カメラユニットを着せ替えできて色々楽しいアクションカメラ、 Insta360 ONE R


Insta360から登場した新製品はカメラユニットを付け替えて使えるInsta 360 ONE R。4K広角カメラと360度カメラを着せ替えできるツイン版を発売前に山映像を得意とするビデオグラファーの井上卓郎さんに試してもらった。

テスト・文◎井上卓郎Happy Dayz Productions

 

1月7日に発表されたInsta360 ONE R。今までのアクションカメラというとスタビライズ機能がとても進化したが、基本的に小さい本体とシンプルな機能というのが各社共通だった。ところがInsta360 ONE Rはモジュール式を採用し、組み合わせ次第でアクションカメラ、360度カメラ、ドローンにも装着できるなど色々な楽しみ方ができるカメラだ。

最近あまりアクションカメラを使っていなかったのだが、「雪山でスポーツ撮影する用に欲しいなぁ」と思っていたタイミングで編集部から「新しいアクションカカメラのレビューしませんか?」という話をいただいたので好奇心からレビューを引き受けることにした。よくよく考えたらVIDEO SALONに私が初めて登場したのはアクションカメラの記事だった。

▲筆者がVIDEO SALONに初登場したのは、こんな感じのGoPro用に自作したグルグルマウントの記事だった

 

 

あらゆるシーンに寄り添うアダプティブなアクションカメラ

Insta360 ONE Rは、1つのバッテリーモジュール、1つのプロセッサーモジュール、1つの交換レンズモジュールから構成される、アダプティブなアクションカメラです。レンズを付け替えるだけで、360度撮影カメラから標準アクションカメラに変わります。3つのレンズモジュールによる3タイプの撮影手法を備えており、360度モジュール、4K広角モジュール、1インチ広角モジュールから選ぶことができます(公式ページより)。

現在発表されているモジュールは以下の通りだが、「分離合体」というだけでもワクワクさせられる。多分今後いろいろなモジュール展開を考えているのだろう。モジュール自体は小さいので、ある時はアクションカメラ、またある時は360度カメラと使い分けも苦にならない。また必要に応じてモジュールだけ買い足せば良いのでお財布にもやさしい。

 

360度モジュール

前後に2つのレンズを搭載して5.7Kの360度動画を撮影できる。

 

4K広角モジュール

4K60fps対応。8倍スローモーションも撮影可能。

 

1インチ広角モジュール

1インチセンサーを搭載し、暗所でも鮮やかな5.3K動画と19MPの静止画が撮影できる最高品質のモジュール。Leicaと共同開発

 

ドローンモジュール

ドローンの上下に360度モジュールスプリットレンズを挟み込みドローンの本体が写らない形で360度の撮影が可能

 

細かい仕様については公式サイトやVIDEO SALONのニュース記事をご覧になっていただくとして、実際の使い勝手や画質はどうなのというところをレビューしていきたい。今回お借りしたのはInsta360 ONE R ツイン版。デュアルレンズ360と4Kワイドアングルのカメラモジュールがセットになったエディションだ。

 

▲左からコアモジュール、360度モジュール、4K広角モジュール、手前はバッテリーベース

 

コアモジュールとバッテリーベースに各種レンズを組み合わせて使う 。 デザインは赤、黒を基調としている。どこかでみたことがあると思ったらYoutubeっぽいデザインである。YoutuberやVlogerといった層をターゲットに意識しているのであろう。 本体にマイク端子はないが、今後マイクアダプターが発売される予定だ。SDカードはV30程度のビデオスピードクラスが必要だ。試しにドローンで使っているmicroSDXC UHS-I U3カードで試したところ記録速度が遅いと警告が出た。

 

▲アクセサリー類を使用する場合は保護フレームに入れて使うことになる。アタッチメント形状は他のアクションカメラと共通なのでアクセサリー類を流用することができる。

 

▲モジュールの接合部。レンズ1枚に対してコネクターが1つ。360度モジュールにはコネクターが2つ付いている。このコネクター配置が肝で4K広角モジュールを使用の際、奥にレンズを向けて装着すると普通のアクションカメラ風に、手前にレンズを向けると自撮りモードになり配信などに使いやすくなる。

