レポート◉林 和哉
序論:リグというものは、なぜ野暮ったくなるのか(なるに決まってるが、まずは疑う)
カメラリグというものは、ときどき残念な存在である。高性能なカメラ、美しいレンズ、それを守るために付けるケージ──なぜかカメラが鉄骨建築のようになる。
軽量なカメラを買った。
ケージを付けた。重くなった。ハンドルを付けた。さらに重くなった。
気づいたらカメラに「カメラ分の重さが追加」されていた。
しかも、ケージというものはどこかゴツい。機材感マシマシで、かっこよさと迫力は充分。プロたる者、ヘビーユースを使いこなすことこそ美学、という漢のロマンだ。
それは良いとして、カメラ自体のデザインは死ぬ。
そこで湧き上がる疑問。
リグって、カメラを美しくできないの?
答えは、できる。ただし、相手を選ぶ。
本論:検証したのはFALCAM ZRリグである
リグも数多のメーカーが競合している世界だ。SmallRig、TILTA、Wooden Camera……選択肢は多い。どれも優秀で、どれも機材を増設できるネジ穴が多数で、どれもちゃんと重い。
そこへ殴り込んできたのが、深圳発のFALCAMだ。
2020年設立の比較的新しいブランドだが、短期間でクイックリリース分野に存在感を刻んでいる。日本ではイメージビジョンが2022年から代理店を担当。Nikon ZR専用ケージ(5B01)は2026年3月発売の新しい顔だ。
FALCAMをひとことで言うと、「クイックリリースを現代に再解釈することに全力を注いでいる会社」である。アルカスイスを発展させたであろうF38、NATOレールを発展させたであろうF22という独自規格で、機材の着脱を「ネジ不要・ワンアクション・しっかり固定」に変えにきた。


これはとても良くできていて、スライドさせると、所定の位置でカチッとハマる。

所定の位置は計算され尽くしていて、ここだよね、というヘソにくるようになっている。
つまり、センターを合わせるときに、「この辺かな?」と探る必要がない。ピタッと決まるのだ。中途半端なところで止まることがない。自由度がないと思われるかもしれない。しかし、バランスを取るために止めたい位置は、ほぼいつも一緒だ。
「少し右ヘビーだからトップハンドルを右寄りにしよう」
バランス取りはほぼ変わらない。そのちょうど良いところに、ハンドルが止まるようにロックするポイントが配置されている。
今回使用したのは、この5B01カメラケージを核にした、グリップ・トップハンドル・左サイドハンドル・モニターアームを組み合わせたZRリグ一式である。

良いところ:このリグ、カメラが「生き残っている」
1)とにかく軽い。圧倒的に軽い
他社との比較を見てほしい。
- SmallRig ZRケージ(推定):約350〜450g
- TILTA ZRケージ(推定):約400g
- FALCAM 5B01:280g
数字で見ても明快だが、実際に持ったときの差はさらに大きく感じる。これは、ケージとしての設計思想の違いだと思う。「守る」ではなく「軽く運用しながら、必要なだけ固定できる」に振り切っている。
ZRは小型・軽量が売りのカメラだ。そのカメラに「重さ貢献者」を乗せては、本末転倒である。5B01は、その問いにちゃんと答えている。

2)ケージがミニマルで、カメラが死なない
ケージというものは、得てしてカメラを「工事現場の資材」に変える。
5B01は違う。ケージを付けていても、ZRはZRのままである。
ボトムプレート・ライトプレート・フロントプレートの三点で最低限を押さえ、余計な面積を持たない。カメラ自体のフォルムをちゃんと残しながら、機能を足している。これが地味に、かなり偉い。
カメラが好きで選んだデザインが、リグを付けた瞬間に「昔話」にならなくて済む。


次からは各パーツの紹介と組み立て過程をお届けする。


まずはこのプレートを付けるところから始まる。

カメラが曲がってインストールされないように、しっかりと回転止めのピンが付けてあるのが粋である。

まずはボトムパーツをつける。

次にフェイスパーツをつける。

とてもシンプルなフェイスプレート。 小さいパーツはサイドを押さえる役目。

最低限の面積しか覆っていないのがミニマルで素敵。

このサイドパーツがハンドグリップ側をカバーする。


がっちりガードと思いきや、
グリップをスライドインして、

ネジ止めして完了。

3)グリップ・トップハンドル・サイドハンドルが、「触っていたい」を超えている
ここが、このリグの特異な点である。
FALCAMのハンドル類は、素材からして何かが違う。見た瞬間に本能がそう告げる。
今回レビューするグリップ・トップハンドル・左サイドハンドル、すべてに共通しているのが、木材を削り出したような有機的な曲線と、グレーに染め上げられた美しい木目のテクスチャーだ。



グリップを外せば、マウンティングポイントが隠れている。

これが、想像以上に「来る」。
木目の流れる方向、削り跡の陰影、グレーの染め具合。単なる「滑り止め素材」ではなく、工芸品に近い佇まいがある。写真で見るより実物のほうが数段美しく、初めて手にした瞬間に「あ、これは違う」と思わせてくる。

