Vol.1では、露出計とは何か、露出計を使う理由やどう使っているのかについて解説した。Vol.2では、露出を測る時のコツや、撮影現場では露出計で何を確認しているのかを紹介する。

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御木茂則
1969年、東京生まれ 映画キャメラマン。撮影担当作品『希望の国』(園子温)『眼球の夢』(佐藤寿保) 照明担当作品『孤独な惑星』(筒井武文)滝を見に行く』(沖田修一) 写真展「猫は元気」(ナインギャラリー 2021) 最新の撮影担当作品は、沖縄を拠点に活動する映像作家・山城知佳子氏の新作。日本映画撮影監督協会所属。神戸芸術工科大学 非常勤講師。

 

VIDEO SALON 2021年3月より転載

 

 

S1H内蔵の露出計

パナソニックのS1Hを使う時には、スポット輝度メーターという内蔵されている露出計を使うようになりました。フレームの中の好きなポイントを、ポインターを動かすことで自由にスポットで測ることができる機能です。自分のスポット露出計と比較してみたところ、値に大きな違いはなくロケーションで天候が微妙に変わり続けるとき、スポット輝度メーターのポインターを光の変化がわかりやすいポイント、たとえば道路やビルなど面で光を受けている被写体に置き、リアルタイムで明るさの変化をチェックして、露出計をいちいち出さずとも露出の調整ができるようになりました。

最暗部や最明部を計測するのにも使用することがあります。カメラのモニターが日中見づらくて、絞り値が意図した通りになっているのかを、露出計と併用することで二重の確認ができます。

スポット輝度メーターは、カメラのカラーモードがV-logではSTOP数(EV)、他のカラーモードではIRE(%)で表示されます。ユーザー側で選択できるようにしてほしいです。

 

LUMIX S1H

▲メニューでスポット輝度メーターをONにすると入射式露出計のように使える(S5での例)。

 

V-Log時の表示

▲空の部分がカメラ側で設定した露出基準より+2STOP(×4)。

 

V-Log以外のピクチャースタイル時

▲測光した部分が輝度レベル90%

 

 

露出を測る時のコツ

下の人物の作例にはキーライト、抑え、ツヤめの光(3灯照明)が当たっています。この場合、入射と反射のどちらを使い、どこを基準に測るか。一番光の調節が難しく、大きなライトが使われているところを基準にします。背景にも当たっている人物右側からのキーライトです。最初にこのライトを計測して、考えている絞りに対してどれぐらいの光量にするかを決定します。

ベースとなる光を先に計測をして、キーライトの光量を決めていく方法もあります。ベースの光とは、例をあげると昼の外光、夜の外光、昼の室内光、夜の室内光などになります。ベースの光は調節しづらいことが多いので、ここはコントロールできるかできないかを最初に考えます。コントロールができるなら、キーライトが出されるであろう光量に合わせて調整をしますし、コントロールができないならキーライトをベースの光に合わせるように調整をします。

 

撮影現場では露出計で何を確認しているのか?

VIDEO SALON 1月号フィルムルック特集で紹介したK35のテストムービー作例の1シーンを元に解説します。

手前側のLEDライトは見た目で明るすぎない光量にします。暗部がギリギリにはしたくないので、露出計でも確認をします。4絞りと1/3暗くしています(4絞りでキーに対して1/16、つまり1/20の光量)。反射でシャツが潰れない手前であることも確認します。少し明るめにしておいて、ポスプロで絞るのもありですが、他の暗部も引きづられて暗くなります。シャツの部分にマスクを切ることに時間を取られたくないので、現場で決められることは現場で決めます。

※T値はレンズの透過率も含めたシネレンズでの表記。露出計ではF値が表示されるので、F値として換算しています。

 

ベースとなる天空の光量は、陽が沈んだ直後で刻一刻と変わっていくのに合わせて、手前のLEDライトの光量を変えていきます。

スポットで測る余裕はないので、入射計でカメラの露出は天空に対して1/8。 手前1/2にします。手前のほうは、生き物が相手で一々露出計を持っていけないので、事前にLEDライトの光量を測っておく必要があります。

※見た目でバランスが悪い場合は、光量は変えずにライトの距離を変えています

 

 

VIDEO SALON 2021年3月より転載