取材・文●大浦タケシ
「Japan Drone 2017」という何か壮大な名前のドローン展示会に、ビデオサロン編集部からのお誘いもあり伺った。これまでドローンの展示というと、筆者のなかではカメラの展示会である「CP+」でいくつかのメーカーがブースを出しているのでまったく馴染みがないわけでもないが、ドローンに特化する見本市は今回がはじめて。大いに興味を引くものだ。
ちなみに筆者のドローン歴はまだ数カ月。愛機「Phantom 4 Pro」の出番はまだわずかで、自宅での練習用として買ったトイドローンに触れている時間のほうが長い。そのため、未熟な部分があったり、ベテランドローンユーザーと視点が異なることをご承知おき願いたい。
XYZ(エクシーズ)ブース:ペイロード100kgの大型ドローン
まず最初にドローン界の雄「DJIのブースへ!」…と思ったのだが、テープカットに来ていた国のお偉いさんやその取り巻きの方々がタイミングよく訪れており同社のブースは大にぎわい。場所をすぐ変え隣のエクシーズへ。ここでいきなり衝撃のドローンを見せつけられる。何とペイロード100kgという「XYZGRYPHOB XX(エクシーズグリフォンダブルエックス)」。ダブルエックスというぐらいなので、その大きさは圧倒的。他に並べてあるドローンも大型のものであるが、それらが小さく見えてしまうほどだ。しかも、プロペラは直径70cm近くあり、2段に重ねたものとし度肝を抜かされる。展示されている実機は元々某国営放送協会のために組み上げたものらしく、プライムレンズを装着したREDが吊り下がっていたが、その迫力たるものや堂々としたもの。これに富士フイルムが先般発売を開始した中判デジタルカメラ「GFX50S」を載っけて、風景や構造物を撮影してみたらと思わずにはいられなかった。
そのエクシーズでビデオサロン編集者が熱心にチェックしていたのが、5.7GHz帯の無線ユニット。通常の2.4GHz帯よりも安定し、かつ遠くまで電波を飛ばすことができるのだという。なんとプロっぽい。ただし、使用際しては無線免許が必要で、開局申請も必要とのこと。これまたプロっぽい。ハードルは高いが、分不相応にもいずれは無線免許を取ってやろうと心の中に誓ったことはいうまでもない。
ハイテックマルチプレックスジャパンブース:ホビーユースドローンを複数展示
次に訪れたのがハイテックマルチプレックスジャパンのブース。ここは小型軽量のドローンを扱う商社で、展示されているものはいずれも筆者にとって馴染み深い。注目は「HUBSAN X4 PRO」。7インチLCDモニターを内蔵とする大型のプロポを採用しており、操作しやすそう。3軸ブラシレスジンバルには1920×1080のHDカメラを搭載する。独特のスタイルの「MOLA TOURIST 1」もブースには並んでおり、人とは異なるドローンで撮影を楽しみたいユーザーに対し訴求する。
ハイテックマルチプレックスジャパンのブースで、セルフィ撮影用として展示されていたのが「WINGSLADA S6」。このところあちらこちらから発表されている手のひらサイズのドローンのひとつ。ボディカラーが6色選べるのも新しい。スマホから操作できるので、手軽に遊べるように思えるが、重量を見てびっくり。250gとトイドローンの枠を越しているのである。どうやら北米の仕様に合わせてあるようで(日本の200g以下に対し、北米では250g以下がトイドローン)、DIDではちょっと手軽に飛ばすということは残念ながら今のところできない。もっともその大きさやパワーから室内での使用を前提にしているようにも思えた。
千葉市ブース:ドローン特区の試みや新設の飛行場をアピール
千葉市のブースを見かけたので立ち寄ってみる。同市はドローンによる宅配など実証実験を行うドローン特区となっており、今回のブースもそのことをアピールする場となっている。そのなかにドローンの許可が必要となる空域を示すパネルを見つけたのだが、よくよく見ると同市の大半はDIDであるのはもちろん、成田空港や羽田空港が近くごく限られた場所でしか自由に飛ばすことができない場所だと知る。しげしげと眺めていたからだろか、ブースを出る際に同市にある唯一のドローンフィールド、HATAドローンフィールド千葉のパンフレットを差し出される。
