360度カメラ・Insta360 ProとInsta360 Pro 2使い比べて進化点と違いを探る(後編)


中国深センのVRカメラメーカーであるArashi Visionから発売されているプロ向け360度VRカメラ・Insta360 Pro。2017年春にリリースされ、従来まで複数台のカメラでリグを組み、撮影したVR映像が1台のカメラで撮影できるということで話題を呼んだ。その上位モデルとして登場したのが、2018年8月に登場したInsta360 Pro2。前編では主に製品の進化点や画質、手ブレ補正について検証を行なった。後編となる今回はこのモデルから採用された新機能であるi-Log、動画HDR、スマホで8K動画を見られるCrystalViewテクノロジー、遠隔操作のFarSightなど魅力的な機能を中心に紹介する。

レポート●西條結城

 

〇ISO感度ノイズが大幅に改善?

Insta360 Pro2の新センサーはダイナミックレンジ等の性能が向上しました。センサーサイズも同じようなので本当かな?と疑いながら検証しました。Insta360 ProはISOを上げると高感度ノイズが急激に増えます。ISO6400ではノイズが縞模様に見えるほど酷いです。ISO3200やISO6400は使い物になりません。まずはISO感度を比較します。撮影モードはマニュアルでシャッター1/30秒、ホワイトバランス5000Kで撮影しました。ISO感度ごとの比較動画を確認ください。

 

・「Insta360 Pro」と「Insta360 Pro2」比較動画01

 

Insta360 Pro2は明らかにISO感度のノイズが減っています。2段ぐらい高感度ノイズが少ないです。Insta360 Pro2はISO感度を上げる(上げられる)という選択肢が増えました。ISO1600でも使える印象です。性能が確かに向上しています。各ISO感度のノイズをもっとチェックしたい人は、以下のそれぞれの動画をご確認ください。

 

・Insta360 Pro、ISO100~6400比較動画

 

・Insta360 Pro2、ISO100~6400比較動画

 

〇動画のHDR機能って何だろう?

HDR(ハイダイナミックレンジ)は複雑です。著者も認識があやふや。スチールの場合は露出が異なる複数枚の映像を合成するHDRですが、RAWから疑似的にHDRしたり、映像をなんちゃってHDR風(HDRではない)も混在しています。動画の場合はさらに複雑です。HDRといってもさまざまで、Rec.2020に対応したカメラやモニターなのか、他のデータをRec.2020に変えたものなのか、露出のことなる動画を合成したものなのか良くわからず複雑です。Rec.2020という色域で撮影できるHLG(ハイブリッドログガンマ)対応等のカメラによるHDR撮影があります。Rec.2020(BT.2100)に対応したモニターがHDRモニターです。そのままの生データであるRAWで動画を撮影していれば、Rec.2020のHDR規格にも変換できます。シネマカメラREDではフレームごとに露出を変えて同時に記録するHDR×合成もあります。幅広いダイナミックレンジを持つLogガンマで撮影していればHDRと同等と考える人もいるでしょう。

 

Insta360 Pro2のHDRは何だろうと調べたところ、代理店であるハコスコのWebサイトに「DOL-HDR」の表記がありました。DOL (Digital Overlap) 方式とは、センサーのピクセルごとに明暗に合わせて露光時間を変える技術のようです。小型カメラの多くはソニーのセンサーを使用していますのでそういうことなのでしょう。

 

●参考資料(出典:尚立株式会社)

https://www.sunnic.com/japanese/05_news/02_detail.php?NID=90

 

2018年12月末の検証時点では、Insta360 Pro2のHDRはベータ機能でした。アプリからHDR機能をオンにして、ビデオ設定に入るとHDRを選択できます。最新のファームウェアでは正式な機能になっているかもしれません。HDRモードでは、スタビライズ機能が使えなかったり、特定の解像度のみで動作するなど制限が増えます。残念ながらまだまだ試験的な性能です。明るかったり暗かったりすると効果がありません。むしろ逆効果です。夕暮れ時など特定の条件に限り効果があるようです。これはDOLという技術的な特性なのかもしれません。ファームウェア等により大幅に改善されることに期待です。現時点の結論としては、i-Logで撮影したほうが良いでしょう。

 

・Insta360 Pro2 ノーマル、i-Log、動画HDRモードの比較動画

 

 

〇 i-Log を好きになれるか?

 

著者はソニーα7R Ⅲユーザーであり I Love S-Log です。Insta360 Pro2の i-Log を好きになれるか検証します。撮影モードはマニュアルでISO100、シャッター1/30秒、ホワイトバランス5000Kで撮影しました。Logは性能を最大限に引き出す撮影時の設定が重要であったり、カラーコレクションやグレーディングの技術力によるところも大きいです。ファームウェア等により大きく性能が変わる可能性もあります。使い込まないと本当の判断は難しいことに注意です。前モデルのInsta360 ProにはLogの撮影モードは搭載されておらず(Flat-Colorという機能は搭載)、Insta360 Pro2からLog撮影機能が搭載されました。それぞれの違いについては下の動画をご覧ください。いずれのモードでもInsta360 Pro2のほうが情報量が多く、明暗の差が大きな場合でもi-Logならハイライトもシャドウも残っています。

 

〇Insta360 ProのFlat-Colorと Insta360 Pro2のi-Logの比較動画

 

