レポート◉坂口正臣 (SPO 坂口写真事務所 )
広告写真やTV-CMから、プロモーション映像やドキュメンタリーなど幅広いジャンルで活動、 撮影だけではなく演出もこなす。YouTubeチャンネル SPO を運営、レンズやボディーの作例 や、その他機材レビュー動画も公開している。
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LEICA SL3-SのWEBサイトhttps://leica-camera.com/ja-JP/photography/cameras/sl/sl3-s-black
目次
■ LEICA SL3-Sの概要
■ ボディーデザインと質感
■ ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPH
■ 写真の画質
■ LUMIX S5M2XのV-logと撮り比べ
■ 動画作例と使用感
■ まとめ
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LEICA SL3-S の概要

LEICA SL3-Sは、ライカのフルサイズミラーレス SLシリーズの最新モデルであり、2020年12月に発売された SL2-Sの後継機に当たる。SL3-Sは映像にも力を入れたハイブリッドなカメラであり、写真と動画の両方を撮影するカメラマンの多様な要望に応える高機能なモデルである。
ボディーデザインと質感
まずはボディーデザインから。
ボディーデザインはMやQシリーズとは異なり、昨今のミラーレスらしいデザインだが、グリップなどの形状はシンプルでライカらしい洗練された印象。EVFやマイクなどが収まる軍艦部の形状はLUMIX S5M2と似ているが、ボタンやダイヤルのデザインはオリジナリティーを感じる。
SL3-Sはドイツのブランドらしい無骨で緻密な雰囲気がありつつ、徹底的にミニマルにデザインされていて洗練されている。軍艦部に大きめにLEICAの文字が刻印されているが、あえて主張せずボディーと同色で上品さが漂う。向かって左側には、ライカのコーポレートカラーである赤が印象的なロゴマークが際立っている。
フルメタルボディーで塊感があり、いかにも重そうだが768gと軽く、シンプルなのにホールディングの良いグリップのおかげで取り回しが良い。


主なスペック
フルサイズ裏面照射型CMOSイメージセンサー2460万画素(有効画素数)とバランスのよいセンサーを採用。画像処理エンジンはライカマエストロのバージョン4となる。
撮影時に重要な電子ビューファインダーは、高精細な576万ドットでリフレッシュレートは60fps/120fpsと速く、ファインダーの倍率は0.78(4:3)、0.76倍(3:2)と広い。 背面液晶はチルト式3.2型モニターを採用し、233万2800ドットでアスペクト比は3:2となる。
メカニカルシャッターは30分~1/8000秒、電子シャッターは60秒~1/16000秒と高速である。フラッシュ同調速度は最高で1/200秒、通常のスタジオ撮影なら困ることはないだろう。ISO感度も静止画・動画ともに100〜200000と高ISOに対応している。


写真では伝わりにくいが背面液晶は屋外でも見やすい。モニターの可動方式は、バリアングルではなくチルト式を採用している。これに関しては好みが分かれる部分だと思うが、筆者としては嬉しい。
上面のステータスモニターは大きめで視認性がよく、フォントやインジケーター類のデザイン性が高く撮影情報を把握しやすい。UIのデザインは所有感に繋がる大切な部分であり、その点においてもライカのカメラは最高峰だと感じる。

ボディー左側にはインターフェースがまとめられている。USB-C接続したSSDドライブへの映像書き込みが可能で、HDMIポートはRAWビデオ出力にも対応している。

ボディー右側は、CFexpress Type BとSD UHS-IIのカードスロットが備えられている。6K以上がデフォルトとなりつつある昨今、高速データ転送が可能なCFexpressに対応しているのはとてもよい。
ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPH

レンズ構成 15群18枚(非球面レンズ4枚)
最小絞 F22
最短撮影距離 0.3m~∞(ワイド端:24mm) / 0.45m~∞(テレ端:90mm)
最大撮影倍率 1:5(0.2倍)
最短撮影範囲/最大撮影倍率 ワイド端(24mm):約173×260mm / 1:7.2
テレ端(90mm):約92×137mm / 1:3.8 フィルターサイズ 82mm
ライカSLシリーズで最も汎用性の高いと言えるこのレンズ、筆者も以前から気になっていた。ライカの厳しい基準をクリアしつつ、画質と利便性を両立せたこのレンズは、言わば良いとこどりなレンズである。解放F値こそ固定ではないが、引き換えに大変コンパクトに仕上がっている。それだけではなく、レンズ内に光学式手ブレ補正機構 (OIS)を備えているので、ライカSL装着時にテレ側で最高3.5段分の補正効果を得られる。この恩恵は大きい。
後に紹介する作例動画を見ていただくと伝わるかと思うが、ラフなハンドヘルドでの移動ショットでも、充分な補正効果を得られた。もちろん限界はあるので、手ブレ補正の限界値を超える動きををすると、急激にティルティングやパンニングをしたような動きを見せるが、これはどのメーカーでも同様に起こり得る。
その中でもSL3-SとSL f2.8-4/24-90mmの組み合わせは、補正効果が比較的強いので、積極的にハンドヘルドでの移動ショットを使えると感じた。メタルボディの筐体は高級感を感じるだけでなく、堅牢でハードな使用にも耐える安心感がある。
写真の画質
今回のレビューで試したのは「写真と映像のスタンダード画質」「手ブレ補正」「LUMIX S5M2Xとの撮り比べ」 の3つである。
今回は敢えて全ての撮影でLeica Looksの魅力的なプロファイルを使用せず、基本的なカラーモードであるスタン ダードで撮影した。まずは写真、無加工のJPEG撮って出しを見ていただきたい。ライカということもあり暗部の色味やディテールの表現を見るためにローキーで撮影。
全体的に映える濃いブルーの色味にライカらしさを感じる。別のカメラで何度か撮影した場所だが、「こう撮りたい」とイメージしていた色やコントラストが一発で表現されていることに驚いた。ハイコントラストでありながらも暗部のディテールを絶妙に保っている。



