Huluオリジナルで配信中の『十角館の殺人』。実写化不可能と言われた綾辻行人原作の同名小説を全5話のドラマとして映像化した作品だ。制作に携わったImagica EMSは、今回はじめて制作現場にバーチャルプロダクションを導入したという。中心となった3名のスタッフにその感触を聞いた。

取材・文●編集部 伊藤

Huluオリジナル 『十角館の殺人』

©綾辻行人/講談社 ©NTV

原作:綾辻行人『十角館の殺人』(講談社文庫)
製作著作:日本テレビ 

  • 監督:内片 輝
  • 脚本:八津弘幸、早野 円、藤井香織
  • 音楽:富貴晴美
  • プロデューサー:内片 輝、内丸摂子、木下 俊、中村圭吾、渋谷昌彦
  • チーフプロデューサー:石尾 純、勝江正隆
  • エグゼクティブプロデューサー:川邊昭宏、長澤一史
  • 制作:下村忠文
  • 制作協力:内片輝事務所、東阪企画、いまじん
  • キャスト:奥 智哉、青木崇高、望月 歩、長濱ねる、今井悠貴、鈴木康介、小林大斗、米倉れいあ、瑠己也、菊池和澄、濱田マリ、池田鉄洋、前川泰之、河井青葉、草刈民代、角田晃広、仲村トオル

Huluで全5話独占配信中

公式サイト●https://www.ntv.co.jp/jukkakukannosatsujin/

お話を聞いたImagica EMSのみなさん

インカメラVFXの導入によるワークフローの変化がルック作りへのアプローチにもポジティブに影響

撮影までのワークフロー

――大まかなワークフローでいくと、どのようなスジュールで進行していったのでしょうか?

酒井 2023年4月頃、今回撮影に使用したニコンクリエイツのスタジオに弊社グループ会社を含めて2日間くらいにわたって、スタジオ見学に行きました。その後、5月か6月にテスト撮影をして、どういう弊害があるのかや、どれぐらいのカメラワークが可能なのかといった基本的な検証をしました。そして8 月初旬に作品の受注が決まりました。そこから9月末に1日先行して本番の撮影をして、その後 10月に2日間の撮影がありました。
なので、8月の受注から9月末の撮影に向けてCGのアセットを作って、その再生検証をしました。スペック的にはそんなに重いCGじゃないのになぜかコマ落ちすることが非常に多く、そういった不具合に対してハードウェアから伝送系、CGアセットの作り方など、ひとつずつ検証していったのでかなりハードスケジュールでした。

則兼 9月末の撮影が終わってからも10月末の撮影に向けて、さらに改善するための検証を重ねています。

酒井 あとは則兼が担当した現場カラコレをどこに挟むかも検証が必要でした。ニコンクリエイツさんの場合、天井LEDや左右LEDが環境LEDとなって照明の一部として使われているので、則兼が照明部さんとやり取りして、LEDのコントロールについてもやり取りをしています。そのためカラコレというよりは現場でルックを作り上げる形が一番いいんじゃないかということになりました。個人的にはカラリストにそこまでさせていいのかなと思いましたが、本人もノリノリでしたし、お客様からもすごく喜んでいただいてたので、結果としてうまくはまりました。

撮影には、スタジオとして使用したニコンクリエイツに常設されていたARRI AMIRAのカメラを使用した。

ワークフローの変化によるプラスの作用

――インカメラVFXを入れることでワークフローにも変化があったとのことですが、実際に作業されてみていかがでしたか?

則兼 めっちゃ良かったですね!

(一同笑)

則兼 今までのポスプロでの作業だと、背景と手前の被写体を分離できなかったり、すでにデータ化した素材に対して作業をするので、色の変化の仕方がどうしてもデジタル調になってしまったりと限界を感じることがありました。しかし、今回は現場でLEDパネルの光の強度と色温度、パネル上の細かい色の違いなどを照明の宮脇さんと調整したので、画を光の変化でグレーディングできるんです。これまで部屋の中でできなかったことをやれたので、本当に楽しかったです。

それと、個人的には、ポスプロでのカラコレ作業がAIによって簡易化されつつある中で、AIにはできないことを自分がやっている実感があって、そういう意味でもカラリストが現場に出ていくことが今後重要になってくるのではと感じました。

塚元 この作品は監督の理解もあり、普段よりも準備期間がありました。ただその代わりに、仕上げの期間がかなりタイトでした。つまり、事前にCGの準備期間があり、インカメラVFXで撮影したことで撮影後の処理が減ったので、CG側としてはトータルの工数は変わっていません。

――ちなみにポスプロ期間が短いというのは具体的にどのくらいのスケジュール感だったのでしょうか?

酒井 今回連ドラということもあり、全話のオフラインが終わる前から、先行してグレーディングの仕込みを行いました。VFXカットは後回しでいいので、ひとまず全体を繋いだものから、ルックを作っていく作業があり、VFXが上がり次第、順次本番グレーディングに入りました。MA作業が1月にこぼれましたが、基本は12月いっぱいぐらいで完成というところまで持っていきました。

塚元 この規模の作品をグリーンバックで撮影した場合、撮影後のデータを受け取ってからCGを作るのに単純に1カ月ほどはかかってしまいます。修正も含めて、CGができた後はその合成作業が必要になるので、1カ月間では何ともできないというのが一般的なスケジュール感です。今回インカメラVFXを使用したことで、上記のような撮影後のCG部分の作業がなかったので間に合ったような形です。

酒井 インカメラVFX用のCGアセットをその後処理のCGにも流用できたので、通常のワークフローだとCGをゼロから作らなければいけない作業負担が何割か削減されて、コンポジットだけで済むといったところもありました。

塚元 なのでルック作りに後半の力を注ぐことができたのは大きなメリットでしたね。

DIカラリストの則兼さんも現場に入り、照明部と密接に連携したことで、撮影段階から積極的にルック作りに関わることができた。

もっと詳しく

▼Huluドラマ『十角館の殺人』カラリストが語るインカメラVFXで挑んだ3つのハードル
https://www.imagica-ems.co.jp/case-study/jukkakukannosatsujin_20240515/