著者のなんちゃってカラーコレクションも試しました。Insta360 ProのFlat-colorも意外と使いやすい印象ですが、露出が少しオーバー気味に処理されるためかハイライト部分がうまく戻りませんでした。彩度を上げて行くとホッチキスの赤色も違和感があります。Insta360 Pro2のi-Logはハイライト部分も情報があり、ホッチキスの赤色も濃く再現できました。Flat-colorからi-Logに表記が変わったように、たしかにLogへの進化を感じます。Insta360 Pro2なら「とりあえずLogで撮影」もありかもしれません。好きになれそうなLogです。※あくまでも8bitのLogとして。

 

〇Insta360 Proと Insta360 Pro2カラーコレクションの比較

 

 

各モードによるスコープの変化を見たい方は、以下のそれぞれのキャプチャーをご確認ください。

 

▲Insta360 Pro nomalスコープ(明るい環境)

 

▲Insta360 Pro flatスコープ(明るい環境)

 

▲Insta360 Pro nomalスコープ(暗い環境)

▲Insta360 Pro flatスコープ(暗い環境)

 

▲Insta360 Pro2 nomalスコープ(明るい環境)

 

▲Insta360 Pro2 i-Logスコープ(明るい環境)

 

▲Insta360 Pro2 nomalスコープ(暗い環境)

 

▲Insta360 Pro2 i-Logスコープ(暗い環境)

 

〇遠隔映像モニタリングシステム・FarSightの使い方

 

FarSight(ファーサイト)は遠隔映像モニタリングシステムです。「Insta360 Pro」では有料のオプション品(91,000円)でした。Insta360 Pro2では付属品になりました。5.18GHz帯の無線を利用することで電波の混線に強く、遮蔽物がなければより遠くまで電波が届きます。Insta360 Pro2は、外付けのAP(Wi-Fi)アンテナが増設されました。2.4GHz帯の無線も強化されています。簡易的な使い方としてはFarSightは不要です。もちろん安定したモニタリングを行いたい場合には有効でしょう。FarSightを利用することで1080pと高画質なモニタリングも可能になります。

 

FarSightは、撮影現場でベース(撮影現場の近くにモニターやパソコンを置いて基地として使う)などあるが場合に最適でしょう。常時利用せずとも、5.18GHz帯の高画質で安定した360度カメラのプレビューが可能になったメリットは大きいです。2.4GHz帯を利用して操作するドローンに搭載する場合にも有効です。

FarSightはトランスミッタとレシーバで構成されます。バッテリーは内蔵されています。付属のAC電源を利用することで長時間の動作も可能です。レシーバには、iPhone、iPad、スマートフォン、タブレット等を固定して使います。Amazon Fire HD 10インチサイズも装着できました。iPhone、スマートフォン等は縦にして装着できます。まずLANケーブルで本体とトランスミッターを接続します。次にレシーバにスマートフォン等を接続します。付属品にUSB Type-Cケーブル、Micro USBケーブル、Lightningケーブルが同梱されています。各端末と接続できるように配慮されています。あとはIPなどを設定して接続完了です。

 

▲カメラとトランスミッターをLANケーブルで接続した状態。

▲iPadも接続できる。付属のケーブルでFarSightのレシーバーを接続した状態。

 

CrystalViewテクノロジー

一般的なHMD(ヘッドマウントディスプレイ)で再生できる動画解像度は4Kが最大です。それ以上は負荷が大きく再生ができません。CrystalViewは、360度動画で視聴者が見ている部分だけの解像度を引き上げる技術です。よく使われる処理方法ですが、コンシューマ向けのアプリとして提供されている点は素晴らしいです。メーカサイトにあるように「iPhone、Androidスマホ、Samsung Gear VR及びOculus Goで8Kの360度動画を8Kのままで視聴者にお届けします。」が特長です。Oculus Goで8Kを視聴できることには夢があります。Oculus Goで検証しました。

OculusストアからInsta360MomentをOculus Goにインストールします。パソコンで書き出した8K動画のvrbファイルをOculusGoのInsta360Momentフォルダ移動します。以上で準備完了です。たしかにOculus Goで8Kの動画を再生できました。しかしカクカクして、まともな視聴はできません。頭を動かさなければ見れるかもしれませんが、残念ながら実用的な品質はありません。今後の改良に期待です。

また4Kと8Kを比較した場合の印象ですが、何度も見比べると確かに8Kのほうがシャープに見えることが分かります。逆に言えば比較しないと差が分からない程度とも言えます。これはフレームがカクつく問題に加えて、OculusGo自体のディスプレイの解像度がまだまだだからかもしれません。


いろいろな検証をしたまとめ

長らくInsta360 Proと Insta360 Pro2 をお借りして検証しました。もし撮影業務でどちらのカメラを使いたいか聞かれれば、私ならばInsta360 Pro2 を選びます。Insta360 Pro2 はGPS等が追加されたこともあり、約150g(1228g→1386g)重くなったことや、バッテリー動作が約25分(75分→50分 )短くなったマイナス点もあります。HDR機能にがっかりしたり、MciroSDカード6枚+SDカード1枚からデータを取り出しに苦労したり、FarSightは別売りのままで10万円値引きして欲しいとも感じます。ただ、アプリや付属品が増えて、価格が2倍近く上がっていますが、8K撮影時でもセンサーの使い方が広くなったことや、実用的なスタビライズ機能、高感度ノイズの大幅低減、高いビットレート、使いやすいi-Logなど好印象です。i-Logを使えば幅広いダイナミックレンジも実現できます。今回の記事では検証できませんでしたが、3D立体視VR180にも対応しているのも様々な用途に対応できる期待感がありました。

 

 

●製品情報

https://hacosco.com/insta360-pro2/