次は逆にハイキー気味に撮影してみたが、先ほどとは打って変わって、とてもスッキリした印象に感じる。いわゆるスタンダードらしいクセのない感じである。空の明部にもブルーがしっかりと乗っている印象はあるが、とても自然である。コントラストは高いがディテールが繊細に表現されていて、線が細く緻密な印象である。この辺りはレンズの特徴もあるだろう。



LUMIX S5M2XのV-logと撮り比べ
LEICAと協業関係にあるPanasonicのカメラ、S5M2XとSL3-Sは共通点が多いのでふたつのカメラの違いが気になる方もいるだろう。
筆者がLUMIXユーザーとして気になっていたことのひとつに、LUMIX S5M2Xと動画の画質がどのように違うのか? という点があったのでテストしてみた。試用期間があまり取れなかったので、些か簡単ではあるが参考になれば幸いである。
比較方法としては、出来得る限り同じ撮影条件とし、レンズはバリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPHを使う。それぞれのメーカーのLogプロファイルを使用して撮影後、素材に共通のLEICA LUTを使ってRec709に変換した。
筆者の安直な考えでは、同一のLUTということでセンサースペックの似たカメラだからこそ、似たような結果が得られるのではないかと短絡的に思っていた。がしかし、よく考えれば画像処理プロセッサーもLogも別物なので、 同様の結果になるはずはない。とはいえ百聞は一見に如かず実際に試してみた。

左がLEICA L-log、右がPanasonic V-logである。実際に比較するとLogの状態でも大きく違う印象である。左SL3-Sはサチュレーション・コントラストともに高い。右のS5M2Xはレンジを最大限活かしLogそのもの。ホワイトバランス設定は同一の5200ケルビンだが、色温度がかなり違って見える。

LEICA LUT Naturel Rec709 を適用した結果、Logで感じた印象通りに仕上がった。この素材は6K4:2:0 10bitで撮影した素材だが、せっかくなのでC4K 4:2:2 10bitの素材で同様のテストをしてみることにした。

左がLEICA L-log、右がPanasonic V-log 4:2:2と4:2:0、通常はRGBパレードやベクトルスコープで確認しない限り、ぱっと見で大きな違いを感じることは少ないが、今回は意外にも違いが大きかった。左がSL3-Sで右がS5M2Xだが、先ほどとは逆で右のLUMIXのほうがサチュレーションが高い。ブルーの発色が明らかに変わった。データを間違えたのではないかと思い再度確認するほど、先ほどと印象が異なる。これは意外だった。

動画作例と使用感
動画作例1
SL3-Sの強力な手ブレ補正効果を試すべくハンドヘルドを多用して撮影をした。手持ちで歩きながらラフに移動撮影をした。ジンバル歩きのような振動を軽減するテクニックは使ってないにも関わらず、しっかりとブレを補正している。
このあたりはS5M2Xと同様の安心感がある。ジンバルまでは必要ないが、適度にブレを抑えたショットが欲しい場合などに自信を持って撮影ができる。
動画作例2
6Kのオープンゲートで撮影した作例。写真と同時進行で映像を撮影した。写真と同じアスペクト比で映像の撮影ができるということは、構図を考え直す必要がないのでストレスがない。 AFの挙動もチェックしてみたが、迷うことなくスムーズに合焦する。象面位相差方式に変わったこともあり、AF の精度が高いと感じた、次の機会があればポートレートでもテストしてみたい。





まとめ

今回は短い試用期間ではあったが写真と動画、両方の仕事をするカメラマンの視点でいろいろとテストをしてみた。
SL3-Sはミラーレスを使う仕事用の機材として、当然ながら充分なスペックがある。写真においては、ロケーション撮影だけでなく、ライティングが必要なスタジオワークも充分こなせるだろう。スタジオ撮影では必須とも言えるテザー撮影にも対応し、レスポンスも良いのでモデルさんを起用した撮影にも適しているだろう。
動画においてもHDMIからのRAW出力やSSDへのProRes収録に対応し、使用頻度の高い4:2:2 10bit Logのイントラフレーム収録も可能なので、ポスト処理で困る素材にはならないだろう。動画もスペック的に充分な性能を備えている。高性能が故にスペックで語られがちだが、このカメラはLEICAの製品なので、デザインや質感、UI なども最高峰のクオリティーを有する。ユーザビリティーだけではなく、最高のユーザーエクスペリエンスこそがライカの価値である。機材としてのコストパフォーマンスも大切だが、LEICAのカメラはある意味別軸である。
LEICAのカメラを使っている時の特別感に、価格相応の価値を感じることだろう。カメラとレンズの佇まいだけではなく、シャッターを切った時の精密な動作や心地よい音、スイッチやボタン類の操作感など、挙げればきりがないほど魅力のあるカメラである。SL3-Sで撮影された写真や動画に、LEICAのルックが加われば、いつもと同じ景色が今までと違って見えるだろう。