2019年2月11日から13日の3日間、東京渋谷のNHK放送センサー正面玄関ロビーにおいて、第48回NHK番組技術展が開催された。入場は無料。今年は4K8KよりもAI活用による効率化の話題が目立った。気になった展示をレポートする。
深海8Kプロジェクト
深海用の8Kカメラシステムを海洋研究開発機構と共同で開発。小笠原沖の海底(水深1300m)で深海の生物群や熱水噴出孔(チムニー)を撮影した。専用のカメラ用カラーチャートを用意し、深海用のLED照明で深海における解像度や色再現性の検証も行なったという。カメラは日立国際電気のSK-UHD8060B、レンズはキヤノンCN7X17 KAS。この撮影は2月にNHK BS8Kで放送予定。会場ではそのダイジェストを流していたが、その映像には熱の揺らぎが8Kでリアルに捉えられていた。
4K HDRドラマ制作技術
大河ドラマの「いだてん」は4K HDRで収録され、BS4Kでは4K HDRとして放送されている。地上波ではSDRのため、最終の完パケからSDRに一括変換しているが、HDR、SDRともに美しい映像である必要がある。収録現場では4K HDRとSDRを正しくモニタリングするために、その一括変換する手法を用いて、その3D LUTをTVLogicのIS-MINI(LUT BOX)に入れ、HDRとSDRを同時に表示できるようにしているという。
4Kカメラ取り付け型光リンクと収録部集中コントローラー
ドラマ制作では4Kカメラでのマルチ収録が進んでいるが、ピント合わせのためのモニタリングとプレイバックを1箇所で操作するためのシステム。カメラはこのデモではソニーZ450になっていたが、実際にはF55のことが多いという。そのカメラの背後に光信号に変換するボックスを取り付け、4K光リンクにより、4K信号、カメラ制御、リターン、タリー、タイムコード、電源等を長距離伝送。ベースにあるコントローラーに送る。このコントローラーには各カメラのカメラリモコンが接続され、色やフォーカスなどの調整が可能。カメラ調整とプレイバックがベースの1箇所で可能になる。収録は各カメラで行う。
伸縮素材を用いたカメラ用防水カバー
これまでのカメラ用防水カバーでは、カバー内に手を入れてレンズを操作するための挿入口が必要で、台風や集中豪雨時はそこから雨水が入り込んでいた。伸縮性のある防水素材を用いて、カバーの上から直接レンズを操作できるようにした。屋外で使用する他の放送機材にも応用が可能。
クロマキーなしで背景分離して合成するシステム
色ではなく距離情報によって背景との分離を行うシステムを松江放送局が開発。スタジオ内にクロマキーセットを設置しなくてもよい。気象コーナーなどですでに活用している。
小型SDIペイロードチェッカー
アストロデザインとの共同開発。4K、8K映像は複数本の同軸ケーブルで機器を接続するが、接続ミスが起こりやすい。SDI規格には属性を示す情報が付加されているので、それを表示するチェッカーを開発。手で持てるサイズでバッテリー駆動で運用できるので、ラック裏での作業ができる。
重畳された音声も確認できる。
AIを利用したスピードガン球速表示システム
熊本放送局の開発。地方球場では球速データを配信していないことが多い。ただバックスクリーンには球速が表示されるので、それをカメラで撮影し、その数字を人工知能(AI)が読み取り、そのまま放送に利用するというシステム。必要なのは球速表示を撮影するカメラと画像を解析するPCのみ。低コストで導入できる。
バックスクリーンの球速表示を撮影
画像を解析して、球速をデータ化する。