DJIブース:産業用ドローンMatrice 200を中心に農業用ドローンや空撮ドローンを展示
そしてDJIのブースにリターン・トゥ・ホーム。最初に見たのは発表されたばかりの産業用ドローン「Matrice」シリーズ。注目のモデルらしく、多くの来場者で賑っている。普段、PhantomやMavicばかり見ていると、さすが産業用、装飾を排した質実剛健なつくりである。構造物等の点検、測量、救難活動等に適したシリーズとのことだが、バッテリーを温める機能が装着されていることなどから、極地での撮影用としても使えそうに思える。ペイロードは2kg。展示されていたMatrice 200には、白い円盤のようなGPSアンテナがキノコのようにニョキッと上に突き出しているのが素人目にはプロっぽく思えた。
個人的に注目したのが「AGRAS MG-1」。農作業に特化したドローンである。10Kgの液体が搭載可能で、自立散布システムを搭載していることから、主に農薬散布に使うことを想定している。注目した理由はこれを数機買って、それを軽トラックに乗せ自分の田舎で商売するのが筆者のささやかな夢。農協とも仲良くならなくちゃ、とか、“人生の楽園”が取材にきたらどうしようかと余計なことをAGRASの前で考えていたら、ビデオサロンの編集者から「撮影用のドローンじゃないから次行きましょう」と促され現実に戻る。
外しちゃいけないのが、Mavic ProやPhantom、Inspireの並ぶコーナー。人の波は絶えることがなく、写真を撮るのもやっと。レディ・トゥ・フライで、性能の割には手ごろな価格、何より信頼性が高い証だろう。余談だけど、冒頭にCP+ではいくつかのドローンメーカーがブースを出していたと書いているが、それは昨年までのこと。今年のCP+はDJI一社であった。もはや、このクラスのドローンはメーカー選択の余地はないといっても過言ではない。しかしながら、DJIの担当者に話を聞くと、一社ではユーザーの要望や希望に対応しきれないので、ライバルにも頑張ってほしいとのことだ。
ジェピコ/イメージワンブース:S.BUSでカメラ操作
DJIのブースを離れ、他に撮影用のカメラを装着しているドローンがないか探して見つけたのが、ジェビコ/イメージワンのブース。名前は聞きそびれてしまったが、S.BUS対応のブラックマジックデザインMicro Cinema Cameraを装備するオクトコプターを展示する。同社は先に紹介したエクシーズ同様ソリューションメーカーなのでユーザーの要望に応じてドローンを組み立てていくが、それぞれ細かな違いがあり興味深い。より詳細なことが分かるようになると、もっと面白いんだろうなと思うことしきり。
vufineブース:メガネに取り付けて使うFPV用ウェアラブルディスプレイ
最後に覗いたブースは、vufine。すでにJapan Drone展と前後するようにメディアで取り上げられているので、ご存知の方もいるかと思うが、専用のアタッチメントを介して、眼鏡やサングラスのツルに装着して使用するウエアラブルディスプレイである。720pのHDMIビデオ出力に対応したデバイスであればドローンに限らず、何でも装着が可能だ。実際に自分の眼鏡に装着して試してみたけど、重量的な違和感はない。ディスプレイに表示された画像の細かな部分を見ようとすると片目を閉じ凝視しなくてはいけないけど、確認程度であれば両目を開いて見て全く問題ないレベルで、FPVからの画像を見つつ、機体を目視するにはなかなかイケそう。買ってみてもいいかなと思える値段(2万円前後)も魅力のウエアラブルディスプレイであった。
展示を見終わって
はじめて訪れてみたドローンの展示会。ここでは本誌の特性から撮影に関するものをピックアップしたが、それ以外の分野でも興味を引くものが多数展示され見応えあるものであった。ドローンが撮影関連も含め、今後どのように発展し展開していくかは、筆者の見識レベルでは計り知れない部分が多すぎるが、その勢いから今後さらに期待できるものと思う。少々気が早いが次回の“JapanDrone 2018”が楽しみになってきた。
Japan Drone 2017公式サイト