プロカメラマンのリアルインプレッション! ビデオ雲台・マンフロット504Xをテレビ撮影の現場に実践投入!


 

ヴァイテックイメージングから登場したマンフロットの新型ビデオ雲台504X。最大耐荷重12kgの性能はそのままに小型・軽量化した小型シネマカメラや業務用ビデオカメラ向けに作られたこの雲台を、テレビをはじめ、ENGの現場で活躍するカメラマンの宏哉さんに実際の現場で試してもらった。

写真・文●宏哉

 

三脚は映像表現の質を大きく左右する重要な機材のひとつだ。テレビでもYouTubeでも三脚に据えた安定した動画は、疲れず安心して観ていられるし、滑らかな三脚ワークは「ワーク」という意図的なものすら感じることなく、すんなりと頭に入ってくる。反対に意図しないブレブレの映像は「なぜ三脚を使わなかった?」とカメラマンの横着さが垣間見えるし、下手くそなパンやティルトには観ていて怒りすら覚えてしまう。制作者が映像で表現したいことを、ノイズなく伝えるためにも、上質なカメラワークを提供する三脚の品質は重要だと思うのだ。

 

12kgの耐荷重性能を維持しつつ、小型・軽量化を実現

さて、そんな映像作品の品質・品性を左右する三脚だが、今回は 2020年12月に発売された、ヴァイテックイメージングの新三脚 “マンフロット504X(以下、504X)”をお借りすることができたので、早速現場に持ち出して実機レビューを行なった。

まずは 504X のスペックを確認したい。504X は 504HD の後継機種として設計されたフルードビデオ雲台だ。最大12kgの耐荷重性能は維持しつつ小型化と軽量化を行い、雲台自重は2kgとなっている。カウンターバーランスは、4段階で 0、 2.2、 4.4、 6.5kg (重心高 55mm時)と設定されている。旧504HDと比べると、各段階とも軽量のほうへ振られており、ビデオカメラの軽量化やミラーレス一眼の主流化など、今の時代の動画撮影機に合わせたセットアップになっているのだと感じる。

▲カウンターバランスは4段階

雲台のパンやティルトワークの粘りを決めるドラッグは無段階可変フルードドラッグシステムを採用。無段階なのでユーザーの好みや利用シーンに応じた微妙なセッティングが可能だ。

 

▲三脚プレートは長さ14cm

▲マンフロット三脚ではお馴染みにブリッジ機構

 

カメラプレートは、スライディングクイックリリースプレートはサイドロック機構を採用し、素早いカメラの脱着を可能としている。雲台底部はフラットベースとなっており、スライダーなどへの搭載も簡単に行える。もちろん、ハーフボールアクセサリを併用することで、75mm径のボールレベラー三脚にも対応する。

 

実践投入したカメラと三脚システム

今回はヴァイテックイメージングから、カーボンツイン三脚がセットの三脚システム(MVK504XTWINGC)をお借りできたので、このシステムを持って現場に臨んだ。

 

▲カーボンツイン三脚がセットの三脚システム(MVK504XTWINGC)

 

まず、最初に持ち込んだ現場はテレビロケの現場。ディレクターとカメラマンとリポータだけという最少人数のロケで、カメラはハンドヘルドタイプの“デジ”。筆者は JVC GY-HM660をデジロケの主力で使っており、この現場でも毎回 HM660 をメインカメラとしている。HM660はソニー機で言えば HXR-NX5R クラスのサイズと重量になる。実際のロケでは、HM660 にZunowのワイコンとフラットパネルのLEDライト、さらに ソニーの2波受信ワイヤレスチューナー URX-P03D を装着している(+各バッテリー)。

 

▲3.0kg前後のハンドヘルドデジと相性が良い

 

さて三脚のセッティングだが、サイドロック機構のスライディングクイックリリースプレートは、後方引き出し式のカメラプレートと比べると素早くカメラの脱着ができる。三脚ネジは、3/8インチと1/4インチの両方のネジが使えたため、両ネジ穴を備える HM660にしっかりと固定できた。雲台のバランスの取り方だが、まずはカメラを載せた雲台の水平をボールレベラーを使ってしっかりと取る。

▲水準器はカメラマンから見やすい位置に

次に、ティルトのドラッグの重さを最も軽くし、カウンターバランスもフリーの状態にする。ただし、504Xのカウンターバランスフリー状態「0」は、カメラが勢いよく傾く可能性があるので、2.2kgのカウンターが入る「1」ぐらいにしておいたほうが安全だろう。そして、ティルトロックとカメラプレートのロックを緩めてカメラを前後に動かして、手を離してもバランスする(前後に傾かない)ポイントを探る。ポイントが見つかれば、カメラプレートをロックして、カウンターバランスの調整に入る。カメラを意図的に前後に倒して、カメラが勝手に下がらない、もしくは勝手に跳ね上がってこないカウンター値に設定する。適切なカウンターバランスが取れれば、あとはパン・ティルトのドラッグを調整して、雲台のセットアップ完了である。

