「Ⅰ型の完成度が高いのに、これ以上の進化があるのか?」——正直、最初はそう思っていた。しかし実際にニコンの動画機Nikon ZRに装着して現場へ持ち出した瞬間、その疑念は跡形もなく消えた。NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 SⅡは、前モデルの光学的な完成度を継承しながら、映像クリエイターが現場で抱えてきた課題を、ひとつひとつ丁寧に潰してきた。

レポート●murasan

山口県を拠点に活動する映像クリエイター。
MVやドキュメンタリーを中心に、“空気感”や“世界観”を大切にした映像制作を得意としています。シネマティックで没入感のある映像表現から、人の温度感を丁寧に切り取るナチュラルで温かみのある映像まで、ジャンルにとらわれない幅広い表現を追求。企画・演出・撮影・編集まで一貫して対応し、ウェディングやイベント撮影など多分野で活動しています。YouTubeでは、カメラバッグや撮影機材、ガジェットなどを中心に、“クリエイター視点”でその魅力を発信中。

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目次


動画レビュー



映像クリエイターのために進化した、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 SⅡ

2025年9月25日の発売以来、数あるZマウントレンズの中でも、映像クリエイター必携の標準ズームがあります。それが今回ご紹介する「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 SⅡ」です。

ニコンにとって「24-70mm f/2.8」というスペックは、Zマウントレンズの中でも最高峰とも呼べる存在ではないでしょうか。Ⅰ型の完成度も高く、Ⅱ型レンズに触れる前は「これ以上の進化があるのか?」とも思えましたが、実際に撮影で使用してみると、その疑念は一瞬で吹き飛びました。

今回のレビューでは、ニコンの動画性能を象徴するボディ「Nikon ZR」をチョイスし、この組み合わせが現場でどのような活躍を見せてくれるのか。実際の使用感をもとに紐解いていきましょう。



Ⅰ型から劇的に進化したスペック概要と価格

項目NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S(初代)NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 SⅡ(新型)
発売日2019年4月2025年9月
価格参考:約295,000円前後371,800円
レンズ構成15群17枚(非球面4枚・EDレンズ2枚)10群14枚(非球面3枚・EDレンズ2枚)
コーティングナノクリスタルコート+アルネオコートメソアモルファスコート+アルネオコート
重量約805g約675g(約130g軽量化)
全長約126mm約142mm
最大径約89mm約84mm
フィルター径82mm77mm
絞り羽根枚数9枚11枚
最短撮影距離0.38m(全域)0.24m(24mm時)〜0.33m(70mm時)
最大撮影倍率約0.22倍0.32倍(70mm時)
インナーズームなしあり
AF駆動マルチフォーカス方式シルキースウィフトVCM(SSVCM)
AF速度基準初代比約5倍
ブリージング基準初代比半分以下
カスタムボタン1つ2つ

 

撮影現場のストレスを皆無にする「究極のビルドクオリティ」

スペック表を眺めているだけでは分からない、実際に現場で使った時に感じる「使いやすさ」についてお話しします。今回のアップデート、実は外観の変更こそが映像制作のワークフローを根底から変える鍵になっています。



待望のインナーズーム採用。ジンバル運用のバランス問題を解決

映像制作者にとって、今回の最大のトピックは間違いなくこれでしょう。なんと、ズームしてもレンズの全長が変わらない「インナーズーム」が採用されています。

これ、本当にありがたいんです。今まではズームするたびにレンズが伸びて重心が変わっていたため、その都度ジンバルのバランスを取り直すか、あるいは強力なモーターパワーで無理やり乗り切るしかありませんでした。昨今のジンバル性能が良いとはいえ、インナーズームになったことで、現場での細かな調整の手間が省け、撮影のテンポを崩さずに済みます。



驚異の150g軽量化。長時間の撮影を支える機動力

旧型から約150g軽くなったという点も見逃せません。実際に持ち比べてみると、その差はよくわかります。

映像の現場では、カメラ本体にモニターやリグ、ハンドルなど、さまざまなアクセサリーを装着する場面も少なくありません。そうなると全体の重量はかなりのものになります。レンズ単体で150g削れるということは、リグ全体の負担を減らし、長時間の撮影でも機動力を落とさずに動き回れるということです。この「軽さ」は、そのまま「現場での集中力・体力の持続」に直結します。  





