【富士フイルムX CREATIVE CAMPイベントレポート】鈴木佑介×X-H2 8Kショートフィルム制作の現場で感じたX-H2の実力


VIDEO SALONでは、2023年1月14日(土)に東京・原宿 LIFORK HARAJUKUにて、富士フイルムPresents「X CREATIVE CAMP」を開催。同イベントでは、最大6.2K/30p(4:2:2 10bit)撮影に対応する積層型CMOSセンサーを搭載し、AF性能が大きく向上した「X-H2S」、手に取りやすい価格帯でありながら8K/30p(4:2:2 10bit)のProRes収録が可能な「X-H2」の2機種を使い、AUXOUT(オックスアウト)さんと鈴木佑介さんがそれぞれ撮り下ろした作品を通して、各機種の特長や魅力を紹介しました。ここでは鈴木佑介さんの講演の一部をレポート。

取材・文●高柳 圭

 

鈴木佑介

フリーランス19年目の映像作家/DP。「人を描く」を専門にWEB媒体を中心に広告・プロモーション映像あどをワンストップで手掛ける。執筆業の他、講師・映像コンサルタントとしても活動。最近ではスタジオポートレートを中心にスチル撮影業も始める。玄光社より「映像制作モダンベーシック教本」絶賛発売中。ブラックマジックデザイン認定DaVinci Resolve18トレーナー。RODE/NANLITE日本公式アンバサダー。

 

X-H2で鈴木佑介さんが撮り下ろした8Kショートフィルム作品『Detail in Life』

 

X-H2の製品情報を見る

 

富士フイルムの一番の魅力はルックの良さ

今回は「X-H2で作る8Kショートフィルム」をテーマに、実際にX-H2で作品を撮ってみて私が感じたことと、8Kでの撮影と編集の心得をお話したいと思います。まず、私が思う富士フイルムのカメラの一番の魅力は、ルックが良いという点です。

フィルムシミュレーションで撮って出しでもとてもキレイで、特に写真であれば簡単に様々な表現ができるので、クライアントワークにおいても後から問題が出るリスクが少ないと思います。例えば、肌のレタッチを自動で行ってくれるスムーススキンエフェクトは便利な機能です。カメラを使っている人は、最終的にルックの良いものを表現したいのだけど、その基準が分からないままRAWで撮って、自分でああだこうだやってうまくいかなくなるのなら、カメラのエフェクト機能を使うのが近道になるはずです。

 


X-H2で静止画撮影した作例(上2点はJPEG撮って出し、下はRAW撮影)。富士フイルムの豊富なフィルムシミュレーションは、ビギナーにとってもルックづくりの心強い味方となる。

 

X-H2の製品情報を見る

 

X-H2は25万円ほどの価格で8K/30p ProRes422 HQ収録が可能

では改めて、X-H2の魅力を挙げてみましょう。まずは何と言っても4000万画素のAPS-Cセンサーによって、写真と映像の両方で高画質な画を撮れる点。そして、8K/30pのProRes422 HQ 収録が可能な点です。8Kオーバーサンプリング 4KHQ撮影もできますが、今回は8Kに絞ってお話をしたいと思っています。この他、ProRes RAW / Blackmagic RAWに対応し、またボディ内手ブレ補正など諸々の性能を含め、フルサイズと遜色のない画質の8K映像が撮れるカメラが、25万円程度で手に入るということが一番の魅力と言えるかもしれません。

では、8Kの有用性は何かというと、まずは圧倒的に美しい動画コンテンツの制作ができること。そして、クライアントから要望されるような「動画から静止画を切り出す」ことができる画質であること。また、4K/HDコンテンツ制作においてもトリムの余白があるので、後から寄った画に編集ができるという点が挙げられます。

 



X-H2を使用し8Kで撮影した映像から切り出した静止画(クリックすると原寸大画像を見られます)。

 

X-H2の製品情報を見る

 

8K映像は肉眼で見る情報量に近い印象の画が撮れる

実際にヒキ画と寄りの画を撮っていて感じたのが、人の眼の感覚に近いヒキ画で、色んな情報を説明できて、人が自然に見つめるように映像を見ていられるということでした。そこで感じたことをきっかけに、X-H2の8Kのショートフィルムを撮ってみようとなったのが今回の「Detail in Life」という作品です。

この作品の制作においては、とにかくX-H2の性能を活かすことをテーマにしています。まずは、8K ProRes422 HQ内部収録で、前述の通りヨリ画は極力なくし、全編FIXで撮ること。8Kの撮影時はローリングシャッターが弱点でもあるため、その方がより良く撮れるという計算もありました。また、作品のテーマでもあるディテールを表現することにこだわり、登場人物の覗き込むような仕草や、モノの細かな見え方を大切にしながら撮影しています。その他、小型の機材であることやFIXで撮れることを考慮して、少数のスタッフでカメラは自分で回さないことにもこだわりました。

