富士フイルムから9月25日に発売になるF4通しの5倍ズームレンズ「フジノンXF16-80mmF4 R OIS WR」。今回、8月に開催されたイギリスの音楽フェス「Boomtown Fair」の撮影でいち早く、このレンズを試してみた。リアルタイムに進行するライブイベント撮影のなかで、このレンズはどう活躍してくれたのか? 日頃からX-T3を愛用するビデオグラファーの熊田さんに現場で使ってみた使用感を中心にレポートしてもらった。

 

テスト・文●熊田勇真

大阪芸術大学で映像について学び、フリーランスを経て、2017年11月にメルカリ入社。よく使うツールはAdobe全般、Premiere、After Effectなど。名前にちなんで熊のアイテムを毎日愛用する我の強さを持つ。

 

1週間このレンズを使わせてもらって僕は思いました。結論から言うと「富士フイルムで動画を作るならこのレンズしかない!」この記事は以上です。以下はもう少し詳しく、脱線しながら話を聞きたい方だけどうぞ! 富士フイルムのカメラの良さはなんと言っても色。カラコレすりゃ良い色は作れるんだろうけど、そんな時間ないっす、そもそもスキルがないっす、そもそも年収300万円の僕には週1のラーメンくらいしか楽しみがないっす…、みたいなどんどん暗い気持ちになるあなた(そして僕)をパッと明るくさせる、そんなカメラです。今回、新製品・フジノンレンズ XF16-80mmF4 R OIS WRを借りて、イギリスの音楽フェス「Boomtown Fair」に行ってきたのでレポートとレビューします。

 

X-T3との相性も抜群なF4通しの便利ズーム

まずレンズの基本知識を。焦点距離は16-80mm。X-T3はセンサーサイズがAPS-Cなので、35mm判換算だと約27-125mmです。これ一本で「一般的な標準レンズ+ちょっとした望遠撮影もできる」という優れもの。全ズーム域がF4固定なのでどんなに広く撮っても、寄っても明るさはF値で変わりません。重さは440g。手に持った時のサイズ感もよく、すごく持ちやすく感じました。「X-T3はこのレンズのために作られたのではないか?」と思ってしまうくらいフィットしてます。余談ですが、「私はあなたに合わせてきたのに!」と言い寄る女性・男性は地雷です! 基本的に恋愛は歩み寄りなので、どちらかが一方に偏るのではなく、そもそも近い形の人を選んだほうが人生はスムーズに良くなると思います。

 

普段は牧場の場所で開催されるBoomtown Fair

さて、Boomtown Fairは、イギリスのウィンチェスターという富裕層の街で行われるフェスです。会場は普段は牧場ですが、この日だけフェス会場に様変わりします。規模で言えばフジロックが約12万人、ライジングサンが約7万人なので、その中間くらいの規模のフェスでした。基本的に各ステージは裏導線で入り放題と聞いていたのですが、意外と厳しく、規制されるところもいくつかありました。警備員さんによってルールが違うというのも夏フェスの醍醐味ですよね!

 

これも警備員さん。警備する気ゼロ。

 

ズーム域の広さを見てみよう

語るよりも見てもらうほうが早いと思うので、一旦見てもらいましょう。ここから見る写真は動画の切り出しです。動画撮影セッティングはAll-I H.264 1080/23.97p で撮影しています。ちなみに色は基本的にフィルムシミュレーションは「PRO Neg.Hi」で撮影しています。好きなんです、あの色。フォーカスは基本的にマニュアルで操作していますが、この時はAuto-Cだったかも。

これくらい離れてる場所から狙って…

ここまで寄れます! すごいですよね? 

これくらい寄ってるのが…

ここまで引けます。

一本のレンズで選べる画角が広いのが、このズームレンズの良いところですよね。ウェディングやイベント撮影など、時間がないけどカット数を増やしたいというシュチエーションにはすごく合ってると思います。

 

6段分の手ブレ補正は超強力

さらにこのレンズには型番に「OIS」がついているので手ブレ補正機能が備わっています。6段分の手ブレ補正があるので、すごい強力です。どのくらい強力かは以下の動画を御覧ください

すごくないですか? 実は今回、イギリスに撮影に行くにあたって、この手ブレ補正を信用して三脚を持っていっていません。編集で「ワープスタビライザー(Premiere Proに搭載されている手ブレ補正機能)」をかければ移動撮影もいけるやろと思ってジンバルも持っていっていません。実際、固定で撮るシーンはほぼなかったので三脚はなくても良かったのですが、さすがにジンバルは欲しかったかもしれない。いや、音を重点的に撮るとき用に三脚もあったほうが良かったかもしれない。それでも良い感じに撮影できました。でも、実はそれ以上の問題がありますね…めっちゃレンズに水滴が! 踊ってる女性の顔部分に水玉ができちゃってる…。ごめんね、ガール。素敵な笑顔だったのに。

 

このフェスは4日間開催されたのですが、うち3日間が雨で本当に参りました。レンズフードがあったため、少しは良かったのですが、それでも濡れました。やっぱり映像を撮影する上で重要なのは手ブレ補正もそうですが、それ以上にもっと基本の「濡らさない」とか「フォーカスを合わせる」とかそういうことなんだなと痛感しました。

 

激しくズームすると、フォーカスが迷う

「フォーカスを合わせ」…そう、そうなんです。この部分について、このレンズで言いたいことがあります。きっとみなさんも撮影でオートフォーカスを使うと思います。X-T3にも搭載されている瞳オートフォーカスとか結構すごいですよね? その上でこの動画をご覧ください。

 

おおおうう…ここで見てもらいたいのは、この面白そうなシンセサイザーではなく、3秒あたりのピント。ズームインしたときに即座にピントが迷ってしまうのです。3秒あたりで迷って、ピントがリカバリーするのは5秒。この空白の2秒はピンぼけ状態となります。うーーん、これはちょっと…難しいところですね。ただ、この場所が暗いからピントが戻るまでに少し時間かかるのかと思っていました。でも、昼間でも同じ現象は起こってしまうようでした。僕は一旦これを飲み込んで、あまりにも激しいズームワークはしないように決めました。

 

 

今回熊田さんが制作した「Boomtown Fair」関連の動画プレイリスト

今回のテストを終えて、レンズの描写や一本のレンズから狙える画角のバリエーションの豊かさもあり、全体的な使用感としては大満足! でもフォーカスのところは気になるかな? という感想を持ちました。僕自身はマニュアルフォーカスで運用する機会が多く、オートフォーカスを使うことは少ないのですが、今回のようなイベント収録の現場でこそ活用したい機能だと思うので、今後の改善に期待したいです。フォーカスやズームなど使い方を気をつけなければいけない側面はありますが、もしあなたがX-Tシリーズを持っているのであれば、このレンズを1本だけで旅行で写真も映像もガシガシ撮っていける便利な一本だと思います。

 

●製品情報

https://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/x/fujinon_lens_xf16_80mmf4_r_ois_wr/