利便性を追求したカスタムボタンと小型化された77mmのフィルター径

細かな使い勝手も抜かりありません。レンズにはカスタムボタンが側面にひとつ、そして上部にもうひとつ追加され、合計ふたつ搭載されています。自分好みのショートカットを割り当てて瞬時に呼び出せるのは、刻一刻と状況が変わる現場では強力な武器となります。

また、フィルター径が82mmから77mmへと小型化されたのも嬉しいポイント。私は77mmのフィルター径でフィルター類を揃えているので、装備をスリム化できましたね。  



表現の幅を広げる圧倒的な光学性能とボケの美しさ

いくら使い勝手が良くても、肝心の「画」が良くなければ意味がありません。「SⅡ」の描写は、旧型の良さを引き継ぎつつ、より現代的で洗練されたものに進化しています。


全域での高い解像性能とより滑らかなボケ表現

MTF曲線を見ると、広角から望遠まで解像度の落ち方が非常に緩やかで、全域で高い描写力を維持していることがわかります。特筆すべきは、絞り羽根が9枚から11枚へと増強されたことです。これにより、絞り込んだ際も玉ボケの形がより綺麗な円形を保てるようになりました。

実際に桜の映像を撮ってみましたが、背景のボケが非常に滑らかで、旧型以上に「溶けるような」美しい描写が得られました。ポートレート撮影などにおいて、この質感が映像をよりフィルムルックに仕上げてくれます。 



逆光を武器にする。新コーティングがゴースト・フレアを徹底抑制

Ⅰ型は光源の写り込む角度によってはフレアやゴーストが発生したがⅡ型ではそれが解消されていた。

レンズ構成と表面コーティングの見直しにより、耐逆光性能もグッと上がっています。旧型では特定の角度でフレアやゴーストが出てしまう場面でも、新型の「SⅡ」ではそれが出ないというシーンもありました。

オールドレンズやシネマレンズを使用し、ゴーストやフレアを表現として使うこともありますが、基本的には抑え込まれている方が画作りはしやすいもの。不要なレンズ内反射が減ったことで、コントラストが高くヌケの良い、クリアな映像へと仕上がります。



最短撮影距離24cm。広角端でのダイナミックな寄りの映像

寄りの性能も格段にアップしました。特に24mmの広角端では、最短撮影距離が0.24mまで短縮されています。

旧型の最短撮影距離は全域で0.38mだったので、10cm以上も被写体へ近づけるようになった計算です。今回のような桜を撮るときや料理動画のシズル感を撮る時、被写体にグッと寄って背景を広く見せたい時など、広角での接写能力が上がったことで、演出の幅が大きく広がりました。 



動画撮影の安定感を上げる。進化したAFとブリージング抑制

「良い画が撮れる」のは当たり前として、プロの現場で求められるのは、失敗できない場面で確実にピントを合わせ続け、かつ視聴者に違和感を与えない「安定感」です。このレンズは、そこが実に優秀なんです。


旧型比5倍のAF性能で安心の追従性

驚くべきことに、オートフォーカスの速度と精度は旧型と比較して約5倍にまで進化しました。

旧型では一瞬迷ってしまうような場面や、ワンテンポ遅れて合焦するようなシーンでも、この新型SⅡは狙った被写体へスッと、瞬時にピントが移動してくれます。動きの速いスポーツや、やり直しのきかないイベント撮影など、オートフォーカスに頼らざるを得ない現場において、このAF性能の向上は、大きなアドバンテージになります。  



ブリージングを半分以下に。フォーカス送りによる画角変化を軽減

映像クリエイターが嫌うもののひとつとして、「フォーカスブリージング」があります。ピントを動かした時に、画面の四隅がグワングワンと動いてしまうアレですね。

「SⅡ」はこのブリージングを、旧型の半分以下にまで抑え込んでいます。実際にフォーカスを送ってみても非常に安定しており、視聴者に違和感を与えない滑らかな映像表現が可能です。



結論:映像制作の現場をアップデートする、最強の万能レンズ

実際に使ってみて感じたのは、これは単なるスチル用レンズのアップデートではなく、「映像クリエイターのためにも進化したレンズだ」ということです。

インナーズームによる安定性、150gの軽量化による機動力の向上、そして極限まで抑えられたブリージング。標準ズームという最も使用頻度の高いこの1本に、これだけの映像制作向け機能が詰め込まれた意味はとても大きいのではないでしょうか。





Zマウントで仕事をされる方、あるいはこれから本格的に映像を始めたい方にとって、この「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 SⅡ」は間違いなく安心できる最強のパートナーになってくれるはずです。 

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