REPORT◉iPhoneographer 山﨑拓実

iPhoneographerの山﨑です。本誌VIDEO SALONでもウェビナーにて紹介していただきました。iPhoneをメインカメラとして使用するビデオグラファーです。もちろん、iPhoneを裸のままで使うのではなく、NDフィルターやワイヤレスマイクを接続したりと、周辺機材でかなり強化した状態で使っています。

さて、今回は2023年9月に発売されたiPhone 15 Pro Maxを、SamsungポータブルSSD T7 Shieldに繋げ、実際に撮影現場で使用してきました。
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・iPhone 15 Pro Maxのムービー機能の凄さ
・Samsung ポータブルSSD T7 Shiedとは
・T7 Shieldの固定方法
・T7 Shieldにコマ落ち無しに長回しで収録できるか?
・T7 Shieldを外付けSSDとして使用するメリットって?

以上5項目でお送りしたいと思います。

iPhone 15 Pro Maxのムービー機能の凄さ

iPhoneを映像制作のメインカメラとして3年近く使用してきた筆者ですが、端的に言ってiPhone 15 Proシリーズの映像は凄いです。なかでもApple Logの存在はかなりのブレイクスルー。

映像業界ではお馴染みのLogというモードで撮れるようになったiPhone 15 Proシリーズですが、実はそれよりも前のiPhoneでもFiLMic Proなどを始めとしたサードパーティーアプリを使えば、Logで撮影ができました。

でも、今までのサードパーティーアプリのLogとApple Logで決定的に違うのは「純正」であるということ。これがどういうことか。

今までのサードパーティーアプリにおいて、ISOやシャッタースピードなどを固定することはできたのですが、それでもアプリ側がiPhoneのカメラを完全にオーバーライドすることはできませんでした。なので、アプリ上では露出が固定されているものの、例えば光源から暗いところにカメラをパンした時に画面の明るさが変わるなんてことが日常茶飯事でした(この明るさが変わる機能はダイナミックトーンマッピングといいます)。この問題はNetflixで「High Flying Bird」を監督、iPhoneで撮影したスティーブン・ソダーバーグ氏も指摘しています。

しかし、Apple Log White Paperによると今回のiPhone 15 Pro Maxでやっとこのダイナミックトーンマッピングを、Apple Logによってバイパスできるようになったみたいなんです。よってiPhone 15 Proシリーズで撮影された映像は画面の明るさが勝手に変わることがなくなったので、よりシネマカメラに近いものとなりいました。

また、iPhoneの映像に付き物だった、物体のエッジが不自然に鋭くなってしまう問題(輪郭強調)、こちらもApple LogによってOFFになり解決されるようになったようです。恐るべしApple Log。

しかしこのApple LogはProResでの撮影が基本になるのですが、何にせよ容量が重い。もちろん、ポストでのカラーグレーディングなどをする際には大いに役立つのですが、1TBのiPhoneを持っていたとしても、サードパーティーアプリのBlackmagic CameraではProRes 422 HQでは約3時間(4K/24fps)しか撮影できません(容量の軽いH.265なら約50時間収録できるところ)。H.264やH.265では、ポストでカラーグレーディングをするとなると色があまり調節できず不安です。

そこで登場するのがSSDです。ご存知の通り、iPhone 15シリーズからUSB-Cが採用されたことにより、 USB-C to USB-Cケーブルによるデータ転送が可能になりました。

よってiPhoneをSSDに接続し、直接SSDに大量の撮影データを流し込めます。ということで今回は実際に撮影現場で試してみました。

Samsung ポータブルSSD  T7 Shield

今回使用したのはサムスンのポータブルSSD T7 Shield 2TB(以下、T7 Shield)。T7 Shieldはシネマカメラでの実績もあり、信頼性に関してはSSD界ではトップクラスです。カメラとの組み合わせでの動作検証もメーカーが行なって公表しています(互換性表はこちら)。

T7 Shieldは外側を耐衝撃性に優れたエラストマーで覆うことにより、3メートルの落下にも耐えうる耐久性も備えており、撮影現場に持ち出す用途には最適です。

T7 Shieldの固定方法

実際にiPhone 15 Pro Maxに装着をしてみるとこんな感じ。リグはスマホリグ界では老舗であるBeastgripのBeastgrip Pro、その上に同メーカーのコールドシューを装着し、SmallRigのSSD汎用ホルダーを装着しています。

また、NDフィルターであるNiSiのTrue Color Varioを装着するために、これまたスマホパーツ界では大御所のMomentの67mmフィルターマウントを装着しています。

右からNiSiの67mm True Color Vario、Moment 67mm スナップオンフィルターアダプター for iPhone 15 Pro & Pro Max、Beastgrip Pro(の半分)、リグの上のコールドシューにRODE Wireless PRO(送信機のみ)、SmallRig SSD汎用ホルダー、その上に今回の主役、T7 Shieldと付属ケーブル(ケーブル抜けを防ぐためにクランプで固定している)。

SSDが接続されている側はこんな感じ

これを見てよく言われるのが「それなんですか?」です。


SmallRigの簡易的なスマホ用のリグを利用してこういったスタイルで撮影することも。

T7 Shieldにコマ落ちなしに長回しで収録できるか?

