケの表現を極端な色収差によって表現したり、動画プラットフォーム TikTokのロゴも色収差がデザインの意匠に含まれていたりと、一つのトレンドになってきているかもしれない。本来であれば実写映像では抑えるべきと言われている収差を上手く取り入れるのは難しいかもしれないが新たな表現手法として確立していけば面白と思う。



 

 

EOS C500 Mark IIはジンバルのRonin 2と手持ちで運用

Ronin 2はかなりの重さ(本体のみで8.0kgほど)があるので、今回は基本的にはReady Rigに取り付けて運用した。Ronin 2は持ち手がジンバルをぐるっと囲んでいるので、ローアングルに入ったり、二人で持って障害物を超えるなど、柔軟なアングルで撮影することができた。


 

Ronin 2から取り外し、トップハンドルとモニターを装着して手持ち仕様にしている。今回は予算の都合で難しかったが、回転角の大きいシネレンズなので手持ち撮影の時もフォローフォーカスは必須。Ronin 2使用時のワイヤレスフォローフォーカスをそのまま使う手もあったが、Vマウント仕様にしていなかったため電源の問題で今回は断念。ジンバルと手持ちの切り替えの早さ、操作性などを加味して現場にあったベストなセッティングを考える必要がある。



BTSムービーはこちらから

【ポストプロダクション】

私は普段はAdobe Premiere Pro CCも使っているのですが、今回は編集からグレーディングまで、すべてDaVinci Resolve Studio 16で行なってみました。

5.9KのRAW素材は、数世代前の非力なMacBook Proではとても編集できない状態でしたが、そこで役立ったのが同時収録していたプロキシ素材でした。こちらは2Kで収録されています。同時収録されているので、ネイティブ素材から一度プロキシを書き出す手間が必要なく、瞬時に編集に入れるのは相当な利点でした。プロキシ素材を編集をして尺を決めた後、RAW素材に置き換えてカラコレ作業に移りました。この作業は、DaVinci Resovleの再コンフォーム機能で簡単にできます。

素材がRAWなのでカメラRAWネルで基本設定(露出、WB、彩度、コントラストなど)を決めた後、ノードによる調整を行いました。微妙に印象を変えるため、前半のWBは4500に、後半のWBは5200としています。

今回はずっと曇りだったのが功を奏して照明環境もほとんど変わらず、また同じシネレンズのシリーズなのでレンズごとの描写も変わらなかったので、ほぼグレーディングのみに集中することができました。オールドレンズを使って“味のある描写”を出すことはできますが、それはレンズの劣化によるものなので、同じ型のレンズを使っても同じ描写になるとは限りません。他方、Sumireレンズも特徴あるボケや滲みを描写しますが、あくまで狙い通りの設計のもと作られた描写であるため、レンズごとの差異がなく一貫性を持たせられるのは大きなメリットになります。

撮影時のオンボードモニターの段階でSumire Primeの描写の美しさ・品の良さに感動していたので、あまり過度なグレーディングは施さないことにしました。カメラ、レンズの描写だけで充分な空気感があり、小手先の表現をする必要はないと感じました。手持ちのLUTを基調に、無機質な舞台の上で衣装の鮮やかな赤が映えるように少し強めました。色温度は少し低めにしつつ、海の青は抑え、冷たい硬調な感じにすることで無機質さを強調しました。後半では色温度を少し上げ、温かみを感じるようにしました。

 

Cinema RAW Light素材はカメラRAWで

RAWデータは撮影後も画質劣化なしに様々なパラメータを変更できる。今回は少しハイキーにするために露出を上げ、彩度もわずかに上げたが、がそのほかはほとんど変更していない。ポストプロダクションの段階で画の方向性を探れるのはRAWの強みだと思う。LUTはCanonの709LUTではなく、以前携わったインディーズ映画で作ったLUTを流用して調整している。全体的にはハイキーでありつつも、ハイライトの部分はすこし下げて落ち着いた印象となるようにしている。

 

海の青は抑えめにして、非現実感を狙うため緑に寄せている

ノード4では、無機質な印象を与えつつ人物を際立たせる狙いで色相vs彩度で青みを抑えている。


 

ノード5では、若干の非現実感を狙うため、色相vs色相で海の青を緑に寄せている。

 

コンフォーム機能を利用して最終書き出しでRAWに切り替える

①プロキシ素材とRAW素材をそれぞれ別のビンに分けて取り込んでおき、編集後タイムラインのクリップを選択して「コンフォームロックを有効」を解除する。

 

②「ファイル」〉「ビンから再コンフォーム」を選択し、RAWが振り分けられているビンを選択してOKすると、ファイル名やファイルの長さ、タイムコードなどからDaVinciが自動的に判断してRAW素材が紐づけられる。うまく紐づけされなかった場合はコンフォームオプションの設定をいくつか試すと大抵上手くいく。

 

コンフォームオプションの設定画面。

 

まとめ

このEOS C500 Mark IIとSumire Primeの組み合わせは素晴らしいの一言でした。特質すべきは被写体が浮き出るようなボケ感です。フルサイズのセンサーの大きさも相まって、滑らかにアウトフォーカスしていく様はとても気持ちのよいものでした。スキントーンも非常に美しく、シネマルックと呼ぶに相応しいのではないかと思います。

ぜひこのカメラとレンズの組み合わせでしっかりと人物を描いたドラマを撮ってみたいと考えています。

また、今回の撮影はスタッフ2名というかなり無茶をした現場でしたが、それでもなんとか運用することができました。規模の小さな現場でも充分にハイクオリティの撮影ができるカメラとレンズなのではないかと思います。

多くのメーカーからフルサイズ機が登場しています。RAW収録も当たり前になりつつあります。このような若輩者が、これだけのクオリティで撮影できる時代になっています。

それぞれの機材に特色があり良ところがありますが、個人的には「どのカメラも遜色なく素晴らしい」と感じます。その素晴らしい性能を活かしきった素晴らしい作品を作れるかどうかは、クリエイター次第だと強く感じています。これからも精進しながら“進み続けていこう”と思います。

最後になりましたが、快く機材提供してくださったキヤノンマーケティングジャパン、DJI Japan撮影に協力してくれた友人たちに深く感謝します。


▲監督・撮影:角洋介(左) フリーの撮影部として活動、積極的にインディーズ映画に撮影監督として参加している。

撮影助手:板垣真幸(右)ビデオグラファーとして空撮から縦型、全天周など幅広くコンテンツ制作に携わっている。ロサンゼルスのインディーズ映画の現場で知り合い、現在はともに東京を拠点に活動している

【関連情報】

EOS C500 Mark II https://cweb.canon.jp/cinema-eos/lineup/digitalcamera/c500mk2/index.html

Sumire Prime https://cweb.canon.jp/cinema-eos/lineup/index.html#sumire-prime

DJI Ronin 2 https://www.dji.com/jp/ronin-2

【キヤノン】人物描写の柔らかさとボケ味にこだわった個性的なレンズ『Sumire Prime』が登場した

 

本記事はMOOK「カラーグレーディングワークフロー&シネマカメラ」から転載です

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