 

▲カメラを液晶側に向けて装着すると自撮りがしやすい。

 

▲自撮り棒。360度モジュールで撮影すると棒が消える。2段階に伸びる。

 

 

自撮り棒には1/4のネジ穴が付いているので三脚に固定して立てた状態で撮影もできる。バレットタイムハンドルもここに装着するとスムーズでブレないバレットタイムが撮影できる。今回はハンドルはお借りしなかったのだが、手首を使って頭の上でグルグル回したらそれなりにバレットタイムで撮影できた。360度カメラのスタビライゼーションすごい。

 

 

▲バレットタイム撮影のテスト動画

 

動画のビットレートは最大100MbpsとGoPro HERO8、DJI OSMO ACTIONと同等だ。今回は雪の銀世界の中でテストを行ったが雪面の陰影やディティールもしっかりと撮影できていた。スキー場で撮影すると黒潰れ白飛びにいつも悩まされるのだが、このカメラはどちらもしっかりと残っている。また日向から日陰に入ったり露出が変化する場面でも露出がスムーズに変更される。撮影モードにはHDRもあるが、ノーマルで撮影しても結構しっかりと色は出る。4K広角モジュールと360度モジュールの両方を使って撮影したが、360度モジュールで撮影し、16:9に切り出した映像の画質が思ったより良く驚いた。また対象を追尾してくれるフォロー撮影も便利だ。


AIによる自動編集で動画を作れる

動画データは基本的にH.265の「insv」という独自の規格で保存される。PC上で扱うにはinsta360 studioというソフトを使い編集するか、insta360 studioで他の編集ソフトで扱える形式に変換する必要がある(Adobe Premiere用にはプラグインがあるらしいが、今回は試していない)。むしろこういうカメラはスマートフォンで短いクリップを編集し、サクッとSNSにアップする方が楽しいのではないだろうか? 撮影時にカメラの設定などで使う「Insta360 ONE R」というアプリで色々な動画をサクッと作ることができる。アルバムで撮った素材をトリミングしたり色を付けたりする。AIによって、使えそうな部分を切り出したり、人を選んだりすることもできる。対象をセンターに入れてフレーミングしてくれるのはとても便利だ。次に編集ラボで素材(ストップモーションやオートタイムシフト、スターラプスなど)を作り、テンプレートページで動画を組み合わせて編集するのが主なワークフローであろう。上記の作例もスマホ内でサクッとスキー場のレストハウスで作った物だ。

 

Insta360 ONE Rアプリの編集画面

カメラとWi-Fiで接続しながら編集するのもありだが、アプリ内で一度スマートフォンにデータを取り込んでから加工した方が、カメラとの接続やバッテリーを気にせず加工できるので良い。またPCで編集する場合でもスマートフォン内でトリミングしてMP4で出力しPCに転送する方がinsta360 studioを使うよりも楽かもしれない。

 

Insta360 Goからアクションカメラに参入したInsta360だが、今回のInsta360 ONE RでGoProやDJI OSMO Actionといったアクションカメラ市場に満を持して殴り込みをかけてきただけあって色々研究がされている印象だ。今まで360度カメラはGARMIN VIRB360、GoPro FUSIONと使ってきたが、アプリを含め一番楽しく使えるカメラということは間違いない。アプリの安定感と操作性も他社製品より使いやすく感じた(ただし他社製品の最近のバージョンは使用していないのであくまでも感想)。360度モジュールで撮った動画の汎用性が高く面白い画になるので4K広角モジュールよりも使ってしまったが、さらなる高画質が必要だったりアクセサリーを活用した映像には役立つであろう。1インチ版も楽しみである。「バレットタイムやストップモーションなどカメラメーカーがこういう楽しみ方もあるよ」と画質以外の提案してくれるのもとても良い。Insta360 ONE Rは動画を作ることを楽しくするカメラだ。

 

◎Insta360 ONE Rの製品情報

https://www.insta360.com/product/insta360-oner_twin-edition

vsw