「触っていたい」という感情がカメラリグに向くのは、初めての経験だった。
金属ボディのリグが「武器」だとすれば、FALCAMのハンドルは「楽器」に近い。機能的でありながら、持つこと自体が目的になりうる。機材に愛着が湧く、というのはこういうことかと、少し理解した。
4)グリップの回転の安心度
ここで、サイドグリップの回転に関するFALCAMの提案を紹介したい。
FALCAMのサイドグリップの根元には、グリップの角度を変えるための押込式レバーが付いている。
これを押しながらグリップをグイッと時計回転すれば、カメラがグリップに対してチルトダウンする。ハイアングルが楽に取れる状態になるわけだ。

このアングルでいくぜ! とサッと回転させて決めて、微調整は腕の角度と根性で合わせる。
そのときに、まったく揺り戻しのないグリップのホールド感が、集中力を高めてくれる。
根元の接続はF22(NATOレール幅)なのだが、しっかりと止まっているので不安感がない。
極上の安心度なのだ。
5)モニターアームのネジが「半回転」で完結する
細部に惚れた話をさせてほしい。
モニターアームのチルト固定ネジが、半回転でロック、半回転でリリース、どっちに回しても半回転で切り替わる仕様になっている。


普通のネジは「どこまで締めればいいのか問題」がある。締め込みすぎれば次に開けるのが億劫で、緩すぎればモニターが垂れる。その微妙なさじ加減で毎回神経を使う。5B01のモニターアームはその問題をきれいに消した。
半回転。以上。


小さい話に見えて、撮影中に何十回も触る部分だ。この快適さは積み重なって、じわじわ効いてくる。
また、受け側とモニター側に付ける小さなF22プレートが、確実な接続と、簡単な取り外しに貢献している。

プレートには、ネジが切ってある小さな穴が二つ付いていて、回転防止用のArriピンを裏側に付けることができる。
また、双方向からのインストールを許さない。
使ってみると納得するが、機材が滑り落ちるであろう方向には絶対に抜けないようになっている。

裏面を見ると分かるが、ロックするピンが通る開口部を受け口に合わせるわけだが、必ず装着者の側からしか入らないようになっている。

モニターを被写体に確認用に向けたとしても、根元は必ず撮影者に向いている。よっぽどのことがない限り、アンロックしたときに滑り落ちる方向を向いていることはない。
こうした細かい気配りが設計段階で想定されていたことに感銘を覚えた。
6)F22/F38が、「簡単インストール&しっかり固定」を両立している
FALCAMの本質は、ここだと思う。
F22はNATOレールを進化させたような規格で、小型アクセサリーのワンアクション着脱に強い。F38はアルカスイスを発展させたような規格で、三脚・雲台・ケージ本体の接続を担う基幹規格だ。

正しい方向からスライドさせる。
カチッと音がしたらあとはブレなくしっかりと固定されている。
迷いはないのだ。
重要なのは、F22もF38どちらも「簡単に付いて、しっかり固定される」という相反しそうな要素を両立していることだ。
ネジを締め込んで固定する旧来の方法は、確かにしっかりしている。だが時間がかかり、外すのも手間で、思考の流れを止める。FALCAMはその「神経を使う部分」を設計で解決している。付いたと思ったらちゃんと固定されていて、外したいときはスムーズに外れる。安心できる剛性を、無駄な手間なしに得られる。これが正直、一番大きい。
良くないところ:欠点は欠点として存在する(ただし致命傷ではない)
1)F50対応モデルが今のところない
ZR向けには現在F22/F38対応の5B01が主軸で、F50対応製品は確認できていない。大型リグへの発展を考えるなら、ここは要確認だ。ただしZRの小型ボディを考えると、F22/F38の範囲で十分運用できる。
2)対応アクセサリーが他社より少ない
SmallRigやTiltaと比べると、周辺アクセサリーの絶対数はまだ少ない。汎用の1/4インチネジで補える部分は多いが、「専用品でスマートに揃えたい」層には選択肢の狭さを感じる場面があるかもしれない。ブランドの歴史がまだ浅い分、ここは今後に期待したい。
運用してみて:「カメラを持つのが楽しい」が戻ってきた
結局、ここに尽きる。
リグを付けることで撮影の自由度は上がる。だが同時に、カメラが「機材」から「装置」に変わっていく感覚もある。「正しく運用し、安全に撮影する」使命感が勝ち、機材への愛着がどこかへ消えて行く。
FALCAMのZRリグは、それが起きなかった。ケージを付けて、あの木目のハンドルを握って、それでも、ZRはZRのままで、しかも快適だった。
- 軽い。
- スタイリッシュ。
- ハンドルの質感と触り心地が別格。
- F22/F38の着脱が気持ちいい。
- モニターアームの半回転ネジが快適。
この「気持ちいい」の積み重ねが、撮影に向かうときの気分を変える。ほんとうに変える。
結論:買っていい(というより、触ったら終わり)
FALCAM ZRリグは要るのか。
5B01を使ってしまうと、議論は終わる。要る。そして正確に言えば、一回手に持ったら、戻れない。
他のリグより軽く、他のリグよりカメラを殺さず、他のリグより触り心地がいい。あの木目のハンドルを握った瞬間、比較検討の気持ちがどこかへ消える。F22/F38の設計思想は、現場の「無駄な神経」を確実に減らす。
カメラケージ5B01(25,800円)に、ハンドルやモニターアームを足していくと予算は増えるが、それに見合った体験がある。

少なくとも、「機材を持ち出すのが楽しい」という感覚は、確実に上がる。
それだけで、充分ではないか。
FALCAMトップページ https://www.falcam.jp/
