FacebookやInstagramなどSNSでの動画の発信力に注目が集まっている。
効果的な動画を生み出せるクリエイターは引く手数多だ。
これまでウェディングムービーをメインにしてきた前田比都美さん。
今年の秋からはDIYのWebマガジンの動画制作にも関わるようになった。
そのための制作ツールは、ウェディングムービーでも愛用しているソニーα。
そして、現場にも持ち込むのはマイクロソフトSurface Book。
実際のウェブムービー制作のノウハウをお訊きした。

ウェブやSNSに動画は不可欠なものになった

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これまでウェディングムービーのジャンルでデジタル一眼の表現力を生かしたエンドロール映像やショートムービーを手がけてきた前田さん。
最近は、ウェディングにとどまらず活動の場を広げている。たとえば、雑誌を出している出版社のウェブサイトではメイクやヘアアレンジのハウツームービー、化粧品などのPR動画などビューティー系の動画制作の仕事を依頼されることが多くなったという。
雑誌も今までは表現が紙媒体だけだったのが、ウェブサイト上で動画で情報を発信するようになってきている。前田さんの活躍の場は着実に増え、今ではウェディングと、そういったウェブムービーの仕事が半々くらいになってきた。

「ちょっと前までは、私も結婚式の動画で生き残っていかなければという思いが強かったのですが、今はそれよりも幅広い分野で動画が必要とされているのを感じています」
そういった動画を加速させているのが、FacebookやInstagramなどSNSの存在だ。動画だと短い時間で簡単に伝わるので、みんなが飛びつきやすく、そして広がりやすい。その動画の情報発信力に目をつけて、さらに効果的で印象的な動画を作ろうという機運が盛り上がってきているのだ。前述の出版社の例もそうだが、これまで動画を作ってこなかったところが、動画を利用し始めている。

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「私自身、自分のやりたいことは、動画の表現力、拡散力を利用して可能性が広げられるように思います」
SNSを絡めたウェブムービーの世界は、従来の映像とは違う、新しいメディアなのかもしれない。制作スイタル自体も、従来のテレビや映画や企業VPなどの作り方とは違い、小規模なスタッフワークであり、より個人のクリエイターの力に負うところも大きくなる。
前田さん自身、ウェディングの仕事は土日、その他のウェブムービーは平日、ということで、休む暇もなくなっている。

最近導入したのがSurface Book

そんな多忙を極める前田さんが最近導入したのがマイクロソフトのSurface Bookだ。これまではウェディングのエンドロールも自宅での編集もウィンドウズのノートパソコン一台で済ませていた。そろそろ4Kやカラーグレーディングにも取り組みたいと思っていたが、そのノートパソコンでアドビ系のソフトを使おうとすると動きが重くてまったく実用的ではなかったという。
また、エンドロールではバックアップ用に他のスタッフとも合わせて複数台のPCを用意する必要もあることから、編集ソフトはEDIUSで統一していた。
デスクトップPCを導入するしかないかと思っていたところ、Surface Bookに出会った。

Surface Bookは十分にCPUパワーがあり、しかもグラフィックはGPUに依存するPremiere Proにとってキーボード部に内蔵されたGPUの性能を活かせるのもポイント。これでようやく念願のPremiereを扱えるようになった。
現在もPremiereの操作を勉強しながら、徐々に慣れてきたところである。メインの編集もすべてこのSurface Bookで行なっているという前田さん。
メインマシンとなると動画編集ではストレージが足りないという問題も起きてくるが、Surface Book は最大 1TBのSSDを選択できる。それでも容量が足りなくなるような場合は、高速にデータ転送できるUSB3.0接続の外付けSSDを接続すれば万全だ。
これだけ動くのであれば、まだデスクトップの導入は先延ばしできそうだ。

DIYマガジンのムービー制作の現場

DIYマガジンのムービーを作るようになったきっかけは、ウェディングだったそうだ。
結婚式を撮った新郎新婦がリノベーションの仕事をしていて、そのつながりからリノベーションの楽しさを体感するプロジェクトの動画を撮影したら、今度はそこでリノベーションの楽しさを味わった人がDIYのサイトを立ち上げ、DIYのハウツームービーを依頼された。
DIYマガジンの立ち上げにあたって、メインコンテンツとして動画を必ず入れたいということで前田さんに相談が来た。ディレクターからは、1分で作り方がわかるDIYのハウツー動画をつくりたいと言われ、企画段階から参加したという。
インテリア関係のDIYハウツー動画で、見ていると作りたくなるような動画を1か月2本というペースでスタートしている。2017年からは1か月3本というペースを予定。動画の尺はInstagramにアップすることを想定して1分である。
撮影スタイルとしては、事前に打ち合わせをして必要な撮影関連の準備をして臨むが、脚立を持ったりして手伝ってくれるスタッフはいるものの、撮影自体は一人。
カメラはウェディングでも使用しているソニーα7S II。レンズの選択はウェディングのときとは異なり、Planar T* FE 50mm F1.4 ZA、ワイドズームのE 10-18mm F4 OSSをメインで使用している。

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α7S IIは4K撮影もできるカメラだが、今回の動画はSNSで簡単に見られることがメインなので、HD撮影にしている。特徴的なのは、SNSはスマホで見られることが多いので、ムービー自体を完全な正方形に仕上げていること。もちろんカメラには正方形で最初から撮るモードはないので、撮影現場ではカメラの液晶モニターにグリッドラインを表示して、その線を参考に黒いテープを貼って、撮影した(メイキングムービー参照)。