一方で、ProRes RAW / Blackmagic RAWは今回使用していません。その理由は、制作時点で私が使用しているRaw Converter がX-H2のProRes RAWに未対応であったことと、Blackmagic RAWではいじれるパラメーターが露出、色温度、ティントのみで微妙であったためです。

 

X-H2の製品情報を見る

 

撮影で使用したX-H2のリグ構成と使用レンズ

機材に関しては、できるだけコンパクトにすることを重視しています。個人的にリグやケージが美しくないので嫌いで、また撮影場所への移動がある時には、車の振動でネジやビスが緩むので、あまり使いたくないと思っています…。とは言え今回は使用する必要があったので、極力スリムになるようまとめています。

 

今回の撮影で使用したカメラのセットアップ。

X-H2にSmallrigのケージとTILTAのミラージュ、そして念のために冷却ファンを付けています。バッテリーは、カメラからダミーバッテリーにD-TAPでVバッテリーにつなぎ、このVバッテリーでモニターレコーダーのNINJA V+にも給電しています。そこからトランスミッターに接続してワイヤレスでSUMO19のモニターに映像を表示。マイクで拾った音も同じくトランスミッターを通じてSUMO19に反映されるという組み合わせでした。

機材の面でもうひとつポイントだったのが、NDフィルターを使っていないことです。先程も言った通り、8Kは人の眼に近づいてきているので、シャッタースピードをコントロールしようとすると何だか汚い印象で、速いシャッタースピードでそのまま撮る方が自然な見え方だと思いました。

撮影を通してレンズは5本ほどを使い分けたのですが、古いレンズを使った時にAFが少し変に作動してしまうことがありました。制作時はスタビライザー処理でごまかしましたが、完璧を求めるならば、新しい設計のレンズを使ったり、マニュアルフォーカスを使い分けるのが良いと思います。

 

撮影では上記の5本のレンズを使用した。

 

X-H2の製品情報を見る

 

F-Log2で撮影。映画フィルムを再現したETERNAのLUTをアレンジしてベースのルックを作った

カラーグレーディングでは、映画のフィルムを再現したETERNA(エテルナ)を使い、今回撮影したF-Log2用のLUTでベースのルックをつくりました。ETERNAは、彩度が抑えめで、ハイライトやシャドウが潰れすぎないカーブ、諧調表現が豊かな点が特長です。

 

F-LogとF-Log2の中間からハイライトにかけてのカーブや、適正ISOの比較。

 

ETERNAのLUTを自分の求めるパラメータにアレンジしたものをベースに制作していけば、シーンごとにイメージのズレが少なく、手数が少なくなるのもポイントです。また、撮影時にそのLUTを当ててNINJA V+やSUMO19でモニタリングすれば、現場で完成に近いものを見ることができます。

 

アレンジしたLUTがあることで、シーンごとにまとめてカラーグレーディングすることが容易になる。

 

X-H2の製品情報を見る

 

Mac Pro2019、M1MaxのMacBook Proで8Kのネイティブでも問題なく編集できた

また、ProRes 422HQ 8Kデータをそのままのシーケンス設定で編集してみましたが、私の編集環境であるMac Pro2019、外付けのSSD(1000MB/s)ではストレスなく作業できました。ちなみに、M1MaxのMacBook Pro 14(2021)の全部載せモデルでも、過度なカラーグレーディング(特にデノイズ)をしなければネイティブで動いたので、8K素材の確認や編集は問題ないと言えると思います。

 

8K素材のネイティブ編集のための環境づくりは比較的ハードルが低い。

 

X-H2は新しい表現への一歩を踏み出す人にはぴったりなカメラ

ここで改めて、8K映像がもたらすものは何か考えたいと思います。まずは、人の眼の見え方に近づいたことで、従来のヨリ、ヒキといった表現がなくなり、新しい表現手法が生まれ可能性があるということ。圧倒的な美しさや写真的な画づくり、フレーム内の作り込み、視覚的な仕掛けの必要性、演者への積極的な演出などもより問われるようになるでしょう。そして、そのためには元来の映画・映像作りへの理解、演劇的視覚誘導の理解、写真的ビジュアルランゲージの理解、明確な創作理念などが必要になる。つまり映像制作で“食っていく”には、たくさんの勉強が必要になるということです。

一方で、X-H2は、その新しい表現への一歩を踏み出す人にぴったりなカメラと言えます。美しい画を追求したい人や映像制作のビギナー、現状のカメラに飽きた人が、映像づくりを純粋に楽しみを感じながら「エモい自己満足」のさらに先にある表現にチャレンジしていけることを願っています。

 

X-H2の製品情報を見る

 

●AUXOUTさんのイベントレポート記事はこちら

https://videosalon.jp/report/x-creative-camp-auxout/

 

 

 

vsw