結論から言いますね。できました。

まずはBlackmagic Cameraアプリ上でProRes 422 HQ 4K/60fpsという最大容量モードでどこまで撮影できるか実験してみました。

▲コーデックはApple ProRes 422 HQ、解像度は4Kを選択。

▲T7 Shieldはすっからかん、4K/60fpsで数値上では2時間29分録画できるという状態。これから2時間以上、白い画面を撮影する。

▲iPhoneの長時間録画だと熱暴走とバッテリー消費が不安なので、TILTAのKhronos(クロノス)というリグを使用して撮影した。USB-C給電をしながら、「冷却」、「Magsafe充電」、「SSDデータ転送」を同時にしている状態。

▲2時間38分後、収録が止まった。不明なエラーと出ているが、ここではSSDの容量がなくなったということ。見事最後まで収録することができた。

▲映像データを確認するとデータ容量は1.99TB、データレートは1.68Gビット/秒となっている。

SSDの信頼性テストとしては成功です!

インタビュー撮影で使ってみた

この実験を踏まえつつ、いざ、現場に行ってみました。

今回の撮影現場はインタビュー撮影ということで、特にリハーサルもなくぶっつけ本番という現場でした。なのでカメラを一度回し始めたら、どこで切るかが分からないという状況でした。そんな中、今回はBlackmagic CameraでProRes 442 LT、4K、24fpsという設定で撮影をしました。これはわたしが普段から使用しているモードになります。

まず、T7 ShieldとBlackmagic Cameraを繋げましょう。

Blackmagic Cameraの「設定」から「メディア」を選択し、「クリップの保存先」を選択します。

「ファイル」を選択し、

任意のSSDを選択します。ここではT7 Shieldですね。

右上の「開く」を押したら、

Blackmagic Cameraに戻り、「ファイル」のところがT7 Shieldになっているはずです。これで完了。収録映像はT7 Shieldに入ります。

Blackmagic Cameraにはコマ落ちが発生した際に「警告」もしくは「収録の停止」をしてくれる機能があるんですが、ひとつのクリップで8分長回しした際にも特に問題なく、スムーズにSSDにデータを移行してくれました。

Blackmagic Cameraのコマ落ち発生時の設定画面。「設定」→「収録」→「コマ落ち発生時の対処方法」から

「警告」、「収録の停止」のどちらかを選択することができます。

T7 Shieldを外付けSSDとして使用するメリットって?

ということで、T7 ShieldをiPhone 15 Pro Maxに付けて現場に持っていきましたが、信頼性がモノをいうSSDの世界の中、特に問題もなく収録できました。

エラストマーによってSSD本体が保護されているので、アクションカムのような使い方をされることが多いiPhoneにうってつけです。

わたしのiPhone 15 Pro Maxはストレージは1TBにしているのですが、それでも内部収録しているとあっという間にいっぱいになってしまいます。インタビューなどでは回しっぱなしにすることも多く、容量を気にしながらということになります。外付けの2TBであれば容量の心配はなくなります。しかも、記録したSSDをPCに繋いですぐに編集を始めることができます。

さらにメリットがあるとしたら外部収録により熱暴走で止まる危険性が減るということでしょうか。iPhone 15 Pro Maxではないのですが、夏の屋外での収録で、ディスプレイの視認性を上げるために輝度を上げてインタビュー収録をしていたときに、熱暴走なのか止まってしまうということが起きました。データは存在していたのですが、そこから収録ができなくなってしまいました。今回は季節柄、検証することはできませんでしたが、外部記録にすることにより、熱停止の心配も減るはずです。

また、追加検証として、4K/24fps、ProRes 422 HQで、内部収録と外部SSD収録でデータを確認してみました。

iPhone本体に収録するより、SSDに収録をするほうがビットレートが高く、高品質な映像を手に入れることができるという結果でした。

ちなみに両方ともコマ落ちの警告は出ていません。

こちらが内部収録の映像の情報。データレートは206.59Mbpsとなっている。

そしてこちらはSSD収録の映像の情報。データレートは276.29Mbpsとこちらのほうが高くなっている。

※映像はiPhoneカメラにカバーをかけ、真っ黒な映像を収録

ここまで検証してきたとおり、T7 Shieldは信頼性が高く、iPhone 15 ProシリーズにうってつけのSSDとなっています。iPhone 15 Proシリーズをお持ちの方は、ぜひ、使ってみてはいかかでしょうか? 実際にわたしもテスト期間中に、T7 Shieldを購入してしまいました。

最後に

手前味噌ですが、T7 Shieldを使用して自主制作映画のテスト撮影をした際のスチルを載せておきます。iPhone 12 miniのFilmic Logから撮影をしてきた自分ですが、ポケットに入るカメラでここまで撮影できるようになったのは本当に凄い時代になったと思います。これを読んでくださっている皆さん、良きiPhoneographyライフを!


Image:Takumi Yamazaki
Shot on iPhone 15 Pro Max with Blackmagic Camera ProRes 422
Model: Cailee Oliver

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