2016年10月4日(火)より4日間、幕張メッセ(千葉市美浜区)にて開催された「CEATEC JAPAN 2016」。出展者数648社/団体(前年比117社/団体増、同22.0%増)、登録来場者数145,180人(前年比12,132人増、同9.1%増)で閉幕した。
かつてはエレクトロニスショー(エレショー)と言われ、CEATECに名称変更してからはそのコンテプトが見えにくくなってきていたが、今年は「CPS/IoT Exhibition」に大きく舵を切り、未来を見据えたコンセプトや新しいビジネスモデルを発信する「CPS/IoTの総合展」として再スタートを切った。
残念ながら映像系の展示は年々減り続けている印象があり、今年もNHK、ブルーレイアソシエーション、シャープが8Kを中心にした映像系の展示をしたのみ。ビデオSALON.Webではその少なくなった映像系に展示を中心にレポートする。
NHKでは8K HDRブースが人気
NHKとJEITAの共同ブースでは、4Kと8K放送を中心に展示。注目が集まっていたのは85型の8K HDRのデモ映像。液晶なので視野角はやや狭目で、特に驚くほどのピーク輝度は感じられなかったが、多くの人が近づいてその映像を確かめていた。
NHKだからといって8Kオンリーというわけではなく、すでに普及段階に進んでいる4K放送やケーブルでのサービス、IPでの配信サービス、4Kタブレットやゲーム機などへの拡大について紹介していた。また8Kは放送だけでなく、内視鏡と組み合わせた医療現場への展開も見せていた。
ブルーレイアソシエーションブースでのセミナー
ブルーレイアソシエーションブースでは、本誌でもおなじみの麻倉怜士さんのセミナーを開催。Ultra HD Bllu-rayについて、現行Blu-rayとの違いから始まり、具体的に映像ソフトでどういった違いが現れるのかというのを実際の映像を見せながらデモしていた。
Ultra HD Blu-rayはディスク自体は現行のブルーレイディスクの技術をベースに拡張しているが、映像技術は大幅に進化している。解像度はフルHDからUHD(3840×2160)に、色空間は従来のREC.709から、REC.2020へ、そして最大輝度は100nitから10000nitへと100倍拡大、圧縮技術はH.264(AVC)8ビットから2倍効率が良いと言われているHEVC(10ビット)へ。転送レートは40Mbpsから100Mbpsとなっている。
4Kコンテンツはインターネットによる配信サービスも始まっている。ディスクメディアで提供する意味はあるのかという考えもあるが、配信と比べて圧倒的に記録レートが高いというのがポイント。つまり画質が良い。配信はテレビのように気楽に見るのには向いているが、映画作品を趣味的にしっかり鑑賞するにはまだまだディスクであることのメリットは高い。
特にパッケージメディアとして、デザインを含めた外装パッケージや紙の付録コンテンツなどを特典としてつけることにより、コレクションしたくなる商品にすることができると主張する麻倉氏。パッケージメディアが生き残るには、映像音質のクオリティに妥協しないこと、そしてコレクション欲というのがキーワードかもしれない。
日本向けのハリウッド映画タイトルは6月から順次発売が開始され、フォックス、ワーナー、ソニーピクチャー、ユニバーサルから合計44タイトルが発売される(発表分含む)。米国ではすでに50以上のタイトルが発売済みで年内には200タイトルを超えると予想されている。新作映画はほぼUltra HD Blu-rayで発売されるという。パッケージにはUHD版とHD版の最低でも2種類のディスクが収められているのが大半。まだプレーヤーを持っていないというユーザーが将来のために購入するというケースもあるようだ。
新製品を続々提案するDJIも出展
ドローンやスタビライザー製品をこの秋も次々に提案しているDJIは、InterBEEと同様のブースを確保。そのセンターでは実際にドローンを飛ばすデモを行なっていた。登録した来場者には抽選で最近発表されたOsmo Mobileが当たるというプレゼントも。Osmo関連製品を手にとって試す人が多かった。
映像系で目立つのはシャープ
映像系メーカーはすでにソニーなどは出展しなくなっているが、そんななか映像系分野で目立った展示をしていたのはシャープだった。
8Kのテレビ放送はすでにNHKで試験放送が始まっているが、実際にその放送を見られる場所はNHK関連の施設以外にはない。受信機がないためだ。シャープでは世界初の8K放送対応受信機TU-SH1000を開発。8K解像度、22.2chの音声出力に対応している。ブース内にコーナーを設け、同社の8K映像モニター(LV-85001)とともに宝塚の映像をデモしていた。宝塚ファンらしき女性が食い入るように見ていたのが印象的だった。8Kは舞台撮影コンテンツにも向いているようだ。
同じくシャープでは、IGZOパネルを採用した27インチの8K HDRモニターを展示。こちらはPC用途だろうが、これまでに体験したことのない緻密な描写。解像度は8K(7680×4320)、326ppiで、駆動は120Hz、ピーク輝度は1000nits。製品本体の厚みはかなりある。
最先端の映像機器と同じ並びに、懐かしい機器も。単なる懐かしいということではなく、シャープが常に新しい提案をしてきたという象徴的な製品がディスプレイされていた。
そのひとつが1992年の液晶ビューカムVL-HL1。8mmビデオカセットレコーダー、液晶パネル、ズームレンズ、回転グリップが一体になったもの。液晶パネルとレコーダー部が一体になっており、それを見やすい角度に回転できるのが画期的だった。従ってEVFはなし。このパネルで撮るだけでなく、観ることも提案された。この撮影スタイルはデジカメにも引き継がれたのだが、当時のパネルでは屋外での視認性がいまいちだったことと、どうしてもサイズ的に両手で保持する必要があったのがネックだった。
1979年のVHSビデオデッキVC-6000。テレビの下において使うスタイルでフロントローディングが特徴だった。
パナソニックは透明OLEDを活用した提案
パナソニックはテレビやAV機器だけでなく、家電を含めた住環境全体を提案できるラインナップを持っているが強み。ブースでは実際の住環境を展示し、そこに最新の映像技術をどう融合させるかという提案を行なっていた。
透明型のOLED(有機EL)は、すでに今年のサイネージジャパンで話題になっていた。キッチンにあるガラスが透明OLEDになっており、そこに映像やレシピを表示してそれを見ながら料理することができるという提案。
透明OLEDパネルを使えば、日本酒が並ぶ酒屋やバーでは、扉に画像や情報をわかりやすく表示するシステムが構築できる。
リビングの戸棚ガラスに透明OLEDを応用すれば、ふだんは透明のガラスで戸棚な置物が見えているが、
↓ガラス部分にこのように映像を表示できる。透明ガラスがテレビになってしまうというのが未来的な感覚だ。