フラッシュメモリパックを利用したENGシステム、GFシリーズが来年4月に発売される。放送局向けの製品群ではあるが、その提案は個人映像制作者にとっても参考になる点は多かった。


◆東芝と池上がタッグを組んだ
 CMの送出装置などで、放送局における送出分野に強い東芝と、放送用カメラ分野で評価の高い池上が協業を発表したのは今年春のこと。その時点で、フラッシュメモリーを使った、撮影から編集までのシステムを提案していたが、このInterBEEではついに稼動する実機が展示された。会場ブースは池上と東芝が隣り合うかたちで、GFシリーズをアピールした。
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 ENGカムコーダーのGFCAM、HDS-V10は2/3インチ230万画素CCDを採用。記録媒体となるフラッシュメモリパックGFPAKは、16、32、64GBが用意される。コーデックはMPEG2-HDで LongGOPの50MbpsとIフレームオンリーの100Mbpsが採用され、32 GBに50Mbpsモードなら60分の記録が可能。GFPAKは電源が入っていない状態でも、だいたいの残量を確認できる液晶ディスプレイを搭載している。インターフェイスはシリアルATAとUSB2.0。
 スタジオレコーダーのGF STATION、GFS-V10は128GBのフラッシュメモリーボードを内蔵。GFPAKと同時に使用することで収録、再生、コピー、転送といった処理を同時に行なうことができる。9ピンコントロールも装備しているので、VTR的な使い方も可能だ。
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▲GFCAMは池上の開発。
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▲残量を確認できるGFPAK.
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▲インターフェイスはUSB2.0とシリアルATA。Final Cut Proでも編集できる。
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▲フラッシュメモリーボードを内蔵するGF STATION。東芝の開発。
◆放送局のワークフローを変えていく~テープレスが目標ではない
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 InterBEEの会場とは別にGFシリーズのセミナーを開催。セミナーでは実機の解説ではなく、東芝と池上がどういった考えで協業し、GFシリーズで何を目指しているのかという話が中心になった。現在の放送局はHD化が進んではいるが、その大半はテープベースのHDCAMであり、テープレス化はまだまだこれからという状況。テープレス化のメリットとしては、素材の上書き防止、再生時のランダムアクセス、ノンリニア編集機でのキャプチャ作業の不要、素材の効率的な管理、インターネット配信など新しいサービスへの対応がしやすい、などが挙げられるが、一方で、管理のためのメタデータの入力が面倒臭かったり、ファイルへの受け渡しが不安といった指摘や、収録したメディアの保存・管理が確立されていないという問題もある。GFシリーズではメタデータの入力という点で、携帯電話でデータを受け取り、ブルートゥースアダプターでGFCAMに転送したり、USBメモリー経由でGF STATIONで入力するなど、簡便な方法を提案。素材の管理においては、GF Media Manager(仮称)で素材を管理する方法を用意した。
 また一気にテープレス化を進めるのではなく、段階的、部分的にテープレス化をしていけるように、GFシリーズを従来のシステムに組み込んでも使えて、かつテープレスのメリットが出るものにしている。
 最終的にテープレス化の最終目標は、ファイルベースでのワークフローが確立することであり、そこまで行かないと本当のメリットは出てこないという。最終的には、1.どこに素材や情報があるか意識しない、2.欲しいときにそこにある、3.人の手を介さない(自動化)、4.シームレスなファイルベース運用、ということになる。
 個人ベースの映像制作においても参考になる部分の多いセミナーだった。要するにテープレスが目標ではなく、映像素材をファイルベースでスムーズに運用できるようになることが目標なのであって、欲しい素材が検索してすぐに使えなければ意味がない。メモリーを使ったビデオビデオカメラが家庭用からプロシューマークラスで増えてきているが、素材管理や最終の書き出しまでを見据えた導入を、ユーザーもメーカーも考える必要がありそうだ。
●過去のInterBEEレポート一覧はこちら
http://www.genkosha.com/vs/report/interbee/