▲外側がティルトブレーキダイアル、内側がティルトドラッグダイアル

ただし、504Xは4段階のカウンターバランスシステムのため、カメラ重量と重心によっては、完全にバランスするカウンター値が決められないこともある。これは 504Xに限らず、全ての段階式カウンターバランスシステムを採用する雲台で起こりうる。最終的にはドラッグの粘りを使って、ある程度の重さを加ることで未バランス分を吸収したり、カメラのオペレート重量や重心を変えてマッチングさせるなどの方法がある。

今回のロケカメラのセッティングでは、オペレーション重量自体は4kg強だと思うのだが、全体的に重心が上がっているために、504Xのカウンターバランスの最大値「3」でピッタリかギリギリか…という感じだった。ただ、カメラワークに影響するほどではなく、充分にオペレーション可能な性能を得られた。

 

斜めパンも滑らか! 接写のシチュエーションで

ロケではクローズアップレンズを併用した商品接写もあり、この場面が最も三脚の性能を試される。さて、実際の使用感だ。商品パッケージの簡単なパンアップや商品の滑らかな曲面に沿った斜めパンなどを行なったが、気持ちよくカメラマンの意図したワークができる。パンの出だしもスムーズで、雲台が静止した状態から動き出しへの変化においてもショックが出ることはない。ぬるりとパンワークへ移行できるわけだ。斜めパンも滑らかに移動でき、階段状に縦横縦横……というようなぎこちない動きは感じさせなかった。

▲商品接写のあるロケ現場

この504Xは、旧 504HDからパン、ティルト動作を向上させたとのことだが、確かにパン・ティルトの性能は良質だと感じた。脚部の剛性もしっかりしており、太くてガッシリしたカーボン脚が、三脚システム全体の捻れをしっかりと抑えている。

フィーリングとしては、全体的に柔らかく、ドラッグを最高まで重くしてもフワフワとした感じを受ける。滑らかに動いている分、抵抗を感じにくいという具合だろうか。言葉ではなかなか表現しにくいのだが、雲台がワークを率先して動かしているような感触だった。一方で、ドラッグの粘りはしっかりと発生しているようで、ドラッグを重くした状態では、かなりしっかりとハーフボールを締め付けておかないと、ボールごと雲台が動いてしまうことがあった。

雲台の動き・粘りは、メーカーやシリーズごとにも違うし、これはもう好みの問題になるので、504Xの感触の善し悪しは言えないが、このちょっとフワフワした感じを体得してしまえば、引っかかりなどを感じない軽快なカメラワークが可能になりそうだ。

 

パンロックの際に雲台がわずかに動いてしまう

気になった点と言えば、パンロックをした際に、少し雲台が左へ動くことだ。ワイド端では気にならないが、接写や望遠撮影時にテレ端で画を決めて、パンロックを掛けると画面が左へわずかに動く。真っ直ぐにティルトワークだけしたい場合などは、パン方向はロックを掛けて使ったりもするので、ロックすることで意図せず雲台が動いてしまうのは問題だ。安物の雲台だと、パン・ティルトロック共に動いてしまうことは当たり前のようにあるし納得もできるがのだが、このクラスの三脚システムにおいてロックで雲台が動いてしまうのは、ちょっと残念な点だ。

また、意図せずに動いてしまうという点では、パン方向のバックラッシュも確認してみた。バックラッシュとは「反動」「揺り戻し」のことで、三脚の場合は例えば右にパンして目的のポイントで手を離すと、雲台が自然と左へ戻ってしまう現象のことだ。これも、カメラワークを阻害する要素なので三脚の性能を見る際にはチェックする項目だ。

504Xの場合は、パンドラッグを重くしておくと、バックラッシュはほとんど発生しなかった。全くのゼロというわけではないが、気にならないレベルだろう。一方でドラッグを軽くするとバックラッシュは比較的大きめに出る。実用上は、望遠端でのワークや精密接写などではドラッグは重くするだろうから、実際的な問題にはならない点だが、雲台機構としてはバックラッシュが出やすいと認識して置いた方が良いだろう。

 

カーボンツイン三脚はレバー式ロック機構で使いやすい

また脚部に関してだが、お借りした三脚システム(MVK504XTWINGC)のカーボンツイン三脚(MVTTWINGC)は大変に使い易かった。特にワンマンの現場では、カメラを三脚に載せた状態で、ひとりで脚の上げ下げをする必要がある。脚部伸縮のロックがツマミ式で回転させるタイプだと、ツマミを回す際に苦しい体勢になることがあるのだが、MVTTWINGCは横に開閉するタイプのレバー式なので、レバーをパッパッパッと緩めて脚部を伸縮させて、パタパタパタとレバーを閉じればロックされるので、これが便利でストレスがなかった。

