IMAGICAエンタテインメントメディアサービス(以下:Imagica EMS)は2024年12月9日、竹芝メディアスタジオにて、同社が提供するリモートカラーマネジメントサービスColetteを活用したワークフローを学ぶ勉強会をアニメ制作者を対象に実施した。イベントは全3回実施され、アニメーションプロデューサー、色彩設計、撮影など、色に関わるクリエイターが参加したという。

アニメ制作フローにおける色管理の要素技術をテーマにした講演

カラーイメージングエンジニアの長谷川智弘氏による講演の模様。アニメ制作における色管理について、90年代から開発・販売していたフィルムスキャナー、2001年に開発されたフィルム向けカラーマネジメントシステム(Galette)等、要素技術に関する歴史を振り返りつつ色域と色温度やACESなどの基礎知識にもふれた上で、色管理における強みと独自性、環境を揃えるためのネットワーク構築の重要性、Coletteを導入する利点などについて説明を行なった。

DolbyCinema仕上げ作品の撮影・チェックアプローチ

『キングダム 大将軍の帰還』『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』などを手掛けたカラリストの山下哲司氏による講演。アニメーション作品をDolbyCinema仕上げにした場合の表現の違いについて実例を交えて解説。アニメーション撮影(コンポジット)工程へのHDR導入にあたりImagica EMSが実施したサポート内容を紹介。加えて、長谷川智弘氏からDolbyCinema作品用に独自に開発したプラグインの効果について話があった。

劇場作品におけるカラーグレーディングのアプローチ

カラリストの関口正人氏と皆山実貴子氏は、スクリーンでのカラーグレーディングができるグレーディングルームでいくつかのアニメ作品の実例を上映しながら、モニターとスクリーンの表示デバイスや色温度の違いがどのように見えるか、TVシリーズを基に制作した作品の劇場版をどのようにスクリーンで再現するかなど、カラーグレーディングでのアプローチ方法について解説した。

OTT作品HDR仕上げフロー

カラリストの斎藤岳史氏とエディターの平野郁也氏によるデモンストレーションの様子。OTT作品(配信作品)のHDRグレーディングの環境が整ったグレーディングルームで、アニメ作品にフィルム銀残しの色調・質感を再現するカラーグレーディングなどについて、実際の作品を見せながら解説。また、竹芝のグレーディングルームと荻窪アニメーションハウスをクラウドでつなぎ、Blackmagic Cloudコラボレーションによる、効率的なオンライン編集とカラーグレーディング作業フローについても紹介していた。

機材や技術展示も

イベント会場では、今月1月24日に発売になるEIZOのHDRリファレンスモニターColorEdge PROMINENCE CG1をはじめ、実際のモニター管理画面やColetteで使用している計測器などの技術展示や、リモートキャリブレーションの実演も。また、アニメ作品は配信や劇場などワールドワイドで公開されることが多くなっているなかで、多言語ローカライズサービスや、素材が流出しても追跡調査を可能にするInvisible Watermarkサービスなども合わせて展示されていた。