現場で色を作っていく

撮った映像はSDカードをSurface Bookのカードスロットに入れて、再生して確認する。Surface Bookは高速のSDカードスロット(UHS-II)なので、高速転送できるし、直接カードから素材を読み込む場合も快適なので、編集ソフト上で簡単につないでいくこともしている。実はそれだけでなく、現場でカラーグレーディングをして、色を作っていったという。
「もともとディレクターがこんな調子にしたいといってきた写真があって、それに近づけていくために、まず撮影はLog(S-Log3)で行いました」
Logとは後処理前提のネガフィルムのようなモード。デジタルシネマの世界では、通常は完全に撮影を終えた後に編集段階で色を作っていくのだが、撮影現場でディレクターと打ち合わせして、先に色を決めたと言うのである。そういった使い方をする場合、Surface Bookは現場に必須だと前田さんは言う。

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使い方としては以下の手順になる。

①α7SIIで、S-Log3で撮る


②撮影したカードをSurface BookのSDカードスロットに入れて、Adobe Premiere Pro CCでクリップを読み込む。

③Adobe Premiere Pro CCのカラー調整機能、Lumetriのパネルを開いて、調整をしていく。
ベースのルックを決めて、そこからパラメータをいじって、色を調整していくのだが、このときモニターで実際の映像を見ながら、ディレクターと打ち合わせをして最終の色を決める。


▲Adobe Premiere Pro CCのLumetriパネル。

④調整した内容は「ビデオエフェクト」パネルの「Lumetriカラー」に反映されているので、それをプリセットとして名前をつけ(たとえばDIY Magとし)保存する。

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⑤すべての撮影カットにその色補正のプリセットを適用すれば良い。1回のムービーでは撮影場所は変わらないので、同じプリセットを全カットに使用する。

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▲プリセットに登録して、それを全カットに適用する。

このとき色を決めるにあたって、単にパワフルなノートPCであれば良いというだけではなく、Surface Bookがいいのだと言う。
というのも、ノートPCの液晶モニターはそれぞれ発色が異なる。前田さんは自宅に戻って編集する場合、信頼できるEIZOのモニターに接続して色を確認しているのだが、以前使っていたノートPCは液晶モニターとEIZOのモニターの色味が全然違っていたために、苦労した経験があると言う。こうなるとノートPCだけで色を調整していくのは難しい。
ところがSurface Bookではそれがほとんど変わらないのだという。sRGBの色域に対応しており色再現性が高いのもSurface Book が使える理由の一つだ。
つまり、Surface Bookの液晶モニターを信頼して、現場で色を決めていっても問題ないということになる。

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もちろん現場で粗編集していくこともできるが、本編集は後でじっくり作業する。
手順のムービーなので一見簡単そうに思えるが、1分の尺できちんと効果的に、そして魅力的に見せるには編集でも綿密な計算が必要になる。視聴者に退屈に思われないように、微妙にスピードをコントロールする。
最終的にできあがった正方形のムービーは、Instagram、Facebook、そしてYouTubeにアップして、ウェブページに埋め込まれる。そのなかではFacebookでの動画再生回数が多く、反応も良いそうだ。動画を効果的に活用できていることになる。
● 動画を積極的に活用しているDIYMagのウェブページ

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● Facebookの動画ページををスマホで見ると、上下にテキスト情報が入り、正方形のムービーがちょうどいいサイズになる
https://www.facebook.com/HomesDIYMag/

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その制作過程を見てみると、これまでのクリエイティブな映像作品にありがちな大規模な制作スタイルではなく、個人のクリエイターのフットワークの良さとセンスに寄っていることがわかる。 そしてその現場で使われているのは、αのようなデジタル一眼ムービーカメラであり、Surface Bookのような、プレビュー、編集、カラーグレーディングを一台で済ませられるような高機能なツールだ。ビデオグラファーのワークフローが今、できあがりつつある。

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前田比都美 まえだひとみ
PROFILE
株式会社オンス カメラマン・ディレクター・エディター。1984年生まれ、大学卒業後映像制作会社に就職し、テレビ朝日「いきなり!黄金伝説。」のADとして3年間勤務。その後アルバイトをきっかけに結婚式のエンドロールと出会い株式会社エトロフワークス(現株式会社オンス)で一眼ムービーの撮影編集を学ぶ。2014年より女性ブライダルカメラマンの交流や技術向上を目的としたARONAを発足。女性対象のワークショップやセミナーを開催。”AneCan”や”Oggi”などのバックステージ動画や企業PVなど幅広い分野の映像を制作している。
http://www.ounce.jp/
Surface Book
・サイズ:約232.1 mm x 312.3 mm x 22.8.0 mm(最薄部 13.0mm)
・重量:約1,579kg (外部GPU搭載モデル)
・CPU:第 6 世代 Intel® Core™ i5/i7
・記憶域:128GB/256GB/512GB/1TB
・メモリ:8GB/16GB
・ディスプレイ:3000 x 2000 (267PPI) 13.5インチ PixelSense™ ディスプレイ
・バッテリー駆動:動画再生最大約12時間
・参考価格(税別):¥185,800~
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