▲高級感が溢れるカーボン脚(MVTTWINGC)

▲脚部のロックは横レバー式で使い易い

MVTTWINGCは三段脚で2-2-1のレッグ構成。最下段の1本レッグ部分も太く力強い。あとで調べて分かったのだが、MVTTWINGCは100mmボール径対応で、75mm変換アダプター付属しているようだ。今回の504Xは、その75mm変換アダプタを介した状態で使っていた。元々100mmボール径に対応できる脚部なのだから、安定しているわけだ。また、同クラスのアルミ製ツイン三脚よりも約400g軽量ということで、この脚部はオススメだ。

 

ライブ配信の現場では他のカメラマンにも使ってもらった

別の現場では、いつも一緒に仕事をしているフリーカメラマンに504Xを使ってもらった。セミナーのライブ配信で、中会議室サイズの部屋の後方にイントレを立てて、その上にカメラマンとカメラ+三脚を載せて、前方の講師を望遠で狙う撮影スタイルだ。

三脚は、望遠時の安定性や操作性でその評価が全て決まると言っても過言では無い。揺れや捻れによる意図しない動きは脚部の性能が顕れるし、望遠で微妙なカメラワークが可能かどうかは雲台の性能がモロに出るシチュエーションだ。


▲セミナー配信での現場にて

この時のカメラのセッティングは、リターン用モニターを取り付けて、またカメラクイックシューアダプターで重心が上がっていたため、かなり調整が難しかったようだ。耐荷重的には問題ないレベルだったはずなので、クイックシューアダプターを使わず、504Xのカメラプレートに直接カメラを載せるべきだったと反省している。4段階カウンターバランスなので、今回は完全バランスには持ち込めなかったが、望遠端でのワークは安定していた。映像を見ている限りはバックラッシュなども感じられず、その点はカメラマンからの不満も出ていなかった。

一方で、彼の不満点としては「ティルトのロック状態が分かりにくい」ということだった。504Xはティルトロックに関しては大型ダイアルによるブレーキシステムを採用している。ダイアルが大きいおかげで、軽い力でしっかりとロックできるのだが、デザイン上、ロック状態かフリー状態か見た目では判別できない。ただ、何度もグルグル回してロックする作りではなく、90度回す程度でロックの開閉が行われるのでダイアル部にシールなどを貼って、ロック状態を確認できるような工夫は可能だ。

ダイアルの回転という点で言えば、504Xはティルトとパンでのドラッグ調整ダイアルの回転量が違う。ティルトのドラッグダイアルは1回転弱なのだが、パンのドラッグダイアルは2回転ほどとなってる。ドラッグの重さは、ティルト・パン共に同じ程度の重さにするのが設定の基本だ。もっと言えば、ズームレンズのリングの重さに合わせるのが先輩カメラマンからの教えだった。まぁ私はドラッグは重たいのが好きなので、その教えは速攻で無視したのだが…。閑話休題。とにかく504Xはティルトとパンでドラッグダイアルの回転量が違うので、同じ重さに合わせるにはフィーリングに頼るしかない。個人的には、パン方向の2回転は多すぎると感じる。セットアップも手間であるし、1回転で収まる範囲で調整できた方が自分にはしっくり来ると感じた。

 

ミラーレス一眼も載せてみた

今回は、最新の504X を使わせて頂いたが、雲台のフィーリングは上質でカメラワークに不安を感じさせない滑らかさを実現していた。雲台の作りや機構的にも奇をてらわず、万人が使いやすいデザインに纏まっていると思う。デジだけでなく、ミラーレス一眼カメラも載せて使ってみたが、そのスタイルでも使い易かった。特にレンズ交換可能な一眼系カメラは、レンズによって重心バランスが大きく変化する。504Xの三脚プレートは長さ14cmとやや長めで前後のスライド量は8.5cmが確保されているので、全長の短い広角レンズから、鏡筒の長い標準・望遠レンズまでしっかりと対応でき、前後バランスも取りやすい。

今は、カメラが軽量化する一方で、ミラーレス一眼のようなレンズ交換式カメラから、アクセサリー満載のハンドヘルドデジまで幅広く対応する必要がある。504Xはそうした現在の需要に即した三脚にしっかりと仕上がっていると感じた。

▲パナソニックGH5+ATOMOS SHINOBI+SmallRig のスタイルにもピッタリ

▲デジ・ワンマンロケの現場でも使いやすかった

 

●504Xの製品情報

https://www.manfrotto.com/jp-ja/504x-fluid-video-head-with-flat-base-mvh504xah/